福山の未来は自分たちで作る。itiがその着火剤になれば
福山の未来は自分たちで作る。itiがその着火剤になれば
「福山のまちづくり」という鍵を持つ人
iti SETOUCHI支配人/福山電業
谷口博輝 さん
2024年8月25日
中学生の頃から社会全体のために働きたい気持ちが強かった
駅前の空洞化に悩む福山市。周辺の大型商業施設は閉店が続き、その後の活用法に関して模索が続けられている。2022年にオープンした「iti SETOUCHI(イチ・セトウチ)」も「福山そごう」「福山ロッツ」「エフピコRiM」と名前を変えてきた建物を引き継いだもの。支配人の谷口博輝さんは福山市役所からまちづくり事業を行う「福山電業」に転職し、itiの立ち上げに携わった。
「僕は中学校の頃から公務員になりたいと思ってて。社会全体のために働きたい気持ちが強かったんです。それで市役所に入って商店街の担当になったんですけど、地元の人と話すうちに行政の方針と地元の要望の間にギャップがあることに気付いて。両者の中間に立って翻訳する人が必要だと思うようになったんです」。
今後は備後の拠点として、他地域との連携も進めていきたい
地元が本当に求めているものを軸に作られたitiは、斬新な発想とアイデアに溢れている。「屋根のある公園」として自由にくつろげる空間が半分以上を占めていること。4カ所の壁をぶち抜き館内に道路を通し(!)、行き来しやすい構造にしていること。シェアキッチン、コワーキングスペースなど何かやりたいと思った人が挑戦できる環境が整えられていること。象徴的なのが工作機械を完備したDIYスタジオの存在だ。
「福山の源流はものづくりのまち。使い方やデザインによってモノの価値を上げられることを地元チームで示したいんです。だからitiで使うテーブルや椅子はここで自分たちで作りました。ワークショップを開いて市民と一緒に手作りしたんです」。
まちのアイデンティティを継承しつつ、"共創"の精神で多くの人たちを巻き込んでいく。その先に谷口さんが思い描く理想の福山がある。
「理想は市民のみんなが『福山の未来は自分で作るんだ!』という気持ちで行動を起こすこと。itiがその着火剤になればと思うんです。今後は備後の拠点として、広島市など他地域との連携も進めていきたいです」。
itiが目指すのは「みんなの希望をつくる場所」。希望は与えられるものでなく、自ら創り出すものなのだ。
ひろしまの好きなところ「瀬戸内海の多島美」
海から見た島、山から見た島、島から見た島……どれも全部違うんです。しかもそこに人の営みもある"情景"で、見てて心が揺さぶられる。世界に誇れる風景だと思いますよ。
iti SETOUCHI
イチ セトウチ
福山市西町1-1-1 1F
グッドデザイン賞2023「グッドデザイン・ベスト100」選出。「ハードだけじゃなく市民活動的な運営が評価されたのは嬉しかったです」。
谷口 博輝(たにぐち ひろき) さん
「福山のまちづくり」という鍵を持つ人
iti SETOUCHI支配人/福山電業
「iti SETOUCHI」 プロジェクトデザイナー。1990年岡山県小田郡矢掛町生まれ。学生時代を岡山で過ごしたのち、福山市役所へ就職。福山駅前周辺のまちづくりに携わったことをきっかけに、2021年4月より福山電業へ転職。福山電業が参加する公募設置管理制度(Park-PFI)の担当者として、福山市中央公園のリニューアルや「iti SETOUCHI」の立ち上げに携わる。公共空間や遊休不動産の活用、人と場所のデザインがライフワーク。