郷土を活かす独創的な価値を創造する
郷土を活かす独創的な価値を
創造する
株式会社やまのまんなかだ 代表取締役
山田 誠 さん
2023年6月27日
遠く離れて輝いて見えた「なんでも美味しいふるさと」
中国山地の麓、北広島町。「やまのまんなかだ」では、文字通り「やまのまんなか」にビニールハウスが並び、ベビーリーフやスプラウトが元気に育っています。
栽培効率の良さから水耕が一般的ですが、山田さんは北広島町の土を活かした土耕に取り組む。ミネラル豊富な郷土の名水を贅沢に使い、落ち葉やおがくずを自前の設備で発酵させた堆肥で作物を育てており、味の濃さや鮮度の持ちが、全国各地のシェフの信頼を集めています。
山田さんは元々小さな兼業農家の長男。祖母は有名なレタス農家でしたが、雨雪関係なく泥だらけになって働き、口を開けば「農業ほど辛い仕事はない」とぼやいていたといいます。憧れる職業ではなく、親も農家になることを勧めなかったそうです。テレビ画面から飛び込む煌びやかな都会の風景に憧れ、全国を飛び回るサラリーマンになりました。
転機となったのは、「旨いもん食べいくか」と上司に連れられて銀座の高級店。「産地直送」などと謳った素材は、地元・北広島町で小さな頃から食べていた食材たち。コメも、水も、野菜も旨い。そんなふるさとが輝いて見え始めたそうです。
野菜も作るが、笑顔を創る
2年で辞めて地元に戻った山田さんは、24歳で農業を始めました。紆余曲折を経てチンゲンサイを育て始めますが、最初は失敗ばかり。そんな中、ある有名シェフに「ベビーリーフ作って」と依頼されました。「何それ?」と思い、文献を漁り、本を読み、北海道の農家に問い合わせし、様々な試行錯誤を経て、シェフからも太鼓判を押してもらえるベビーリーフを作ることが出来ました。
現実は甘くありませんが、縁には恵まれたという山田さん。「やりたいようにやれ」と発破をかけてくれた有名農園の代表。「社長になれ」と叱咤激励をくれた先輩経営者たち。自信喪失の頃、手がけた野菜を美味しそうにほおばっていた取引先のカフェの客。そんな人たちの支えから、口コミでベビーリーフの評判が広がりました。
ベビーリーフを柱に据え、2019年秋に会社を創業しましたが、ほどなくコロナ禍に。売り上げが立たないなか、「農を通じて何をしたいのか?」と原点に立ち返りました。「郷土を活かす独創的な価値」。そして、「野菜も作るが、笑顔を創る」。
先人が築き上げ、守ってきた豊かな自然を、誇りと責任を持って次世代に引き継ぎたいと山田さんは言います。
山田 誠(やまだまこと) さん
株式会社やまのまんなかだ 代表取締役
広島県北広島町出身。小さな兼業農家に生まれ、大学卒業後はサラリーマンとして働く。都会の高級店で「産地直送」と書かれた地元食材の魅力に気づき、24歳で地元へ戻り、自然豊かな北広島町で農業を始める。はじめは手探りだったが、周囲の農家からのアドバイスや味の良さが口コミで広がり、2019年秋に「やまのまんなかだ」を創業。ベビーリーフなどの生産販売を柱としている。効率の良い水耕ではなく、山の落ち葉やオガクズを集めて発酵させた手作りの堆肥を使用する土耕栽培にこだわっている。中国山地の麓のミネラル豊富な名水を贅沢に使って育てたベビーリーフやスプラウトは、全国各地のシェフの信頼を集めている。