職業は「いきがい処方人」。人と地域の力を引き出す私の仕事
職業は「いきがい処方人」。
人と地域の力を引き出す私の仕事
「処方する」という鍵を持つ人
合同会社とこらぼ 業務執行社員
黒木真由 さん
2024年5月25日
本業が副業に。地域に住まい、いくつもの「顔」を持って生きる
水曜日は臨床検査技師としてクリニック勤務。金曜日はコミュニティFMでパーソナリティ。そして他の日は、アップサイクルステーション「ナガスタ」と忙しく過ごす。
かつて本業だった医療職が、いつしか副業になっていた。キャリアシフトのきっかけは限界と仕事をするうちに抱くようになった問題意識だった。
「分析や研究もできて、患者さんにも接することができる」と、目指した臨床検査技師の仕事。地域の基幹病院に5年勤務し、リハビリにも携わったが、退院したら患者との関係は切れてしまう。「地域での生活に医療者が介入していけば、病気のリスクも下げられ、退院後も安心して楽しく暮らせるのでは」。
人間の仕事がAIに取って代わられる時代。「“地域に介入する検査技師”に挑戦すれば、この仕事にも道が開ける」。
都市部がいずれ直面する課題を先取りする中山間地域を擁する地元・廿日市市で、まずは地域支援員となった。地域住民の健康維持増進など地元の魅力化にまつわる活動を、住民と一緒に行う取り組みだ。
わたしたちが楽しい場所を、わたしたちの手で作りたい
「大人が楽しむ姿を見せ、子どもたちが帰ってきたい地域をつくる」。
意気投合した仲間と2021年に「合同会社とこらぼ」を設立、閉店したスーパー「ナガタストアー」の店舗を借りて「ナガスタ」を立ち上げた。
不用品を持ち込む人、それを素材に何かを作る人、買う人、食べる人。人が行き交う交流拠点に。木工が得意なシゲさんは自作を売り始め、スパイス好きな鈴木さんは、ここで背中を押されて起業した。
今「いきがい処方人」を名乗る。生きる楽しさ、目的、生きがいを「処方」する、それが、自身の「いきがい」だ。自分たちがいくつになっても楽しめる場所を自分たちの手で作りたい、ただそれだけ。
仕事しながらでも、やりたいことに挑戦し、楽しい時間を増やす。それがいずれ仕事になる。そんな人が増えれば、もっとおもしろい広島になる。
ひろしまの好きなところ「好奇心旺盛な県民性」
広島の人って、新しいもの好き。
飽きっぽいところもあると思うけど、いろんなものを受け入れていろんなものに興味を持つ。わたしもその典型ですね。
ナガスタ
廿日市市津田4191−6
080-7998-9455
黒木 真由(くろき まゆ) さん
「処方する」という鍵を持つ人
合同会社とこらぼ 業務執行社員
廿日市市出身。臨床検査技師として安佐市民病院に勤務した後、2018~20年「廿日市市地域支援員」として活動。2021年に仲間と「合同会社とこらぼ」を設立。その活動拠点として、前年閉店した廿日市市津田のスーパー「ナガタストアー」を、地域の空き家の不用品を集めて活用するアップサイクルステーション「ナガスタ」として再生。地域の高齢者や子供たちと関わりながら、地域で暮らす人それぞれが「生きがい」を感じてもらえるような活動を行う。