水、空気、土、人。あるものを活かし揺るがない暮らしを
水、空気、土、人。
あるものを活かし揺るがない暮らしを
「活かす」という鍵を持つ人
西中国山地自然史研究会 事務局/もんぺる代表
河野弥生 さん
2024年5月25日
愛着のあるものを最後まで。広めたいのはそんな価値観
さあ、シーズン。「高原の自然館」は冬季休館を終え、西中国山地の大自然を求めてやってくる人たちを迎える日々が始まった。
臥竜山のブナ林や八幡湿原、生息・生育する動植物を紹介するこの施設を拠点に活動する河野弥生さんの忙しい日々も戻ってきた。自然館に事務局を置くNPO法人の職員として、自然観察会や保全活動に取り組む。
「何かの専門家かと聞かれるけど、近所に住んでいるだけ」。短大進学で香川から広島へ、そして結婚で2001年に芸北へ。誘われ、アルバイトをしていた食堂の隣の自然館で働きだして20年経つ。
週5日勤務のほか、仲間4人と取り組むのが、自ら立ち上げた「もんぺる」。不用の着物をリメイクしてもんぺにする活動だ。定期的に開く販売会はいつも大盛況。広島市内での販売会では、海外からの観光客も多く訪れた。
きっかけは15年ほど前。子ども服作りが好きな友人と義母の実家で店を開き、年1回を10年続けた。よく売れたのが実母が「これも置いたら」と送ってくれたもんぺ。アウトドアブランドをもじって友人が命名した。
「自分の着てるものに愛着を持ったり、愛着を持つものを修理したり、あるものを使ったり」。そんな価値をこそ売りたいから、もんぺはあくまでアイコンだという。
「日本中で、2億枚もの着物がタンスに眠っているとか。繕って最後まで使う考え方を広めたい」。まちづくり、地域づくりでも、貫く思想は重なっている。
古いものの良さを残し、「揺るがない社会」目指したい
過疎に危機感はあるが、水、空気、土という財産があるから悲観しない。
「ここよりいい場所はないから」。そこに人の手を加えることで、豊かな里山を保てる。そう信じている。
最近、高齢化や人手不足で仕方なく、神社のしめ縄がプラスチック製になっている。何かが失われていくと感じる。古いものの良さを残す広島であってほしい。「揺るぎない暮らし」を守り「揺らがない社会」を目指したい。
ひろしまの好きなところ「原爆ドームと川」
街中のドームは暮らしの中に平和があると感じさせてくれる。その前を流れる川の源流域がここ。
多くのことが自治体で区切られているけど、流域で考えたらいろいろ繋がっている。
NPO法人西中国山地自然史研究会
もんぺる
河野 弥生(こうの やよい) さん
「活かす」という鍵を持つ人
西中国山地自然史研究会 事務局/もんぺる代表
香川生まれ。広島市内の短大に進学後、2001年、結婚を機に北広島町へ移住。NPO法人西中国山地自然史研究会の事務局職員として「芸北 高原の自然館」に勤務。古い着物をもんぺに仕立て直す〈もんぺる〉の代表も務める。