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よそから来て気付けた「ないからこそあるもの」を繋げたい

よそから来て気付けた「ないからこそあるもの」を繋げたい

NPO法人ほしはら山のがっこう副理事長 / ふるさと自然体験塾長 / NPO法人環境パートナーひろしま副理事長 / 広島県シェアリングネイチャー協会理事

浦田愛 さん

2022年10月25日

メインビジュアル

「いなかがない」小学生時代に芽生えた「ふるさと」への憧れ

木を眺める浦田さん

足元の雑草に散りばめられたように咲く、小指の爪にも満たない小さな花。「これは、アゼムシロ。それは、カタバミ。子どもたちに聞かれたから、答えられないと…ってちゃんと調べたの」と浦田さんは笑顔を見せました。休耕田になったその場所には、この秋、寝そべって星空を眺めるための「星空デッキ」がお目見えしています。

2003年に廃校となった三次市立上田小の校舎を活用した体験交流宿泊施設に、立ち上げ時から関わる浦田愛さん。ここで結婚し、子育てをしましたが、実は福岡出身なのだそう。

ほしはら山のがっこう

田舎暮らしをしようと思ったきっかけは、小学生時代の夏休み明けの風景だといいます。真っ黒に日焼けした友達が、カブトムシを虫かごに入れて学校に来て、「いなかに行ってきた」と話していたといいます。いなかって?自分も祖父母も街なかで暮らす浦田さんにとって、自分が持っていない「いなか」は眩しく感じられ、この憧れが田舎暮らしをしようと思った原点となったそうです。

「人の暮らしがあってこそ」広島のふるさとの魅力伝える

浦田さんが、大学卒業後、ふるさとに出逢おうとやってきたのが三次でした。そこで、上田小の取り壊し計画が上がったといいます。「なんとかここを次の使い方につなげられないか」。地域の人たちと膝を突き合わせて議論しました。​

話をする浦田さん

「あるものさがし」をしたら、地元住民の口からは「ないもの」が山ほど出てきたと、浦田さんは振り返ります。「星が見える」と言うと、「それは当たり前」と返ってきたそうです。満天の星空は決して当たり前じゃない、地域の財産に気付くことは、外からやってきた自分こそできる役割だと気づきました。

上水道がなくても、井戸水があるってぜいたく。観光名所やコンビニがなくても、四季や自然と調和しながら暮らす人々の営みこそが豊かだ、そうふるさとを誇りたいと浦田さんは言います。

北海道や長野のような雄々しい自然とは違う広島の自然。

「なだらかな中国山地と穏やかな瀬戸内海。この風景の中にどこに行っても人が見える。それが広島のふるさとの風景。だから、そこに人の暮らしが元気に続いていくことが、これからの広島に必要なことですよね」。

体育館に掲げられた旧上田小校歌体育館に掲げられた旧上田小校歌。「ほしはら」はここからとった。「ないからこそあるものの象徴だから」。

紹介人物画像

浦田愛(うらたあい) さん

NPO法人ほしはら山のがっこう副理事長 / ふるさと自然体験塾長 / NPO法人環境パートナーひろしま副理事長 / 広島県シェアリングネイチャー協会理事

福岡市出身。ジュニアリーダーなどの活動を通してまちづくりやキャンプ、フィールドフォークソングと出会い影響を受ける。大学で児童教育を学んだ後、農村を体感してから教育に関わりたいと三次市にIターン。観光農園・教育福祉系の仕事を経て、2003年地域ぐるみで廃校活用のふるさと自然体験塾開講、2012年よりNPO法人ほしはら山のがっこう副理事長。三次市集落支援員。農村地域の人や自然との出会いをつなぐ取組を行う。広島に移住して20年以上がたち,今ではすっかり広島弁になったという。