12月定例県議会の開会に当たり,ただいま提出いたしました議案の説明に先立ちまして,本県を取り巻く情勢及び本年度主要施策の取組状況について,御報告いたします。
まず,経済・雇用の情勢についてでございます。
県内の景気は,生産は横ばい圏内の動きとなっておりますが,設備投資,住宅投資とも緩やかに増加し,また,個人消費も底堅く推移しており,全体として,緩やかに回復しております。
特に,広島カープの快進撃は,9月のリーグ優勝から日本シリーズ終了までの セール効果等により,消費意欲が改善され,食品や外食を中心に需要が高まるなど,民間シンクタンクの試算によりますと,約340億円の多大な経済効果を県内にもたらしております。
雇用・労働情勢につきましては,有効求人倍率は依然として1.6倍台の高水準にあり,雇用者所得は緩やかな増加傾向にあるなど,着実な改善が続いております。
こうした中,シャープ株式会社においては,国内生産拠点の再編を検討中である旨,表明されました。今後の県内の経済・雇用情勢への影響が懸念されますことから,引き続き情報収集に努め,必要な対応を進めてまいりたいと考えております。
また,先月,米国で行われました大統領選において,共和党のドナルド・トランプ氏が選出され,来年1月に発足する新政権の政策に注目が集まっております。
選挙戦の中でトランプ氏が言及した,NAFTA・北米自由貿易協定の見直しや,新政権の経済政策への期待や不安から,円相場に大きな動きが見られることなど,メキシコに生産拠点を置く企業,また,輸出額の多い製造業を始めとする県内企業への今後の影響について,注視する必要があると考えております。
次に,平成28年度における主要施策の取組状況について,御報告いたします。
一点目は,災害に強いまちづくりでございます。
平成26年8月に発生した土砂災害に係る対策につきましては,56箇所の緊急事業が完了し,地域の安全性を高めるための砂防ダムの追加設置など,緊急事業と一体的に実施する事業につきましても,県が実施する全ての箇所において工事に着手しており,おおむね計画どおりに進捗しております。
引き続き,国及び広島市と連携を図りながら,被災地の一日も早い復旧・復興に取り組んでまいります。
また,本年6月に発生した豪雨災害への対応につきましては,広範囲に浸水被害が生じた福山市の瀬戸川流域において治水対策検討会を設置し,具体的な対策案を取りまとめたところでございます。
今後は,この検討会で定めた実施スケジュールに沿って,国,県,市等が連携し,河川改修や排水機場の整備等を計画的に進めてまいりますとともに,県内のその他の箇所につきましても,早期の災害復旧,防災・減災対策を進め,住民の方々の安全・安心の確保に努めてまいります。
土砂災害防止法に基づく基礎調査結果の公表や土砂災害警戒区域等の指定につきましては,昨年3月に策定した基礎調査実施計画に基づいて取り組んでおり,おおむね計画どおりに進捗しております。
基礎調査を平成30年度,土砂災害警戒区域等の指定を平成31年度までに完了させることを目標に,引き続き,全力で取り組んでまいります。
広島県「みんなで減災」県民総ぐるみ運動につきましては,本年8月から9月にかけて実施した県民の防災・減災に関する意識調査の結果,災害の種類に応じた避難場所及び避難経路を確認している県民が54%と,前年の27%から倍増し,非常用持出品の準備を行っている県民も65%と,前年調査から15ポイント上昇いたしました。
これは,平成27年度から行動目標を立てて推進してきた県民総ぐるみ運動で,報道機関と連携した普及啓発など,行動目標の起点となる「知る」取組を集中的に進めたことや,熊本地震や鳥取県中部地震の発生などによる県民の危機意識の高まりなどが背景にあるものと考えております。
一方で,防災教室・防災訓練に参加した県民は33%と,前年調査から2ポイントの上昇にとどまるなど,防災・減災活動を「実践する」取組については,今後一層の対策が必要であると考えております。
今回の調査結果も踏まえ,県民自ら,災害から命を守るための適切な行動がとれるよう,「知る」取組を着実に進めるとともに,行動計画に定める,「知る」取組から「実践する」取組へのシフトも念頭に,引き続き,行動目標の早期達成に向けて着実に取り組んでまいります。
二点目は,地方創生の取組についてでございます。
まず,「新たな経済成長」について御報告いたします。
イノベーション・エコシステムの基盤強化につきましては,新しい発想法や先進事例に刺激を受けることで,新たなビジネスを生み出す人材を育む「イノベーション・ハブ」の運営など,持続的にイノベーションを生み出す事業環境の整備に取り組んでまいりました。
今後は,ビジネスや地域づくりなど,新たなことにチャレンジする多様な人材が出会い,交流する「常設の場」を開設することとし,必要な経費を12月補正予算に計上しております。
こうした取組を通じて,人・資金・情報などが集積・結合することにより,新たなつながりやイノベーションが次々と生み出される好循環の創出を加速してまいります。
次に,多様な創業の促進についてでございます。
昨年度立ち上げました「オール広島創業支援ネットワーク協議会」による,創業支援担当者のレベルアップや,創業を通じた地域課題の解決を図る取組に加え,10月から,県内の創業に関する情報を集約したポータルサイト「ひろしまスターターズ」を開設し,広島での創業の魅力などの情報発信を開始いたしました。
また,同じく10月に,若者の創業意識の醸成を目的に,全国の学生に向けて,ビジネスプランコンテストの募集を開始いたしました。
今後も,こうした取組を通じて,多様な創業の促進を図ってまいります。
次に,多様な投資誘致の促進についてでございます。
今年度から,企業の本社・研究開発機能や人材に着目した誘致活動を積極的に展開しております。
こうした活動の結果,カルビー株式会社が,10月11日に広島駅前に新商品開発拠点を開設して業務を開始したほか,今年度,新たに創設した「企業人材転入助成制度」の適用第1号として,企業の基幹システムを手掛けるIT企業,株式会社ドリーム・アーツが,12月8日に広島市内に本社機能として新たな拠点を構えることとなりました。
引き続き,企業の本社機能等の更なる移転の実現を目指して,積極的な投資誘致活動に取り組んでまいります。
また,昨年,政府関係機関の地方移転第1号として東広島市に移転した酒類総合研究所東京事務所に続き,理化学研究所が,中四国地方で初めての共同研究拠点を本県に設置する運びとなりました。
平成29年度の開所に向けて,初年度に必要となる施設整備費等を12月補正予算に計上しております。
理化学研究所の一細胞質量分析技術と,広島大学のゲノム編集技術の融合により,食品分野や創薬・医療分野などにおける開発の促進や,最先端分野での研究を始めとする関連産業の集積と,県内企業の技術力向上を図ってまいります。
次に,担い手が生活設計を描ける農林水産業の確立についてでございます。
本県では,農林水産業が将来にわたって持続的に発展することを目指し,「2020広島県農林水産業チャレンジプランアクションプログラム」に基づく取組を進めております。
このうち,畜産業につきましては,血統に着目した和牛産地の再構築と市場競争力の強化を図るため,本年6月,和牛の体外受精卵の増産に必要な施設を整備し,広島県産和牛頭数の増加に取り組んでおります。
あわせて,畜産経営体の一層の体質強化を図るため,市町,関係団体が新たに計画しております,飼料用の稲などを活用した混合飼料の製造施設の整備を支援することとし,必要な経費を12月補正予算に計上しております。
次に,「人づくり」の分野でございます。
働き方改革の推進につきましては,今年度初めて実施しました県内企業の働き方改革取組実態調査の結果,働き方改革に取り組む県内企業の割合は約3割で,取り組んでいる企業の中でも進捗度合に差があり,また,取り組んでいない企業の中にも取組に前向きな企業もあることなどが明らかになりました。
また,有効性の検証のために試行実施いたしました働き方改革に関する企業コンサルティングは,取組のノウハウが不足している企業に対して,課題分析,仕組みづくり,行動支援という手順により,経営者や社内推進者に寄り添いながら取組方法を指導・助言していくことで,有効に機能することを確認いたしました。
こうした結果によって明らかになりました課題を踏まえ,今後,県内における働き方改革の優良事例が県内全体の取組を牽引し,働き方改革に取り組む企業の裾野が広がるという好循環を目指した施策を検討してまいります。
次に,広島版「学びの変革」アクション・プランの推進についてでございます。
「学びの変革」を先導的に実践し,県全体の教育水準向上を牽引する学校,いわゆるグローバルリーダー育成校につきましては,現在,教育カリキュラムの検討を進めており,先般,教育内容等を紹介するパンフレットを作成,公表いたしました。
また,教員の人材育成や海外とのネットワーク拡大などに引き続き取り組むとともに,学校施設につきましても,設計者を決定し,基本設計に着手したところでございます。
今後とも,平成31年4月の開校に向け,必要な諸準備に鋭意取り組んでまいります。
次に,「安心な暮らしづくり」の分野でございます。
障害の特性に応じた総合的な支援の推進に向けた取組といたしまして,聴覚障害のある方への情報・意思疎通支援の拠点となる「広島県聴覚障害者センター」を,来年1月5日に健康福祉センター内に開設し,手話や字幕入りのビデオ等の製作及び貸出し,相談対応,手話通訳者の養成などを行い,聴覚障害者の積極的な社会参加を促進してまいります。
最後に,「豊かな地域づくり」の分野でございます。
中山間地域の地域力強化につきましては,人材のネットワークづくりを加速するとともに,中山間地域の活性化を図る「ひろしま さとやま未来博2017」の,来年3月の開幕に向けた準備に取り組んでおります。
具体的には,小学校の廃校舎など,一定の役割を終えた施設を再生し,新たな価値を生み出す廃校リノベーションについて,サポーターの参加を得たワークショップで活用方法を議論し,設計に着手したところであり,今後,多くの皆様の共感を得るよう努めつつ,事業を進めてまいります。
また,地域づくりに取り組む県民の多様な活動を支援する「ココロザシ応援プロジェクト」につきましては,これまでに2回の募集を行い,163件を採択いたしました。
引き続き募集を実施し,多くの方々の参画を得て効果的な展開が図られるよう,積極的な支援を行ってまいります。
さらに,3か月後に迫った開幕に向けてプロモーション活動を本格化し,更なる機運の醸成に努めるとともに,県民の積極的な参画を促してまいります。
次に,JR三江線をめぐる動きについてでございます。
平成30年4月1日の三江線廃止を見据え,バス等の代替交通の確保を図るため,島根県及び沿線6市町と共同で,地域の公共交通の再構築に向けた取組を開始いたしました。
11月10日に開催いたしました,地域公共交通活性化再生法に基づく計画の策定に向けた第1回協議会に続き,様々な場面で関係者との協議を行ってまいります。
県といたしましては,関係者と連携の上,鉄道に代わる新たな生活交通が確保されるよう,主体的な役割を果たしてまいります。
次に,サッカースタジアムについてでございます。
去る9月14日,広島市長,広島商工会議所会頭と共に行った株式会社サンフ レッチェ広島の久保会長との意見交換において,建設候補地については,旧広島市民球場跡地及び広島みなと公園の2か所を残しつつ,サッカースタジアム検討協議会の議論の経過も踏まえ,中央公園広場をその他の候補地として,4者が協力して検討することについて合意いたしました。
現在,中央公園広場を新たに候補地に加えることについて,基町地区の自治会の皆様に,これまでの経緯等の説明を行った上で,御意見を伺っているところでございます。
引き続き,広島市等と連携して検討を進め,方向性を打ち出していけるよう努めてまいります。
次に広島西飛行場跡地活用についてでございます。
平成25年5月に広島市と共同で策定した広島西飛行場跡地活用ビジョンの実現を目指し,今年度末を目途に,ビジョンをより具体化した広島西飛行場跡地利用計画を策定したいと考えております。
引き続き,県議会を始め,県民の皆様から御意見を伺いながら,広島市と連携して広島西飛行場跡地活用の具体化を進めてまいります。
次に,瀬戸内ブランドの推進についてでございます。
10月30日に開催いたしました「サイクリングしまなみ2016」につきましては,国内外から,約3,500名の方々に御参加いただきました。
参加者の皆様には,高速道路を自転車で走行し,しまなみ海道の絶景を堪能していただくとともに,大会に御協力いただいた地域の方々との交流を通じて,瀬戸内の島ならではのおもてなしの心を感じていただいたことで,大会に満足していただけたものと考えております。
これを契機に,「サイクリストの聖地」として,更なる認知度の向上と,交流人口の拡大を通じた地域の振興・活性化に取り組んでまいります。
次に,2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした地域の活性化についてでございます。
近年,県内企業のグアナファト州への進出を契機に,本県と経済的,文化的なつながりが深まっているメキシコ合衆国の事前合宿を誘致することにより,県内全域で,様々な分野での交流が実現することを目指し,現在,県内市町,経済界,競技団体等と連携して,早期の合意に向けた交渉を進めております。
また,東京大会に向けた県内の機運を醸成するため,来週13日に広島グリーンアリーナにおいて,日本体操選手団によるリオデジャネイロオリンピック報告演技会を,日本体操協会と連携して開催いたします。
県民の皆様に,団体金メダルを獲得した世界水準の技を間近に感じていただきたいと考えております。
引き続き,東京大会を見据え,地域の活性化につながる取組を,一層推進してまいります。
三点目は,広島の使命としての「国際平和拠点ひろしま構想」の推進についてでございます。
10月14日,15日の2日間,フィリップ・コトラー教授を始め,国際的NGO,研究機関,経済界の関係者に御参加いただき,「2016国際平和のための世界経済人会議」を開催いたしました。
会議では,国際平和実現に向けた経済界及びマーケティングの役割について活発な議論が行われるとともに,今後,広島が,国際平和拠点として取り組むべき平和研究や発信力の強化など,様々な御提案をいただきました。
広島が,核兵器のない平和な国際社会の実現に具体的に貢献できる国際平和の拠点となるよう,この成果を,今後のセンター機能の検討に生かしてまいります。
次に,当面する県政の諸課題への対応について,御報告いたします。
まず,福山市との連携についてでございます。
先月25日に,福山市長と,福山駅前の再生,鞆のまちづくり,妊娠,出産,子育ての切れ目ない支援などの幅広い分野において,連携して進めていくことを合意いたしました。
今後とも,定期的に福山市長との会談を開催することにより,良好なパートナーシップや信頼関係を深め,本県の発展に結び付けてまいります。
次に,水道事業の広域連携についてでございます。
水道事業につきましては,県・市町ともに,施設の老朽化,職員数の減少,人口減少による料金収入の減少など,課題を有しております。
このため,水道事業の広域連携について,県と市町による検討体制を構築し,10月から検討を開始いたしました。
今後は,市町と協議し,その意向を踏まえながら,水道サービスの最適化に取り組み,持続可能な水道事業の実現を目指してまいります。
次に,鞆地区道路港湾整備事業についてでございます。
鞆のまちづくりを促進するため,福山市と連携・協力し,住民の皆様にも丁寧に御説明しながら,昨年度から,具体的な事業を実施しております。
このうち,町中の交通処理対策につきましては,県営鞆町鍛冶駐車場について,来年2月の供用に向けて工事を進めており,本定例会において,指定管理者の指定について提案しております。
また,江之浦から焚場間の道路機能の確保について,地権者の方々との用地交渉を進め,一部契約に至ったところでございます。
防災対策につきましては,雁木を復元する工事に着手するとともに,防災上必要な機能の確保と,景観や歴史的遺構などの価値保全の観点から必要な調査を行い,地元の御意見も踏まえながら進めております。
一方で,山側トンネルを含む県の方針につきましては,適切な時期に住民の皆様に対して説明会を開催し,御理解をいただくよう,引き続き,努力してまいります。
次に,広島高速5号線についてでございます。
現在,二葉の里地区の橋梁工事やトンネル詳細設計を実施するとともに,工事による家屋への影響の有無を把握するための事前調査等について地元説明会を開催するなど,トンネル掘削に向けた準備を鋭意進めております。
今後も,広島市,広島高速道路公社と連携し,住民の皆様の御理解・御協力を得られるよう,丁寧な対応に努めながら,着実な事業推進に取り組んでまいります。
さて,今回提出いたしました議案について,その概要を御説明申し上げます。
まず,一般会計補正予算案につきましては,9月補正予算編成後の状況変化等を踏まえ,必要性が認められる事業に適切に対応することを基本とし,国の経済対策も活用して,編成したところでございます。
具体的な補正の内容でございますが,地方創生に向けた取組に時機を逃さず対応するための経費などについて,予算を計上しております。
また,職員の給与について,去る10月7日に行われました,人事委員会の勧告等の趣旨を尊重し,給料月額や勤勉手当などを引き上げる措置を講ずることといたしております。
これらの結果,一般会計の歳入歳出補正予算額は,23億1,158万円の増額となり,本年度予算の累計額は,1兆396億5,727万円となります。
次に,予算以外の議案といたしまして,職員の給料月額等を改定する条例案など8件,人事案件といたしまして「広島県収用委員会委員の任命の同意について」の1件,その他の議案では,「工事請負契約の締結について」など7件を提出しております。
また,報告事項として,専決処分報告などを提出しております。
どうぞ,慎重に御審議いただいた上,適切な御議決をいただきますよう,よろしくお願いいたします。