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「ひろしまラウンドテーブル」及び「国際平和シンポジウム」の開催結果について

印刷用ページを表示する掲載日2017年8月28日

1 ひろしまラウンドテーブル

「国際平和拠点ひろしま構想」に掲げる「核兵器廃絶のロードマップへの支援」を具体化するため,核軍縮・軍備管理に向けた多国間協議の場として,「ひろしまラウンドテーブル」を開催した。

(1)日時

平成29年8月1日(火曜日)午前10時50分から午後6時00分まで
平成29年8月2日(水曜日)午前9時00分から午後0時00分まで 

(2)場所

グランドプリンスホテル広島(広島市南区)

(3)出席者(16名)

 

氏名

経歴等

日本

秋山 信将

在ウィーン国際機関日本政府代表部公使参事官

阿部 信泰

元国連事務次長(軍縮担当),原子力委員会委員

戸崎 洋史

公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター主任研究員

藤原 帰一(議長)

東京大学大学院法学政治学研究科教授

向 和歌奈

亜細亜大学国際関係学部講師

湯崎 英彦

広島県知事

豪州

ギャレス・エバンス

元外相,オーストラリア国立大学学長

ラメシュ・タクール

オーストラリア国立大学教授

中国

樊 吉社

中国社会科学院主任研究員

沈 丁立

復旦大学教授

韓国

韓 庸燮 韓国国防大学校教授

スウェーデン

シビル・バウアー ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)研究部長

スイス

ジョン・ボリー

国連軍縮研究所(UNIDIR)研究部長

米国

ジョン・アイケンベリー プリンストン大学教授
ジェフリー・ルイス ミドルベリー国際大学モントレー校ジェームズ・マーティン不拡散研究センター
東アジア不拡散プログラム・ディレクター

スコット・セーガン

スタンフォード大学教授

(4)内容

ア 協議事項

 3つのテーマについて分科会を設置し,意見交換を行った。

 分科会1「核兵器国と非核兵器国の間の溝を埋めるための方策」
 分科会2「核抑止論の乗り越え」
 分科会3「北東アジアの非核化」

イ 総括

 核兵器のない世界の実現に向けて,上記の3つのテーマについて意見交換を行い,「議長声明」(英文(日本語仮訳付き) (PDFファイル)(233KB)がとりまとめられた。

ウ 議長声明の主な内容

  • 2020年のNPT運用検討会議に向けて,核兵器国と非核兵器国との溝を埋めるため,日本は,核武装している全ての国と核の傘に依存する国々を招集し,段階的な核軍縮プロセスを明らかにするための会議を,広島で開催してはどうか。
  • 北朝鮮への対処において,高度に発展した通常兵器の優越性を考慮すれば,日本,米国,韓国は,核兵器ではなく,通常兵器による抑止を前提に,北東アジアの非核化の道筋を検討してはどうか。
  • 北朝鮮の核問題の解決を目指した六者会合参加の5か国(日本,米国,韓国,中国,ロシア)は,北朝鮮から非核化に向けた前向きな反応を引き出すための政策パッケージ(抑止,緊張の段階的縮小,制裁,対話,核武装政策から脱却する道筋等)を検討してはどうか。

議長声明全文(日本語仮訳)

 私たちは,第5回ひろしまラウンドテーブルの開催のため,ここ広島に再び集まるにあたり,72年前広島の市民が被った苦痛に思いをはせずにはいられない。狭義の軍事的効果のみではなく,核兵器の使用によってもたらされる人道及び環境への影響,国際人道法における区別原則(非戦闘員免除の原則)及び均衡性・必要性が,事故,誤警報,誤謬のリスクと併せて,常に考慮されなくてはならない。この観点から,都市部での核兵器の使用は,それが例え限定的使用であったとしても,その結末は受け入れ難い壊滅的なものとなり,これを回避しなければならないことは明白である。

1 核兵器国と非核兵器国の間の溝を埋める方策

 北朝鮮による一連の核実験及びミサイル実験を始めとして,国際的な核の秩序は危機的状況にあると考えられる。この危機的状況は,既存の規範枠組みの下でもたらされている。
 2017年7月7日の国連における核兵器禁止条約の採択は,新たに追加された枠組みとして,都市部で核兵器が使用された場合の人道的影響に基づき,核兵器はその保持者が誰であるかにかかわらず合法ではないという国際社会における理解の共有が進んでいることを示している。しかしながら,条約の採択はまた,核保有国及びその核の傘の下にある同盟又はパートナー関係にある国家(「核傘下国」)と,多数の非核兵器国との間の溝が深まっていることを浮き彫りにすることとなった。前者の国々は条約交渉及び加入を拒否した一方,後者は条約交渉を行い採択したのである。とはいえ,核保有国及び核傘下国と非核兵器国の双方の国々が核不拡散,軍縮及び最終的な廃絶について同じ目標を共有すること,そして,核兵器不拡散条約(NPT)締約国全体の3分の2にあたる国々において核兵器禁止条約が交渉され,採択されたことを認識することが重要である。
 核保有国及び核傘下国は,核軍縮の進展に関し,核兵器の早急な禁止よりも,「ステップ•バイ•ステップ」アプローチを優先すべきと主張してきた。一方,ステップ•バイ•ステップのプロセスに実質的な前進が見られないことが,国際社会の多くの人々にとって懸念材料となっている。
 見解の相違の溝を埋めることは,ステップ・バイ・ステップのアプローチによって実質的な中身を伴う具体的な措置がもたらされて初めて可能となる。それゆえ,核保有国及び核傘下国は,優先すべきと表明しているステップ•バイ•ステップのプロセスを保証するため,具体的措置を提示する責任を有している。
 日本は,この具体的措置の提唱において,拡大核抑止の受益者として,そしてまた,核兵器への反対を国民性の一部とする,核兵器使用の世界唯一の被害国であるという二重のアイデンティティを持つことで,ユニークかつ重要な主導的役割を有している。そのような提唱が掲げうる具体的措置には,米国•ロシア間の交渉再開によって核兵器の全体数の劇的な削減へ道を開くこと,配備済み核弾頭及び警報即発射態勢下にある兵器数の大幅な削減によって生み出される信頼性に基づき,核ドクトリンとしての「先制不使用」を普遍的に受諾すること,核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)交渉の成功裏の妥結,包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効に向けた批准拡大,そして核兵器とその運搬手段にかかる透明性の向上及び支出削減が含まれるべきである。
 ステップ・バイ・ステップ・アプローチに基づく「ステップ」又は「ブロック積み上げ」のための,正式に制度化したコミットメントの方法を模索することが重要である。この目的のため,日本は,可能であれば豪州(核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)の共同議長国)の参加も得て,自国の安全保障を核兵器に依存する国家からなる会議を,次の2020年NPT運用検討会議が開催される前,今後18ヶ月以内に,広島で開催すべきである。この会議は,ステップ・バイ・ステップ・アプローチをどのように実施するかに焦点を当てるほか,NPT体制下の新たな報告制度といった制度的仕組み,国際原子力機関(IAEA)を通じた新たな関与,そして核兵器禁止条約(nuclear weapons ban treaty)の成果を踏まえた,あり得べき核兵器条約(nuclear weapons convention)の交渉について議論すべきである。

2 核抑止を乗り越える方策

 核保有国と日本を含むその同盟国は,依然として,核抑止と核の傘の世界で生きている。しかし,核抑止は本当に国際安全保障を供給しているのだろうか。また,抑止は核兵器に依存しなければならないのだろうか。
 米国はオバマ政権の下で,核不拡散の義務を遵守している非核兵器国に対し核兵器を使用しないことを誓約する消極的安全保証,そして区別原則(非戦闘員を攻撃対象としないこと)や均衡性の原則といった人道の諸原則を核兵器の標的設定において順守することを求める核の使用にかかる指針を通じて,核兵器の役割低減に向けた暫定的措置を実施した。北朝鮮による現在の一連のミサイル発射実験と核兵器国による核兵器の近代化計画は,こうした好ましい傾向を反転させる危険性を有している。国際社会は,平壌を抑止するとともに,核兵器が担う役割低減に向けたモメンタムを維持し,将来の完全な核軍縮への誓約を維持するという両面で北朝鮮に対処しなければならない。
 では,今日,北朝鮮の抑止において,核兵器が担う役割はどのようなものか。そして核兵器はいかなる役割を担うべきであるのか。前者の,現状認識に関する質問に対する答えは,米国は北朝鮮に対して核兵器を先制使用する選択肢を保持しており,また,いかなる北朝鮮による核攻撃に対しても,核兵器を用いた大量報復を行うと威嚇しているというものである。この現実と,後者の,「あるべき姿がどのようなものであるか」という質問に対する私たちの答えは異なっている。北朝鮮国内の標的で,米国と同盟国の通常兵器によって破壊できないものは,たとえ存在するとしても,ごくわずかである。核を用いた攻撃を含め,北朝鮮によるいかなる攻撃も,金体制の不可避的・暴力的な終焉を導くことになる。米国,日本そして韓国の高度に発達した通常兵器の優越性を考慮すれば,核による攻撃を含めた北朝鮮のいかなる攻撃に対しても,その報復として,通常兵器を用いて金体制を転覆させるという威嚇は,高い信頼性と実効性を有するだろう。
 世界は北朝鮮の挑発に対処しなければならない。けれども,北朝鮮と同じやり方で対応することは無謀である。私たちは,二つの対応案を避けなければならない。第一に,日本と韓国はNPT上の義務を誠実に履行し続けるべきであって,核兵器の取得を追い求めるべきではない。そして第二に,米国は北朝鮮に対する先制攻撃において核兵器を使用する選択肢を検討対象からはずすべきである。そのような核兵器の使用は不道徳であるばかりか,賢明な選択でもない。
 核兵器禁止条約は,抑止ドクトリンとその実行に対して含意を有する新たな制度的現実である。私たちは,北朝鮮の核の脅威に,通常抑止で対処するのか,もしくは核抑止で対処するのかについて,コスト,リスク,制約そして利益といった観点で比較する,日本における開かれた忌憚のない議論を促すとともに,核兵器を使用すれば金体制を破壊するという誓約に抑止を基礎づけるものである。同様の問題が,日本の他の潜在的脅威についてもあてはまる。これは,拡大抑止の将来を再定義する際に,日本が主導的役割を発揮する機会へと道を開くものである。

3 北東アジアの非核化

 金正恩の指揮のもとで進められる核兵器開発と一連の新たなミサイル発射実験は,北朝鮮に対する従来のアプローチの限界を明らかにした。そのような状況において,東アジアの非核化に向けどのような動きをとることができるだろうか。
 東アジアの非核化を追求するにあたっては,単に非核化を繰り返し要求するだけにとどまらず,地域の緊張を緩和し,戦争の勃発を防ぐための危機管理上の具体的な努力を伴わなければならない。危機は急を要するが,六者会合に参加した〔北朝鮮以外の〕5か国が北朝鮮の非核化の必要性に依然としてコミットしている事実を思い起こす価値がある。私たちはまさにその前提に立ち,抑止,緊張の段階的縮小,制裁,対話,そして北朝鮮に核の道から抜け出る出口を示すなど,一連の政策の追求を推進するのである。
 そのような一連の政策には抑止が含まれるが,北朝鮮に対する抑止力は核によるものである必要はない。そして抑止力のみでは北朝鮮からポジティブな反応を引き出すことは期待できない。韓国,ロシア,中国,米国及び日本の5か国は,現在の危機がエスカレートし大規模な戦争に突入することを避けるために,北朝鮮に対する政策において協調しなければならない。北朝鮮に対する経済制裁は,強圧的な外交手段としてだけではなく,軍事力使用の代替手段としても強力に実施されるべきである。北朝鮮との対話は,許容しうる成果をもたらす外交交渉の前提条件となる。最後に,私たちは,北朝鮮にとって妥当な事態の解決策,つまり北朝鮮が核を持たずに生き残り,繁栄し,近隣国との正常化した関係を保てる未来が存在するということについて明確である必要がある。非対立的関係が可能であるとの見通しを私たちが示さない限り,北朝鮮が変わることは期待できない。もし北朝鮮が現在の道を追求し続けるならば,韓国と日本が核兵器の取得に向け動き出す危険が高まるだろう。地域の外交安全保障協力の最優先の目標は,このような結果を未然に防ぐことでなければならない。
 強圧的な外交とは,言い換えると,相互性の要素が含まれるべきである。これは,北朝鮮が頑なに核とミサイル技術の開発に注力し続けている状況では,難しい要求である。私たちは,非核化という最終的な目的に向けたステップとして,「フリーズ・フォー・フリーズ」政策を除外しない。北朝鮮がひとたび現状の政策を変更する兆しを見せたならば,ポジティブな反応を提供できるように準備しなければならない。

 私たちがラウンドテーブルで議論した問題は,ひとつとして解決が容易ではない。核兵器国と非核兵器国の対立は明らかである。今なお核抑止は,特に東アジア地域における国際的な安定を維持する上で認知された役割を果たしている。北朝鮮危機はエスカレートし続け,地域における不安を増大させている。私たちは,無力であると感じるのではなく,核兵器の使用による惨憺たる結末を思い起こし,核兵器なき世界の追求に向けての努力を続けなければならないのである。

知事発言の写真会議風景の写真
 ひろしまラウンドテーブルの様子

記者会見の様子の写真1記者会見の様子の写真2
 事後記者会見の様子

2 国際平和シンポジウム

「ひろしまラウンドテーブル」の参加者等により,核軍縮を巡る現状と課題,課題解決のための方策等について,会議での議論等を分かりやすく伝えるため,「国際平和シンポジウム~核兵器に頼らない安全保障の構築に向けて~」を開催した。

(1)日時

平成28年8月2日(水曜日)午後3時15分から午後5時00分まで

(2)場所

広島国際会議場「コスモス」(広島市中区)

(3)パネルディスカッション

ア コーディネーター

 藤原 帰一(東京大学大学院教授)

イ パネリスト

 阿部 信泰氏(元国連事務次長,原子力委員会委員)
 シビル・バウアー氏(ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)研究部長(スウェーデン))
 ジョン・ボリー氏(国連軍縮研究所(UNIDIR)研究部長(スイス))
 ジョン・アイケンベリー氏(プリンストン大学教授(米国))
 マイケル・ゴーディン氏(プリンストン大学教授(米国))

ウ 概要

 「ひろしまラウンドテーブル」で議論された3つのテーマ(核兵器国と非核兵器国の間の溝を埋めるための方策,核抑止論を乗り越えるための方策,北東アジアの非核化)について,会議での議論を紹介するとともに,核兵器に頼らない安全保障を実現するためには,どのような取組が必要とされるかなどについて,意見交換を行った。

国際平和シンポジウムの写真1国際平和シンポジウムの写真2
国際平和シンポジウムパネルディスカッションの様子

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