災害を乗り越え進化する「広島県の農業の未来」
ひろしまを学ぶ |
近年、気候変動に伴う大雨などにより、災害が頻発しています。道路や建物の被害だけではなく、私たちの食卓を支える「農業」も大きな打撃を受けています。
「被災した農地を、これからも希望や夢を持って農業が続けられるような復興を実現したい」
今回の記事では、そんな思いから始まった、災害を乗り越えて農業を未来につなげようと挑戦した広島県の取組をご紹介します。
目次
広島県の農業が抱える「切実な悩み」
広島県は瀬戸内海側の温暖な気候から中国山地側の寒冷な気候まで、多様な自然環境に恵まれています。県内各地では、その特性を活かして多種多様な農産物が生産されています。
一方で、高齢化などにより農家数の減少が進んでおり、それに伴う耕作放棄地の増加が課題となっています。また、広島県は中山間地域が多く、一つひとつの農地が狭いことなどから、効率的な農業が難しい状況です。
そこに追い打ちをかけているのが、近年被害が大きくなっている大雨などによる災害です。
災害を乗り越え進化した被災農地の復興
災害によって、例えばため池が決壊したり、農地への土砂の流入などが発生したりすると、農家の方が農地で生産活動ができなくなり、収入がなくなってしまいます。生活に影響が出るだけではなく、将来にわたって農業に従事し続けられるか不安に感じるようになります。
だからこそ、被災した農地は急いで復旧しないといけません。しかし、被災農地を「復旧」するだけでは、このような災害リスクやそのほかの課題に頭を悩ませ続けることになります。そこで、将来も安心して、そして希望を持って農業を続けることができる環境を整備するような「創造的復興」が必要となります。
ここからは、平成30年7月に発生した西日本豪雨で大きな被害を受けた農地を実際に「創造的復興」した例を挙げてご説明します。
「さらに使いやすく!」直しながらアップグレード!
まずは被災した農地やため池の復旧にとりかかりました。ため池はこれまでよりも安全性を確保した整備を行い、農地は地域の方々と話し合いを重ね、土砂災害の被害にあった農地の下流にある、被害にあわなかった農地まで広い範囲で一体的に整備することにしました。
また災害で農地に流れ込んだ土砂を活用し、狭かった農地の区画を「大きく、平らな農地」へと作り替えました。これにより、大型機械が動きやすい環境が整いました。
安心してこれからも農業を続けられるように
続いて取り組んだのは、栽培作物の転換でした。持続可能な農業の実現には、農業の担い手が安心して働けるよう、将来にわたって安定して収益を上げられることが必要となります。
そこで、今回の事例では整備した農地の一部で、近年需要が減りつつあるお米から、より収益性の高いネギの生産に転換しました。
農地の生産性や収益性の向上が図られることで、継続的に農業を営むことができ、将来的な地域農業の維持や、地域の活性化にもつながっていくことが期待されます。
次の世代へ!担い手のバトンを未来につなげる
高齢化や人口減少が著しい中山間地域。農業に従事されている方が、農業を辞めてしまうことが増えつつあります。そういった農地の中には、次の担い手に引き継がれずに耕作放棄地となるケースもあります。
耕作放棄地が増加すると、県内の農産物の生産量が減少するだけでなく、溜まった水がゆっくりと地下にしみこむことで、川の流れを安定させ、きれいな地下水を作る水源かん養の働きや、生き物の保全などの多面的機能を失ってしまうことになります。
そこで、広島県を始めとして全国で取り組まれている、次の担い手へ農地をつなぐ「農地中間管理事業」を活用しました。これは、高齢などを理由に、所有者が農業を辞めることとなった農地などを、広島県農地中間管理機構へ集約し、次の担い手へ長期間にまとまった形で貸し付ける事業です。
今回のケースにおいても、この制度によって新たな担い手への「バトンパス」が行われました。農地中間管理事業の推進について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
これからも進化し続ける広島県の農業
「災害復旧」と聞くと、マイナスの状態をゼロに戻すイメージがあります。しかし、今回ご紹介した広島県が進める農地整備は、それをプラスへと転換させる取組です。
災害に強く、使いやすく、そしてこれからも希望を持って農業を続けられるように。そんな「新しい農業」が、これからの広島県の風景をつくっていくのかもしれません。
スーパーで広島県産の野菜を見かけたら、その裏側にある農地や農家の方の情熱に、少しだけ思いを馳せてみてくださいね。
