農業×福祉を持続するビジネスに。伝統の先に描くイノベーション
農業×福祉を持続するビジネスに。
伝統の先に描くイノベーション
株式会社八天堂ファーム 代表取締役
「商工農福連携」という鍵を持つ人
林義之 さん
2023年12月25日
その道のプロと連携して新しいビジネスつくる
障害者や生活困窮者が農業分野で活躍することを通じて社会参画を実現する「農福連携」に、加工や販売を加えてビジネスとして成立させる。
そんな「商工農福連携」を掲げた「八天堂ファーム」は、冷やして食べるくりーむパンで知られる「八天堂」が昨年設立した。未来を見据えて打ち立てた新領域の舵取りは、
経営コンサルティング会社を経て2011年に「八天堂」に入った43歳の社長が担う。
広島空港近くの工場開設を任され、就労支援も目的の千葉の工場立ち上げも行った。
新展開を模索するなか、規格外フルーツを使ったスイーツバーガー企画も担当。
その取り組みの過程で農福連携に出合う。
事業化へのヒントを求め、2020年に「県立広島大学大学院経営管理研究科(HBMS)」に入学。1年目、同期の社会福祉法人理事と一緒に、オーナー不在だった竹原のブドウ園を取得して実践の場にした。生活困窮者に働いてもらい、果実のほかジャムに加工して売る。
「農業は難しい。餅は餅屋なので、福祉は福祉、農業は農業のプロに任せる」。
そんな連携で商品を生み、「八天堂」のブランド力に乗せる。農福連携で生産された岡山のイチゴ、岐阜のキウイ。素材の連携のみならず、他ブランドと連携も。
東京のスタートアップと開発した新スイーツも発売を予定する。
「経済的価値」を磨き、持続させることで「社会的価値」が高まる
大学院では、ともすればしがらみと見られがちな、広島の世間の狭さが、むしろ色々なつながりを創出しやすい環境だと気づいた。いろんな形のつながりが噛み合わさって、新しいものが生まれる。それは、むしろアドバンテージではないかと。
エシカル消費の考えが未熟な日本。「経済的価値を磨き上げて評価いただき、結果的に後から社会的価値がついてくる。そんな潮流を作る」。
シリコンバレーでの起業経験もある湯崎英彦知事の姿勢に共感する。
「広島には技術力のある中小企業が多く、アントレプレナーシップもある。東京で勃興できないイノベーションを起こしたい」。
ひろしまの好きなところ「平和」
学校や家、いろんな場面で必然的に戦争体験を聞いてきました。農福連携と平和もめぐりめぐって繋がっていると考えます。海外の情勢を見ても、広島が果たすべき役割は大きいです。
林 義之(はやし よしゆき) さん
株式会社八天堂ファーム 代表取締役
「商工農福連携」という鍵を持つ人
広島経済大学経済学部経営学科卒。株式会社日本経営にて会計監査、税務申告、民事再生法適用申請、清算申告等を経験。2011年より株式会社八天堂入社。広島空港前臨空工場、体験型カフェ(カフェリエ)、就労支援型工場(千葉県八天堂きさらづ工場)の立ち上げを担当。2020年県立広島大学大学院経営管理研究科ビジネスリーダーシップ専攻修了後、竹原市の遊休耕作地であったぶどう園の再生と共に生活困窮者の自立支援を社会福祉法人宗越福祉会と連携し実践。2022年八天堂ホールディングスの子会社として株式会社八天堂ファーム設立。代表取締役就任。商工農福連携を提唱し、ビジネスによる農福連携のサステナブルモデルを目指して活動中。ノウフク・アワード2022チャレンジ賞受賞。ディスカバー農村漁村の宝(第10回選定)ビジネス・イノベーション部門。