「学びって何だろう?」というテーマを地域全体で考えたい
「学びって何だろう?」というテーマを地域全体で考えたい
「生徒の『やりたい!』を叶える」という鍵を持つ人
一般社団法人まなびぃ
伊藤博暁 さん
2024年12月25日
僕は単に近所の気のいいオッチャンですよ(笑)
神石高原町の山あいにある県立油木高校。そこが “高校魅力化コーディネーター” 伊藤博暁さんのふだんの仕事場だ。伊藤さんはここで教員と一緒に「総合的な探究の時間」の授業を設計したり、放課後公営塾「神(じん)ゼミ」(※「神」は正しくは旧字体で表記)の運営を行っている。
「神ゼミは生徒がやりたいと思ったことを支援する自由参加のプロジェクト。これまでeスポーツの大会に出場したり高梁川流域の高校生と交流したり、いろいろやりましたね」。
もともとは千葉県出身。2018年、地域おこし協力隊として町に来た。いくつかの地域に関わるなかでひとつの疑問を感じていた。
「地方の大人は『若者はみんな外に出て行く』って言うんですけど、彼らは自分の子どもに『こんな田舎にいても仕方ないから都会に行け』って言うんです(笑)。矛盾してるんですよ」。
少しでも若い人が地元に残れば地域の未来も変わるのでは? そう思って始めた神ゼミだが、伊藤さんは生徒に何かを教えるわけではない。
「生徒には『失敗も学びになるから好きにやってみ!』って言ってます。やりたいことに応じて知り合いを繋げたり、関係するイベントを紹介したり。あと『僕はこれに行きたいけど誰か一緒に行く?』と誘ったり。単に近所の気のいいオッチャンです(笑)」。
これはあくまで実証実験。結果が出るまで10年かかる
大事にしているのは自ら率先して楽しむこと。大人が好きなことをやっている姿を見せることで、生徒もイキイキと動き出す。各自が “好き” を実現することで、故郷に愛着を感じてもらえればという思いがある。
「これはあくまで実証実験。結果が出るまで10年はかかると思います」。
昨年から新たな企画も始めた。神石高原町内でイベント「学びと未来のフォーラム」を開催したのだ。
「教育者、保護者、生徒などみんなを巻き込んで教育の話がしたいなって。地域全体で『学びって何だろう?』『自分は何を学びたいんだろう?』って考えられればと思ったんです」。
手渡されたチラシには「楽しいを学びに」というコピーが踊る。生徒と共に楽しむ “オッチャン” が子どもの成長にしっかりと寄り添っている。
ひろしまの好きなところ「町の人が全員変人(笑)」
田舎の人って保守的に見えるけど、神石高原町の人たちは僕も含めて全員変人(笑)。表面化してないだけで、みんな好きなことをやってて個性的。それって魅力的だと思います。
伊藤 博暁(いとう ひろあき) さん
「生徒の『やりたい!』を叶える」という鍵を持つ人
一般社団法人まなびぃ
千葉県船橋市出身。長崎県島原市での活動を経て、2018年に広島へ。2021年まで、神石高原町の地域おこし協力隊として活動。「高校魅力化+プロジェクト」などを担当する。2023年「一般社団法人まなびぃ」設立。油木高校内での放課後公営塾「神ゼミ」の運営や、油木高校の教員と共に『総合的な探究の時間』の授業設計・実施などを行う。学びを通して地域の持続可能性を担保する方法を模索中。