2月定例県議会の開会に当たり,県政運営の基本的な考え方や来年度における施策の概要等を申し上げた上で,ただ今提出いたしました平成28年度当初予算案をはじめとする議案等の概要を御説明いたします。
その前に,改めまして,藤田前知事の広島県政に対する御貢献に対し,敬意を表しますとともに,心から御冥福をお祈り申し上げます。
それでは,改めまして,御説明をさせていただきます。
まず,経済・雇用の情勢についてでございます。
県内の景気は,輸出は自動車を中心に増加しているほか,設備投資は緩やかに増加し,住宅投資は持ち直しており,全体としては緩やかに回復しております。
雇用・労働情勢につきましては,12月の有効求人倍率が1.52倍と,7か月連続で1.5倍台の高水準が続いており,着実に改善しております。
しかしながら,一昨日発表された10月から12月期の国内総生産の速報値が,2四半期ぶりのマイナス成長となったこともあり,引き続き,中国経済の減速やアメリカの金融政策,原油安等が県内企業に与える影響などについて注視してまいりたいと考えております。
次に,平成28年度の政策の基本方向について申し上げます。
昨年10月,人口減少の進行や東京一極集中の加速化,グローバル化の新たな局面の到来などの社会情勢の変化に対応するため,「ひろしま未来チャレンジビジョン」を改定いたしましたが,このビジョンでは,目指す姿として,「仕事でチャレンジ!暮らしをエンジョイ!活気あふれる広島県」を掲げております。
また,目指す姿の実現に向けましては,本県独自の強みや元々持っている素地を生かした「イノベーション」「ファミリー・フレンドリー」「都市と自然の近接ライフ」という3つの視点を持って,4つの政策分野に取り組むこととしております。
先月まとめた平成27年の国勢調査の速報におきましても,本県人口は,前回調査より約16,000人,0.6%の減少となりましたが,人口減少問題を克服し,成長力を確保する「地方創生」を通じて,県民一人ひとりが,仕事や暮らしに対して抱く希望を「かなえられる」と感じることができるように取り組んでいかなければなりません。
このため,平成28年度は,実施中の対策を着実に進め,これまで積み上げてきた成果をより高い段階へ引き上げるとともに,仕事と暮らしのどちらもあきらめずに追求することのできる「欲張りなライフスタイル」の実現に向けて,県民の皆様と一緒に,一歩先へ踏み出してまいりたいと考えております。
こうした考え方のもと,重点的に推進する政策の基本方向について,三点御説明申し上げます。
一点目は,災害に強いまちづくりに全力で取り組んでいくことでございます。
平成26年8月の土砂災害発生以降,被災された方々の生活再建に向けた対策は,防災施設整備をはじめ,概ね計画どおりに進捗しておりますが,引き続き,被災地の一日も早い復旧・復興に取り組んでまいります。
また,土砂災害警戒区域等の指定や,各種整備計画に基づく施設整備など,ハード・ソフト両面からの防災・減災対策を着実に進めるとともに,「災害死ゼロ」を目指し,「広島県『みんなで減災』県民総ぐるみ運動」を強力に展開してまいります。
二点目は,地方創生の取組を加速していくことでございます。
平成22年のチャレンジビジョン策定以降,これまで,「経済」「人」「暮らし」「地域」の4つの政策分野を連関させ,好循環を生み出す取組を進めてまいりました結果,県内において,様々な成果や変化が現れております。
具体的には,ひろしま創業サポートセンター等を利用した創業件数が900件を超えるなど,創業が活発化し,企業立地により約3,500人の雇用が生まれ,総観光客数や観光消費額が3年連続で過去最高を更新し,1人当たりの県民所得も増加しております。
また,「働く女性応援隊ひろしま」や「イクボス同盟ひろしま」による積極的な活動が進み,保育所入所児童数が,受け皿拡大により約6,000人増加し,合計特殊出生率も全国平均を大きく上回って推移しております。
さらに,ドクターヘリの運用開始,広島がん高精度放射線治療センターの開設,中山間地域振興条例・振興計画の策定などが実現したほか,都市圏魅力創造に向けた県と広島市の連携事業が進展し,瀬戸内エリア全体の観光振興組織の設立準備も概ね完了いたしました。
チャレンジビジョンが折り返し地点を過ぎ,また,本県を取り巻く社会経済環境が大きく変化している今,こうした成果や変化を県民の皆様に実感していただき,ビジョンの目指す姿に,まずは共感し,最終的には実践あるいは参画いただくことが,ますます大きな意味をもってくると考えております。
中でも,「仕事も暮らしも。欲張りなライフスタイルの実現」に向けて,働き方改革をはじめ,各取組に,より主体的に参加いただくことが必要でございます。
このため,施策を展開するに当たっては,まずは,県内外の皆様の注目を集め,興味や関心を引き,本県の取組に共感していただけるよう,情報発信やコミュニケーションを十分行いながら進めてまいりたいと考えております。
また,先日12か国が署名し,今後国内手続きが開始されるTPP(環太平洋パートナーシップ)協定への対応として,国と連携し,安価な輸入農林水産物の増加による影響が懸念される農林水産業の体質強化対策や経営安定対策のほか,県内企業の海外展開の促進などに取り組んでまいります。
三点目は,広島の使命として,国際平和拠点ひろしま構想を着実に進めていくことでございます。
近年,核兵器廃絶に向けた具体的な動きが停滞する中,主要国首脳会議外相会合の本県開催が実現したことは非常に意義深いことであると考えており,これを契機として,世界の政治指導者が被爆の実相に触れる機会を提供するなど,核兵器廃絶に向けたプロセスの進展に貢献してまいります。
なお,ただ今申し上げました災害に強いまちづくりや地方創生の施策につきましては,国の一億総活躍社会の実現に向けた緊急対策などとも連携し,平成27年度2月補正予算と一体的に推進してまいります。
次に,政策の基本方向を基に実施する,重点施策等の概要について,御説明申し上げます。
一点目は,災害に強いまちづくりについてでございます。
土砂災害の被災地域における砂防ダムなどの防災施設の緊急事業のうち,県が実施する砂防ダム及び治山ダム等23箇所については,当初の予定どおり,今年度内に完成する見通しとなっております。
更に地域の安全性を高めるため,緊急事業と一体的に実施する事業につきましても順次工事に着手しており,引き続き,国・広島市と連携を図りながら取り組んでまいります。
土砂災害防止法に基づく基礎調査結果の公表や土砂災害警戒区域等の指定につきましては,昨年3月に策定した「基礎調査実施計画」に基づいて進めており,今年度予定した99小学校区全てにおいて上半期に調査に着手し,調査が完了した地区から,順次,調査結果を公表するとともに,説明会の開催や区域の指定を行っているところでございます。
基礎調査を平成30年度,土砂災害警戒区域等の指定を平成31年度までに完了させる目標を達成するため,全力で取り組んでまいります。
また,災害時における防災や治安の拠点施設の耐震化を進めることとし,県庁舎のうち,耐震補強が必要な本館・南館・議事堂の耐震化に着手するほか,今年度 10施設の工事が完了する警察署について,来年度は5施設の耐震化を行うとともに,広島東警察署の移転整備に向けた取組を着実に進めてまいります。
「広島県『みんなで減災』県民総ぐるみ運動」につきましては,行動計画に基づき,報道機関と連携し,災害危険個所や災害の種類に応じた適切な避難行動などを「知る」取組を重点的に実施するとともに,県内企業の取組を促進するため,新たに,企業経営者を対象とした防災意識の啓発や,企業が従業員に対して実施する「知る」取組の支援を行うこととしております。
これらに加えて,市町の取組や自主防災組織の活動への積極的支援,推進会議の各主体が中心となった減災に向けた取組の全県展開などにより,県民総ぐるみ運動の普及浸透を図り,県民の防災意識をより一層高めてまいりたいと考えております。
政策の基本方向の二点目,地方創生についてでございます。
まず,「新たな経済成長」分野でございます。
これまで行ってきた,創業・第二創業の促進の取組等により,県内の創業が徐々に活発化している一方,県全体の開業率は4.2%で,目標の10%とは大きな開きがあるなど,新しい事業が次々と生まれる事業環境には至っていない状況がございます。
このため,引き続き,様々なプレイヤーが相互につながり,絶え間ないイノベーションが創出される「イノベーション・エコシステムの共通基盤の強化」に取り組んでまいります。
産学が組織の枠組みを超えて交流などを行う「場」であるひろしまイノベーション・ハブには,これまで延べ2,600人以上の参加がございました。
この取組を更に強化していくため,新たに,参加者拡大を目指した,中高生や社会起業家向けの起業家育成プログラムや,参加者がメリットを実感できる,販路開拓・資金調達等事業展開支援型のプログラムを実施するなど,イノベーションが持続的に創出される環境の整備を促進してまいります。
また,昨年10月に開設した「プロフェッショナル人材戦略拠点」において,各企業の成長戦略の実現に必要な人材の確保に取り組むほか,企業の海外展開を後押しするための優秀な理工系留学生の受入・育成なども着実に行っていくこととしております。
「多様な創業の促進」に向けましては,引き続き,「ひろしま創業サポートセンター」での支援を行うほか,行政,経済団体,金融機関,産業支援機関等が連携・協力し,「オール広島」で創業支援を行う体制を強化してまいります。
加えて,新たに,若者世代を対象とした企画コンテストや創業ポータルサイトの設置・運営など,県内における創業機運の醸成や創業希望者の拡大を図ってまいります。
また,昨年12月に決定した国家戦略特区を活用し,創業人材を含めた多様な外国人材の集積や,ビッグデータを活用した新たなビジネスの創出などに取り組んでまいりたいと考えております。
「多様な投資誘致の促進」につきましては,産業団地への企業立地による雇用の拡大を主眼とした従来型の企業誘致に加え,本社や研究開発,さらには,ベンチャー企業や地域活力創出オフィス等,人・機能・地域活力に着目した新たな企業立地助成制度を構築するなど,戦略的に取り組むこととしております。
これに加え,政府関係機関の県内への移転につきましても,関係省庁等との調整を進めてまいります。
次に,「産業競争力の強化」についてでございます。
産業クラスター形成に向けた取組のうち,「医療関連産業」分野では,これまで150件を超えるプロジェクトが着実に進行し,異分野からの新規参入や市場投入案件が増加しております。
今後は,若手人材の育成や「日米医療機器イノベーションフォーラム」の招致などの新たな取組も積極的に展開するほか,引き続き,実証フィールドの運用等を通じ,医療関連産業の振興と集積に取り組んでまいります。
「環境浄化産業」分野につきましては,ベトナムでの実績案件の周辺自治体への拡大やインドネシアでのビジネスマッチングの本格開始など,事業規模の拡大を図ることとしております。
このほか,本県の基幹産業の高度化に向け,航空機産業分野への新事業展開や,感性工学を活用したものづくりの活性化を進めてまいります。
次に,「世界と直結するビジネス支援」につきましては,引き続き,ジェトロ等の支援機関と連携し,県内企業の海外展開支援を行うとともに,米国シリコンバレーなどの外国企業とのマッチングによる連携を通じて,新たな価値を生み出すビジネス展開を促進してまいります。
また,海外ビジネスを支える基盤でもある広島空港の拠点性強化につきましては,航空ネットワークの拡充や航空機利用の利便性向上を図るため,LCCの増便や新規路線誘致,リムジンバスの社会実験などを行うことにより,利用者数の増加につなげ,中四国地方の拠点空港としての競争力を高めてまいります。
次に,「観光地ひろしまの推進」についてでございます。
観光消費額や総観光客数の一層の増加に向けて,引き続き,市町等と一体となって観光資源のブラッシュアップを図り,集客力を高める取組を推進するとともに,誘客と周遊を促進する戦略的なプロモーションを進めてまいります。
また,本年12月,厳島神社と原爆ドームが世界遺産登録20周年を迎えることから,広島市や廿日市市,関係団体と連携し,2つの世界遺産の魅力向上や,国内外からの誘客促進を図ることとしております。
外国人観光客につきましては,ターゲットを,より多くの誘客が見込める国や地域に拡大した効果的なプロモーション活動や,無料Wi-Fi環境の充実など受入体制の整備促進等に取り組んでまいります。
次に,「担い手が生活設計を描ける農林水産業の確立」についてでございます。
本県農林水産業が将来にわたって持続的に発展することを目指し,「2020広島県農林水産業チャレンジプラン アクションプログラム」に基づく取組を進めておりますが,今後TPPが発効した場合の影響も考慮しつつ,経営体質の一層の強化を図り,構造改革を強力に推し進めてまいります。
まず,農業分野につきましては,既存の農業振興施策の枠組みを発展的に見直し,意欲ある生産者の可能性を最大限に引き出すため,JAグループ等と一体となって,ひろしま型の農業を創り出す新たな担い手育成の仕組みを構築してまいります。
具体的には,重点品目における主要な産地の強化を図るため,実践型研修拠点の整備により,産地の担い手育成システムを構築するとともに,担い手への農地集積や生産施設整備を促進する新たなリース事業の導入などを一体的に支援することにより,青年農業経営者の確保・育成や担い手の経営発展,園芸産地等の拡大を加速してまいります。
また,かんきつ産地の競争力強化に向けて,中晩柑類の生産比率が高い本県の栽培実態を踏まえ,ネーブルオレンジなどの中晩柑等から,収益性の高いレモンへの早期転換を支援するなど,生産者の収益性の確保と生産量の拡大を図ってまいります。
畜産業につきましては,担い手の独立就農や規模拡大に向けた取組を支援するとともに,本県が有する高い技術力を活かした,受精卵移植の取組強化による和牛子牛の増頭や,生産された子牛の県内肥育に向けた取組などにより,県産和牛の生産拡大を図ってまいります。
林業につきましては,林業・木材産業の成長産業化を促進するため,需要の拡大が期待できる木造住宅の柱や土台など,主要部材の協定取引の拡大や,大規模製材工場への安定供給体制の整備を進めるとともに,持続的な林業経営の確立に向けた苗木生産基盤の整備などの取組を支援してまいります。
水産業につきましては,東部海域において,ガザミ,カサゴの集中放流を開始し,自主的な資源管理によって資源の増大 を図る取組を本格化させるほか,中西部海域では,漁場分布や海域特性の調査を行い,資源増大計画の策定を積極的に支援してまいります。
加えて,カワウ被害の詳細把握と有効な対策の実施に向けた広域連携の推進などを支援してまいります。
かきにつきましては,今後需要の拡大が見込まれる夏場以降の生食殻付かきの安定的な生産・出荷に向けて,閉鎖海域における生産管理技術や,安全性向上のための浄化技術の開発などを支援してまいります。
次に,「人づくり」の分野でございます。
これまで実施してきました,出会い・結婚から子育て期,さらには,働く女性への支援も含めた切れ目のない取組などにより,合計特殊出生率は上昇傾向でございますが,引き続き,県民の希望出生率である1.85がかなえられるよう,総合的な対策を講じていくことが必要であると考えております。
そこで,まず,「少子化対策」についてでございます。
若い世代の結婚に関する希望がかなえられれば,子供の出生に直接的な好影響が期待できることから,県民全体で結婚したい若者を応援する機運醸成を目的に,今年度から「みんなでおせっかい『こいのわ』プロジェクト」を実施しており,「ひろしま出会いサポートセンター」の会員は,4,000人を超えたところでございます。
今後は,会員のニーズを反映した,身近な地域で気軽に参加できる小規模の出会いの場の創出や,個人でおせっかいをするボランティアの活用なども実施し,結婚の希望の実現を目指してまいります。
また,保育サービスにつきましては,労働環境改善により保育士の離職防止を図るなど,保育の質・量の確保に総合的に取り組み,いつでも安心して子供を預けて働くことのできる保育環境の整備を一層進めてまいります。
女性の就業に関する希望をかなえ,ライフステージに対応して働くことができるようにする観点からは,「女性の働きやすさ日本一への挑戦」に取り組んでおりますが,昨年9月に女性活躍推進法が施行されたことに伴い,女性管理職登用の促進に向けた実効性のあるアプローチ手法を検討するため,県内企業を対象とした実態調査と課題分析を行うこととしております。
また,引き続き,「わーくわくママサポートコーナー」における再就職支援や,働く女性を対象とした就業継続のための研修の実施などにより,女性がいきいきと活躍することができる社会の実現に向けて取り組んでまいります。
さらに,「仕事も暮らしも,どちらもあきらめることなく追求することができる」社会を実現するために不可欠な「働き方改革」に取り組むこととしております。
県民一人ひとりの暮らしの充実に配慮できる環境を実現するためには,それぞれの職場において,様々な働き方を選択できる職場環境の整備や長時間労働の是正,休暇取得の促進など,「働き方改革」が推進される必要があるため,まずは,県内企業を対象とした実態調査を実施いたします。
その上で,働き方改革の取組に着手している企業に対しては,更に取組を加速していただくため,「イクボス同盟ひろしま」の活動を通じて,経営者層への「イクボス」の普及啓発や,企業内の管理職等を対象とした,働き方改革に関する組織マネジメントのノウハウやスキルを学ぶ講座を開催いたします。
また,関心はあるものの取組に未着手の企業に対しては,専門家によるコンサルティングをモデル的に実施して有効性の検証を行い,県内企業に対する今後の効果的な支援策の実施につなげてまいります。
次に,「東京圏等から広島への定住促進」についてでございます。
東京圏で高まりつつある地方移住の機運を取り込み,移住につなげる大きな流れを作り出すため,「都市と自然の近接ライフ」の効果的な発信や,東京のひろしま暮らしサポートセンターでの移住サポートの強化,地域での移住の受け皿づくりについて,市町と連携し,一体的に展開いたします。
この中で,移住者の受入れに当たって必要となる住まいの確保の観点から,空き家の活用を促す取組も進めてまいります。
また,イノベーションの原動力となる多様な人材の集積を促進する環境づくりに向けて,新たに,県内の若手クリエイターに対し,アイデアや活動内容を発表する場を提供するなど,人材の掘り起こしやネットワークの構築を進めることとしております。
さらに,県外大学等に進学した学生が,早い段階から県内企業への就職を意識することができる環境を整備するため,大学1・2年生を対象とした県内企業での現場体験型プログラムなどを開始することとし,3・4年生に対するマッチング支援とあわせ,UIJターン就職の促進を図ってまいります。
また,「社会で活躍する人材の育成」についてでございます。
これまでの教育施策の展開により,例えば,小・中・高等学校段階では,「知・徳・体」のそれぞれの面で着実に成果が現れ,全国水準を上回るところまできております。
一方,グローバル化の進展などにより,様々な課題が複雑化・高度化する中で,社会はますます先行き不透明な状況になっており,本県教育を取り巻く環境は新たな時代に向けた転換期を迎えていると言えます。
こうしたことから,先日,本県教育が今後概ね5年間において必要な施策を展開していくため,特に重視していく方向性を整理した「教育に関する大綱」を策定したところでございます。
今後は,この大綱を踏まえ,「幼児期から大学・社会人まで」を見据え,学校・家庭・地域,さらには経済界なども含めた「オール広島県」で一丸となって,「広島で学んで良かった」と思える日本一の教育県の実現を目指してまいります。
まず,乳幼児期につきましては,全県的な教育・保育の質の確保に向け,今年度実施した調査・研究の結果を踏まえ,家庭教育や教育・保育施設への支援の在り方など,県施策の方向性を具体化する「幼児教育アクション・プラン(仮称)」を新たに策定することとしております。
小・中・高等学校における「広島版『学びの変革』アクション・プラン」の推進に関しましては,小・中学校では「課題発見・解決学習」の実践指定校の指定,高等学校では実践推進リーダーの養成など,平成30年度の全県展開に向けた取組を進めるとともに,グローバルマインドを系統的に涵養していくため,小・中学校と連携した姉妹校交流を行う高等学校への支援等を実施いたします。
こうした取組に加え,「学びの変革」を更に加速する観点から,OECD等と連携した「広島創生イノベーションスクール」の実施や「学びの変革」を先導的に実践する「グローバルリーダー育成校(仮称)」の設置に向けた準備を進めてまいります。
生徒の多様なニーズに応じた教育の提供につきましては,広島市と共同で整備する「フレキシブルスクール(仮称)」の平成30年度の開校に向けて,校舎の建設工事に着手するなど,着実に取り組むほか,県内のものづくり企業等の協力を得ながら,県立高校で工業を学ぶ生徒の「ものづくり」に対する「技と心」を育む取組を実施することにより,新たな時代に求められる技能系人材の育成を目指します。
また,7月から,本県で初めての全国高等学校総合文化祭,また,同時期に,中国5県で全国高等学校総合体育大会を開催するなど,学校における文化活動の振興やスポーツの推進に取り組むこととしております。
大学教育では,積極的に社会に貢献できる人材を継続的に輩出するための教育環境の構築に向けて,今年度策定する具体化方策に基づき,教育課程編成などの具体的な計画の検討を行ってまいります。
「多様な主体の社会参画の推進」に向けた取組といたしましては,聴覚障害のある方への支援として,情報・意思疎通支援の拠点となる「広島県聴覚障害者センター」を,平成28年度中に健康福祉センター内に整備し,手話や字幕入りビデオ等の製作・提供,相談対応,手話通訳者の養成などを行うことにより,積極的な社会参加を促進してまいりたいと考えております。
次に,「安心な暮らしづくり」の分野についてでございます。
「信頼される医療・介護提供体制の構築」につきましては,これまでの医療・介護人材の確保や地域包括ケアシステムの構築に向けた取組により,医師数が増加し,在宅医療推進拠点の整備も一定程度進んでまいりました。
しかしながら,依然として,地域や診療科における医師の偏在などの課題があるほか,団塊の世代の方々が75歳以上となり,医療や介護の需要が大きく増加していく平成37年を見据えた対応が必要となっております。
このため,今年度,「地域医療構想」を策定いたしますが,その達成に向けて,効率的で質の高い医療提供体制確保のための施設・設備の整備,地域包括ケアシステムの構築,医師や看護師,介護福祉士等の医療・介護人材の確保などの事業を一層強力に推進することにより,高度急性期から回復期,在宅医療・介護までの一連のサービスの適切な提供に努めてまいります。
「健康医療情報等を活用した健康づくりの推進」につきましては,レセプトデータ等の分析結果を活用し,一人ひとりの健康状態に応じた疾病予防・重症化予防を効率的・効果的に行うための手法の確立を目指すとともに,「ヘルスケアポイント制度」など,県民の行動変容を促す環境を整備することにより,健康寿命の延伸に向けた医療保険者の取組を支援してまいります。
次に,「環境負荷の少ない社会を支える仕組みづくりの推進」についてでございます。
環境と経済の好循環を図りながら,環境への負荷の少ない持続可能な社会をつくっていくためには,地域の特性に応じた,環境に配慮した行動やライフスタイルの普及・定着を図っていく必要がございます。
このため,未利用材をバイオマス燃料として地域内で活用するなど,「経済的な価値」や「地域の課題解決にも役立つ」という効果が感じられる自主的な環境保全活動の促進を図ってまいります。
次に,県民の皆様のいざというときの安心につながる犯罪被害者への支援についてでございますが,性犯罪被害者の方々などが,被害を抱え込むことなく,被害直後から安心して総合的な支援を受けることができる環境を実現するため,ワンストップで支援を行うセンターの設置に向けて取り組んでまいります。
次に,「豊かな地域づくり」の分野についてでございます。
これまで,都市地域の拠点性向上や中山間地域の地域力強化,瀬戸内地域のブランド化などを進めてまいりました結果,地域の価値に共鳴する若い世代を中心に,地域課題解決に意欲的に取り組む動きも始まっておりますが,更に人口減少が進む中,担い手の確保や地域の魅力向上に向けた一層の取組が必要でございます。
こうしたことから,市町の主体的な地方創生などの取組を後押しするため,市町振興基金を活用して,「未来の地域づくり応援交付金」を創設し,地域の実情に沿った市町の取組を積極的に支援してまいりたいと考えております。
「中山間地域の地域力強化」につきましては,地域づくり活動への参加機運の醸成や,中山間地域の活動を担う次世代のリーダー層の育成・確保を行ってまいりましたが,今後は,これまでの取組により蓄積された多様な人材の交流やネットワークづくりを加速し,実践活動の更なる活発化を図ってまいります。
このため,平成29年度に,特色ある地域づくりのチャレンジを応援し,中山間地域の交流拡大を図るためのプロジェクトを実施することとしており,そのための取組に着手いたします。
なお,JR三江線をめぐる動きにつきましては,今月6日,沿線6市町で構成する三江線改良利用促進期成同盟会の臨時総会において,本県も島根県とともに参加した上で,地域に必要な交通の在り方について,JRを交えて検討を開始することを決定し,14日には,実務者からなる第1回の検討会議が行われたところでございます。
県といたしましては,将来にわたって,地域の住民の皆様にとって必要な交通が確保されるよう,沿線市町と連携して検討を行ってまいります。
次に,「多様な人材が集まる魅力ある地域環境の創出」の取組でございます。
本県の活力強化に不可欠な都市圏の魅力向上を図るため,中長期的な視点で,広島市都心部の目指すべき姿や将来像,その具体化に向けた施策等を示す都心活性化プラン(仮称)について,広島市と連携し,来年度の策定に向けて,引き続き検討を進めてまいります。
広島西飛行場跡地の活用につきましては,平成25年に広島市と共同で策定した跡地活用ビジョンを踏まえ,民間から幅広い利用提案を募集しているところであり,優秀な提案を参考としながら,来年度,跡地利用計画を策定したいと考えております。
サッカースタジアムにつきましては,昨年7月に開催した,広島市長,広島商工会議所会頭との会談での合意事項を踏まえ,実務者レベルの作業部会において,宇品地区の交通課題の解決策に関する検討や,2つの候補地における実現可能性調査を行っているところでございます。
これらの結果について,議会の皆様にもお示しし,御意見も伺いながら,広島市などと協議し,今年度内に一定の方向性を出してまいります。
次に,「瀬戸内 海の道構想の推進」につきましては,本年4月に事業開始を予定している「一般社団法人せとうち観光推進機構」において,瀬戸内7県や,観光関連事業者,金融機関等と広域に連携した瀬戸内ブランド推進体制のもとで,「日本版DMO」として,国内外へのプロモーションをはじめ,民間事業者による観光関連サービスや地域産品等のプロダクト開発,さらには瀬戸内エリアの周遊促進,受入環境の整備促進などの取組を加速してまいります。
クルーズ客船につきましては,今年度から受入を開始した広島港五日市埠頭に,来年度は大型クル-ズ客船が16回寄港する予定であり,宇品を含めた広島港全体では,今年度の約1.5倍の46回の寄港が見込まれております。
現在,五日市埠頭におきましては,今月末の完成を目指して,クル-ズ客船のターミナルとしても利用可能な上屋を整備するなど,受入に向けた準備を進めているところでございます。
引き続き,より良いおもてなしに全力で取り組むとともに,新たに,寄港する大型クルーズ客船を対象としたオプショナルツアーの造成を支援し,県内観光地への周遊を促進してまいります。
次に,「『ひろしま』ブランド価値向上の推進」についてでございます。
本県が,魅力ある地域として選ばれることを目指し,県民が自ら参画し「ひろしま」の魅力を発信するサイトの構築を通じて,「ひろしま」ブランドの価値向上に対する県民の皆様の理解や,ブランド力の向上に向けた活動を促進してまいります。
また,県内外からの認知・評価を高める取組として,フランスでの日本酒のブランド価値向上を目指す販売促進プロモーションや,料理学校における日本酒セミナーの開催,食の魅力向上に向けた,料理コンクールによる「人材の発掘・育成」や,料理人等による学校での出前講座などを行ってまいります。
また,2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催効果を取り込むことにより,本県の魅力を向上させ,国内外に発信するため,競技会場や事前合宿の誘致を実施いたしますとともに,4月から廿日市市で開催されるアジアトライアスロン選手権の運営を支援することとしております。
障害者スポーツにつきましては,先月,推進母体となる広島県障害者スポーツ協会が設立されたところであり,今後は,体験イベントの開催による普及啓発や,競技団体等との連携による選手の発掘・育成・強化などを実施いたします。
これとあわせて,障害のある方の芸術文化活動の振興にも取り組むことで,東京パラリンピックに向けた機運の醸成を図ってまいります。
政策の基本方向の三点目,広島の使命に関する取組でございます。
国際平和拠点ひろしま構想の推進につきましては,引き続き,「核兵器廃絶」と「復興・平和構築」の取組を包括的に進めてまいります。
具体的には,ひろしまラウンドテーブルの開催や,ひろしまレポートの作成・公表,復興・平和構築のための人材育成などを継続して実施していくこととしております。
また,高校生を対象とした「グローバル未来塾inひろしま(仮称)」事業を実施するとともに,「ひろしまジュニア国際フォーラム(仮称)」を開催し,海外と県内の中・高校生が国際平和について議論し,平和のメッセージを世界へ発信するなど,次代の国際平和貢献人材の育成と国際平和の拠点性の向上を図ってまいります。
さらに,平和に関する拠点性の向上に向けた取組を加速するため,国内外の経済人などによる「国際平和のための世界経済人会議」を開催し,企業活動の一環として平和構築の取組が行われるよう議論を展開してまいります。
4月に広島市で開催される主要国首脳会議外相会合に向けましては,広島市や経済界と連携しながら,会議の成功に向けた準備を着実に進めるとともに,被爆の実相に触れる機会の創出や広島の魅力発信などに取り組むこととしております。
また,「ピース・アーチ・ひろしま」プロジェクトの一環として,これまでの成果と課題を踏まえ,「ひろしま平和発信コンサート」として,クラシック・コンサートなどを開催し,音楽により平和のメッセージを強く発信するとともに,平和貢献活動を持続的に支援する仕組みの構築につなげることを目指してまいります。
こうした事業を着実に実施し,人類史上初の被爆地である広島が,国際平和拠点として,核兵器のない平和な国際社会の実現に貢献できるよう取り組んでまいります。
次に,当面する県政の諸課題への対応について,御報告申し上げます。
まず,鞆地区道路港湾整備事業についてでございます。
鞆のまちづくりを促進するため,「町中の交通処理対策」,「防災対策」,「まちづくり基金」につきましては,福山市と連携・協力し,住民の皆様にも御説明しながら,具体的事業を実施しております。
このうち,江之浦から焚場間の課題解決に当たりましては,昨年12月,住民の皆様に対し,道路機能の確保に向けた具体的対策の4つのイメージ案の中から,県としての案をお示しし,関係町内会などへ御説明するとともに,既に地権者との協議も進めているところでございます。
また,防災対策に必要な海岸保全施設の構造等につきましては,必要な調査を行った上で,地元の御意見を踏まえながら,できるだけ速やかに決定してまいりたいと考えております。
なお,これらの事業を着実に進めていくため,先日,原告側の裁判の訴えの取り下げと同時に,埋立免許申請を取り下げたところでございます。
一方で,山側トンネルを含む県の方針につきましては,適切な時期に,住民の皆様に対して説明会を行い,御理解をいただくよう,引き続き,誠心誠意努力してまいります。
次に,広島市東部地区連続立体交差事業についてでございます。
この事業の見直し検討に当たりましては,先月,広島市と連携して安芸区船越地区の住民説明会を開催し,見直しの方向性に理解を求めたところであり,今月には,府中町域において,船越地区の高架の見直し検討に影響のない範囲について,準備工事の入札公告を行っております。
引き続き,関係する皆様の御意見を伺いながら,できるだけ早期に事業効果が発現できるよう,共同事業者の広島市とともに,関係者と協議するなど,取組を進めてまいります。
次に,広島高速5号線についてでございます。
昨年11月のトンネル技術検討委員会の審議を経て,工事の仕様書等を決定し工事の入札手続きを開始したところであり,本定例会において,広島高速道路の全体事業費及び事業期間等の見直しを反映した,整備計画の変更に関連する議案を提出しております。
住民の皆様からの工事等に対する意見や要請につきましては,継続的に回答や説明を行っており,トンネル直上部においては,了解が得られた範囲から用地測量に着手したところでございます。
引き続き,広島市,広島高速道路公社と連携し,住民の皆様の御理解・御協力を得られるよう丁寧な対応に努めながら,着実な事業推進に取り組んでまいります。
これまで申し上げました重点施策等を実行し,チャレンジビジョンの目指す姿を実現していくためには,人や財源など,限られた経営資源を効果的に活用しながら,設定した目標の着実な達成を目指していくことが重要であると考えております。
このため,昨年12月に,チャレンジビジョンに基づく施策推進を支える両輪として「行政経営の方針」と「中期財政運営方針」を策定したところでございます。
今回の予算編成過程においては,これらの方針に基づき,各局一律のマイナスシーリングを廃止し,施策や事業等の優先順位を踏まえた更なる選択と集中を図るなど,予算編成手法の抜本的な見直しを行ったところでございます。
今後も,引き続き,これらの方針に基づき,様々な行財政面の取組を進めてまいります。
次に,平成28年度当初予算案の概要を申し上げます。
まず,「災害に強いまちづくり」や「地方創生」などの重点施策へ経営資源を重点的に配分することとし,326億円を計上したところでございます。
この結果,来年度の一般会計当初予算案の規模は,総額1兆56億円となり,対前年度比74億円,0.7%の増となっております。
予算以外の議案といたしましては,「行政不服審査法施行条例」など,条例案 31件,その他の議案では,「財産の無償貸付けについて」など37件を提出しております。
また,報告事項として,専決処分報告などを提出しております。
どうぞ,慎重に御審議いただき,適切な御議決をいただきますよう,よろしくお願い申し上げます。
ただいま追加提出いたしました議案につきまして,その概要を御説明いたします。
まず,平成27年度の一般会計補正予算案の概要を申し上げます。
国においては,誰もが,家庭,職場,地域で生きがいを持って充実した生活を送ることができる「一億総活躍社会」の実現を目指し,「投資の促進や生産性革命の実現」,「結婚・妊娠・子育て支援の充実」などを内容とする緊急対策と,「農林水産業の体質強化」等のTPP対策を打ち出したところでございます。
こうした対策は,イノベーションの創出や女性の活躍促進など,人口減少を克服し,成長力を確保する「地方創生」に取り組む本県施策の方向性に合致するものでございます。
このため,本県といたしましては,国の対策を活用し,平成28年度当初予算と一体的に,「災害に強いまちづくり」や,「地方創生」に向けた取組などに前倒しで取り組むこととし,82億5,502万円を追加計上しております。
一方で,社会保障関係費など,事業費の確定に伴い,減額の対応を行うとともに,公共事業につきましても,国の認証などによる事業費の確定に伴う減額を行うなど,160億2,907万円の減額の整理を行うこととしております。
また,本年度予算のうち,やむを得ず,翌年度に繰り越して実施する事業について,繰越明許費を計上しております。
以上の結果,一般会計につきましては,77億7,404万円の減額となり,本年度予算の累計額は1兆3億8,416万円となります。
また,特別会計補正予算案は10会計で,30億692万円の減額,企業会計補正予算案は4会計で,19億5,680万円の増額となっております。
どうぞ,慎重に御審議いただいた上,適切な御議決をくださるよう,よろしくお願いいたします。