2月定例県議会の開会に当たり,県政運営の基本的な考え方や来年度における施策の概要等を申し上げた上で,ただいま提出いたしました平成29年度当初予算案を始めとする議案の概要を御説明いたします。
まず,経済・雇用の情勢についてでございます。
県内の景気は,生産は横ばい圏内の動きとなっておりますが,設備投資,住宅投資とも緩やかに増加し,また,個人消費も底堅く推移しており,全体として,緩やかに回復しております。
雇用・労働情勢につきましては,有効求人倍率は全国平均を上回る高水準が続き,雇用者所得は緩やかな増加傾向にあるなど,着実な改善が続いておりますが,反面,建設業やサービス業,小売業を中心に,従業員の不足感が続いており,人材確保の面で課題が生じていると認識しております。
一方,先月20日,米国でドナルド・トランプ新大統領が就任し,早速,TPP・環太平洋パートナーシップ協定からの離脱や,NAFTA・北米自由貿易協定について,メキシコ,カナダ両国と再交渉を行い,交渉が整わない場合は離脱するとの表明がなされました。
また,今月10日に行われた日米首脳会談後の共同声明には,麻生副総理とペンス副大統領による経済対話の実施が盛り込まれました。
今後,この経済対話を通じた為替や関税を始めとする日米間交渉が,本県経済に与える影響に留意するとともに,米国新政権や中国,EUなど,世界経済の動向を注視してまいります。
次に,平成29年度は,知事としての2期目の任期の最終年度となりますことから,まず,県政運営の基本的な考え方につきまして,御説明いたします。
知事就任の翌年に策定した「ひろしま未来チャレンジビジョン」におきまして,人口減少・少子高齢化及び経済活動を始めとするグローバル化を,未来を展望する上での重要な変化と捉え,こうした社会変化に的確に対応しながら,目指す姿に近付くための施策に取り組んでまいりました。
人口減少対策につきましては,子育て支援などの自然減対策と,移住・定住促進などの社会減対策を,強力に推進してまいりました。
この間,合計特殊出生率は全国を上回る伸びで改善し,平成21年の1.47から,平成27年には,全国平均の1.45を大きく上回る1.60に至りました。
同時に,イノベーションの推進と県内産業の競争力強化,産業人材の育成・集積などに取り組んできた結果,本県経済は,国内総生産の伸びを大きく上回る,4年間で約7%の成長率で回復基調を続けております。
また,中山間地域においても,「過疎地域の未来創造支援事業」からスタートし,豊かで持続可能な地域の実現を目的に制定いただきました「広島県中山間地域振興条例」に基づき,国に先駆けて,まち・ひと・しごと創生の取組を加速してまいりました。
中でも,移住・定住促進に積極的に取り組んでこられた地域では,一部に人口の社会増が見られるなど,東京一極集中の時代から,人々が主体的に,住む場所・働く場所を選ぶ時代への萌芽が見え始めております。
好調な経済の影響もあり,全県の人口動態も,昭和50年の国勢調査以来40年ぶりに5千人を超える社会増に転じました。
一方,経済活動を始めとするグローバル化は,県内企業の海外事業展開の進展や,外国人観光客,外国籍住民の大幅な増加など,予想を上回るスピードで進んでおります。
グローバル化に対応できる人材の必要性が一層高まる中,県立学校においては,海外の学校との姉妹校提携や,高校生の留学機会増加などの取組で着実に成果が出ており,また,平成31年には,地域や世界のより善い未来を創造できるリーダーの育成を目的として,「学びの変革」を先導的に実践する学校,いわゆるグローバルリーダー育成校を開設することとしております。
さらに,この間,メキシコ・グアナファト州,中国四川省を始めとする国際交流の進展や,留学生受入・定着促進の取組による外国人留学生の増加など,様々な分野で,グローバル化への対応を着実に進めております。
また,全ての広島県民の願いであります核兵器廃絶と国際平和の実現に向けて,ひろしまラウンドテーブルの開催やひろしまレポートの作成・公表など,国際平和拠点としての本県の発信力向上を目指して様々な取組を進めてまいりました。
今後も,様々な社会変化に的確に対応し,県民の皆様と共に,より良い将来像を目指して進んでいくことができるよう,真に時代のニーズに即した施策に着実に取り組んでまいりたいと考えております。
続いて,ただいまの認識を踏まえ,平成29年度の政策の基本方向について申し上げます。
来年度は,「広島からの地方創生 ~共感から行動へ。広島県はあなたの欲張りライフを応援します」を基本姿勢とし,県民の皆様に,「仕事も暮らしも。欲張りなライフスタイルの実現」という目指す姿に共感していただく取組に加え,それぞれの欲張りライフの実現を応援し,主体的な行動変容につなげていく取組を進めてまいります。
このため,産業振興と雇用創出,交流人口の拡大を図る「新たな経済成長」,これからの広島県を内外から支える人材を育成する「人づくり」,全ての県民の皆様が安心して生活し,幸せを実感することができる「安心な暮らしづくり」,広島が住みやすく個性ある豊かな地域として国内外から選ばれる「豊かな地域づくり」の4つの政策分野を相互に連関させ,好循環を生み出す流れの創出を引き続き推進してまいります。
あわせて,平成26年8月に発生した土砂災害や昨年6月の豪雨災害の復旧事業を始めとする「災害に強いまちづくり」と,昨年5月のオバマ前米国大統領の被爆地・広島訪問を契機に高まっている「平和への希望が集う場所」としてのブランド価値を含む「広島の価値の共鳴・共振」の2つの分野の取組を一層推進してまいります。
中でも本年度は,県民の皆様の欲張りライフを応援するため,特に,成育環境の違いにかかわらず,全ての子供が健やかに夢を育むことのできる社会づくり,個人の状況やライフスタイルに応じた多様な働き方の促進,雇用や強い地域経済をつくるためのイノベーションの加速,そして,都市の魅力向上と中山間地域の地域力強化の4つの視点から,特徴を持った取組を進めてまいります。
こうした取組を通じまして,県民の皆様の「仕事でチャレンジ!暮らしをエンジョイ!」が,活気あふれる広島県を生み出し,一層の経済成長や地域活性化に寄与することで,広島から,全国に新たな日本の力を広げてまいりたいと考えております。
次に,平成29年度の主要施策の概要について,御説明申し上げます。
一点目は,「成育環境の違いにかかわらず,全ての子供が健やかに夢を育むことのできる社会づくり」でございます。
次代を担う子供たちが,生まれ育った環境に左右されることなく,健やかに育ち,夢や希望,意欲にあふれた自立した人間へと成長することは,県民全ての願いであり,また,子供たちが,将来,欲張りなライフスタイルを実践できるよう支えることが重要と考えております。
まず,子供の貧困問題に対する支援の在り方を検討するため,子供の生活実態や学習環境等の調査を行うとともに,全ての子供たちが,家庭の経済的事情などを背景とした教育課題を克服することができる「学びのセーフティネット」を構築するための検討を行うこととしております。
さらに,安心して妊娠・出産・子育てができる環境の整備に向け,母子保健と子育て支援が一体となったワンストップサービスによる切れ目のないサポート体制である「ひろしま版ネウボラ」の構築に取り組んでまいります。
保育サービスにつきましては,認定こども園等の施設整備や保育士の人材確保により,サービスの充実を図るとともに,企業内保育所の設置促進や,病児保育の利便性の向上など,保育の質・量の確保に多面的に取り組むことで,いつでも安心して預けられる環境づくりを進めてまいります。
また,本県では,「幼児期から大学・社会人まで」を見据え,オール広島県で,「生涯にわたって主体的に学び続け,多様な人々と協働して新たな価値を創造することのできる人材」の育成に取り組んでおります。
乳幼児期につきましては,先般,本県の乳幼児期の教育・保育の基本的な考え方や,それを実現するための施策の具体的な取組をまとめた「『遊び 学び 育つひろしまっ子!』推進プラン」を策定いたしました。
今後は,県内全ての乳幼児に対し,乳幼児期に育みたい力の育成に向けた教育・保育が行われるよう,各施策を着実に推進してまいります。
二点目は,「個人の状況やライフスタイルに応じた多様な働き方の促進」でございます。
まず,働き方改革の推進についてでございます。
働き方改革に取り組む企業の優良事例が,県内全体の取組を牽引し,裾野が広がっていく好循環の創出に取り組んでまいります。
このため,企業の優良な取組事例を見える化し,積極的に発信するとともに,働き方改革の専門コンサルタントを活用してモデルとなる企業の創出に取り組んでまいります。
また,イクボス同盟ひろしまの活動の充実などを通じて,経営者層の意識改革を働きかけるとともに,ノウハウ不足といった課題を抱える企業に対しては,取組の導入や実践の支援として,外部専門家によるアドバイスや,企業内の推進人材の育成支援を行い,企業の取組を後押ししてまいります。
次に,女性の活躍促進についてでございます。
職場における女性の活躍を進めるためには,男性も含めた働き方改革の推進と併せて,女性がその個性と能力を十分に発揮して働くことのできる環境の整備が重要でございます。
このため,将来,管理職となる世代の女性を対象としたキャリアアップ研修など,企業等が行う人材育成の取組を支援するとともに,「働き方改革推進・働く女性応援会議ひろしま」と連携して先進事例を発信するなど,企業経営者や管理職層の意識改革を図ってまいります。
また,働く意欲のある女性に対しては,引き続き,「わーくわくママサポートコーナー」のきめ細かな相談体制による就業支援を実施するなど,働いている女性,これから働きたい女性が,いきいきと活躍できる社会の実現に向けて取り組んでまいります。
三点目は,「雇用や強い地域経済をつくるためのイノベーションの加速」でございます。
これまで,様々なプレイヤーが相互につながり,絶え間ないイノベーションが創出されるイノベーション・エコシステムの共通基盤の強化の取組を推進してまいりました。
この取組を更に加速させ,本年3月には,地域におけるイノベーションを実現するため,新たなビジネスや地域づくりなどにチャレンジする多様な人材が出会い・交流することのできる常設の場を開設し,異業種間や産学連携による新規事業,新しいビジネスと地域づくりが融合した取組など,新たなイノベーションに向けた事業化プロジェクトの創出を図ってまいります。
次に,多様な創業と新事業展開の促進についてでございます。
県内の創業は徐々に活発化し,開業率は,4.4%まで上昇しておりますが,最終目標である10%とは大きな開きがございます。
引き続き,ひろしま創業サポートセンターを中核機関とし,行政,経済団体,金融機関,産業支援機関等で構成する「オール広島創業支援ネットワーク」による創業支援や,シニア世代による創業の促進などを通じて,創業機運の醸成と,潜在的な創業希望者の拡大に取り組み,多様な創業の促進を図ってまいります。
あわせて,県内総生産の7割を占めるサービス産業の労働生産性の向上にも取り組んでまいります。
次に,多様な投資誘致の促進についてでございます。
今年度誘致が実現いたしました株式会社ドリーム・アーツ広島本社やカルビー株式会社の研究開発拠点のような,機能や人材に着目した誘致について,引き続き,積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
また,県内産業団地への従来型の企業誘致につきましては,東広島市と共同で整備しております東広島寺家産業団地で,全ての区画において立地企業を決定いたしましたほか,三原市本郷地区において造成工事に着手する産業団地への早期の企業立地を図るため,地元市と一体となって,誘致に取り組んでまいります。
次に,産業競争力の強化についてでございます。
産業クラスター形成に向けた取組のうち,医療関連産業分野では,これまで150件を超えるプロジェクトが着実に進行し,医療機器等の生産額も増加しております。
新たに,全国レベルのプロジェクト創出など企業誘致に向けた環境を整備し,医療関連産業の一層の振興と集積を図ってまいります。
また,環境浄化産業分野におきましては,ベトナム及びインドネシアにおいて,引き続き,ビジネスマッチングの実施やハンズオン支援の充実を図るなど,産業の集積や売上規模の拡大に取り組んでまいります。
このほか,県内ものづくり産業の高度化に向け,航空機産業の裾野拡大や,感性工学に基づく製品開発を支援することとしております。
次に,世界と直結するビジネス支援についてでございます。
県内企業の海外展開の促進に向け,引き続き,海外での販路拡大支援や,シリコンバレーなど外国企業との連携により新たな価値を生み出すビジネス展開支援を実施してまいります。
あわせて,ビジネス・観光の交流拡大を図るため,広島空港の拠点性強化を進めてまいります。
昨年10月からのLCC航空会社・エアソウルの就航を契機に,韓国と広島との交流を更に拡大するため,双方向の需要の掘り起しに取り組み,路線の定着・拡充を図ってまいります。
さらに,本県から多くの事業所が進出し,成長著しい東南アジアへの新規路線開設に向け,LCCも含めた誘致活動を積極的に行ってまいります。
また,広島空港の経営改革につきましては,アクセスを含めた空港機能の強化や,民間事業者と連携する枠組みの構築など,空港活性化の方策や実施スキームに係る基本方針の策定を進めております。
今後,県の考え方を取りまとめた方針案につきまして,県民の皆様から御意見を伺い,幅広く御議論をいただいた上で,策定してまいりたいと考えております。
次に,担い手が生活設計を描ける農林水産業の確立についてでございます。
本県農林水産業が将来にわたって持続的に発展することを目指し,「2020広島県農林水産業チャレンジプランアクションプログラム」に基づいて,農林水産業の経営体質の一層の強化に向けた構造改革を進めてまいります。
まず,農業分野につきましては,JAグループ等と一体となって,ひろしま型の農業を創り出すための新たな担い手育成を推進するほか,農地中間管理機構を活用し,新規就農者や認定農業者等のニーズに応じた農地を確保することなどにより,農業経営者の確保・育成や地域農業を牽引する経営力の高い担い手の育成に取り組んでまいります。あわせて,庄原市や安芸高田市などで取組を進めております大規模農業団地の整備を計画的に行い,キャベツ等の園芸品目の生産拡大を図ってまいります。
畜産分野につきましては,県産和牛の生産拡大を目指し,本県が有する受精卵製造の高い技術を生かした和牛子牛の増頭や,生産された子牛を県内で肥育する協定の締結などを進めており,来年度は,この取組を更に拡大してまいります。
林業につきましては,「ひろしまの森づくり事業に関する推進方針」を定め,県民の皆様の御理解と御協力の下,向こう5年間における森林の整備や保全活動に着実に取り組むとともに,県産材の競争力強化のため,大規模製材工場への安定供給体制の整備の推進や,境界などの森林情報を明確にしていく仕組みの導入に取り組んでまいります。
水産業につきましては,資源管理計画に基づき,中西部海域においてオニオコゼやキジハタの集中放流を開始するとともに,東部海域におけるガザミやカサゴの集中放流を継続してまいります。
加えて,放流効果を高めるため,稚魚の育成場となる藻場の造成や,漁業者が主体となった効果的な資源管理を促し,県内全海域で水産資源の増大を進めてまいります。
四点目は,「都市の魅力向上と中山間地域の地域力強化」でございます。
来る3月25日,「ひろしま さとやま未来博2017」がいよいよ開幕を迎えます。
11月までの約8か月にわたって,中山間地域への共感を得るためのシンボルプロジェクトや,地域づくりに取り組まれる皆様の多様な活動を後押しするココロザシ応援プロジェクトなどを展開してまいります。
こうした取組を通じて,県民の皆様が地域づくりの活動の輪を広げ,多くの方々が中山間地域の価値に共鳴するとともに,地域の未来を支える主体として意欲を持って活躍できるよう取り組んでまいります。
次に,魅力ある地域環境の創出についてでございます。
本県の持続的な発展に向け,広島市都心部の中枢拠点性の向上を図るため,広島市と連携して,今年度末を目途に,「ひろしま都心活性化プラン」の策定を進めております。
今後,このプランで描く都心の目指す姿の実現に向け,広島市と共に,推進体制の構築を図りながら,県民・市民,地元企業など様々な主体と連携し,土地の高度利用やにぎわいあふれる空間を創出していくため,都市計画制度による規制の見直し検討などを進めてまいります。
また,備後都市圏の活性化につきましては,備後圏域の玄関口である福山駅前地区の再生に向け,福山市が策定するまちづくりビジョンの検討に参画しており,引き続き,福山駅前地区の果たすべき役割や集積を図るべき都市機能の検討を行ってまいります。
次に,サッカースタジアムについてでございます。
従前から候補地として検討しておりました旧広島市民球場跡地と広島みなと公園の2か所に加え,新たに,中央公園広場における実現可能性の調査を実施し,基町地区の住民の方々と意見交換を行うなど,引き続き,広島市及び広島商工会議所と連携して検討を進め,方向性を打ち出していけるよう努めてまいります。
次に,広島西飛行場跡地の活用についてでございます。
平成25年度に策定した広島西飛行場跡地活用ビジョンの具体化を図るため,今年度末を目途に,広島市と共同で「広島西飛行場跡地利用計画」の策定を進めております。
計画策定後,民間による開発を想定しているゾーンの事業予定者の募集を行うとともに,跡地活用に必要な交通アクセスの改善に向けた道路整備等に着手するなど,着実に跡地の利活用を進めてまいります。
次に,魅力ある居住環境づくりについてでございます。
現在策定を進めております住生活基本計画において,「多様な人材をひきつける魅力的な居住環境の整備」を目標の一つに掲げ,首都圏などと比べ,都市部における広くゆとりある住宅など,多様なニーズに応じた住まい選びが可能となる魅力的な居住環境の充実に向けて取り組んでまいります。
次に,このほかの,欲張りライフを応援するための施策を御説明いたします。
まず,広島に育ち,学ぶ子供たちの学校生活における希望の実現を後押しする施策でございます。
小・中・高等学校における「広島版『学びの変革』アクション・プラン」の推進につきましては,課題発見・解決学習のカリキュラム開発や実践研究を継続し,平成30年度の全県展開に向けて,これまでの研究成果の普及に取り組むとともに,県立学校での学習に効果的に活用できるICT環境の整備に取り組み,主体的に学ぶ力の育成を推進してまいります。
「学びの変革」を先導的に実践し,県全体の教育水準向上を牽引する学校,いわゆるグローバルリーダー育成校につきましては,教育カリキュラムの開発を始めとする学校の全体像の検討を加速させるとともに,教員の採用・育成,国内外のネットワーク拡大,宿泊体験型のサマースクールの実施,学校施設の設計など,平成31年4月の開校に向けた取組を着実に進めてまいります。
こうした取組により,広島で生まれ,育ち,住み,学んだ全ての人々が,将来,「広島で学んで良かった」と思える日本一の教育県の実現を目指してまいります。
また,新卒学生の県内就職に向けた後押しとして,県内大学生のインターンシップの拡大や企業見学会,高校生を対象とする県内企業出前講座などに取り組んでまいります。
あわせて,関東・関西の大学との就職支援協定の締結など連携の拡大や,中四国・九州の大学との関係構築,県内就職に向けた意識醸成や就職活動時における企業とのマッチングに取り組み,県外大学生のUIJターン就職の促進を図ってまいります。
次に,出会い・結婚に関する希望の後押しについてでございます。
本県の取組をモデルに全編広島ロケで製作された映画「こいのわ~婚活クルージング」の本年秋の公開を機に,結婚したい独身男女のみならず,幅広い層に向けて,出会い・結婚に関する啓発プロモーションを展開してまいります。
次に,住み慣れた地域で暮らし続けることへの支援についてでございます。
団塊の世代の方々が75歳以上となり,医療や介護の需要が大きく増加していく平成37年を見据えて策定した「地域医療構想」に基づき,病床機能の分化・連携の促進,地域包括ケアシステムの確立,医療・福祉・介護人材の確保・育成など,信頼される医療・介護提供体制の構築に取り組んでまいります。
また,がんのリスクを軽減する予防対策や,市町や企業と連携したがん検診受診促進の取組を強化するとともに,がんになっても働き続けやすい環境づくりに積極的に取り組むなど,引き続き「がん対策日本一」の実現に向け,県民総ぐるみの対策を推進してまいります。
さらに,県民の健康寿命の延伸を図るため,今年度から,レセプト情報等を活用し,糖尿病の発症や重症化リスクが高い方に新たな手法で保健指導を行うモデル事業の実施や,健診受診や運動の実践等により様々な特典が得られるヘルスケアポイント制度の構築に取り組んでおります。
来年度は,これらを一人でも多くの方々に利用していただけるよう,医療保険者や企業等と連携して取り組み,県民の皆様の生活の質と幸福度の向上を図ってまいります。
国民健康保険の制度改革につきましては,平成30年度から,県も保険者として財政運営の責任主体となることから,現在,保険料負担の公平性の確保を中心に市町との協議を進めております。
来年度は,運営方針や市町ごとの納付金及び標準保険料率を定めるなど,新たな国民健康保険制度の円滑な施行に向けて着実に準備を進めてまいります。
次に,安全・安心・日本一に向けた県民総ぐるみ運動の推進についてでございます。
一昨年から取り組んでまいりました「なくそう交通死亡事故・アンダー90作戦」につきましては,交通安全に関する広報啓発活動の展開など,官民一体となって取り組んだ結果,昨年ついに,交通事故死者数が,統計の残る昭和23年以降最少の86人となり,目標を達成いたしました。
本年からは,第10次広島県交通安全計画の目標達成を目指し,「アンダー75作戦」を推進してまいります。
また,県内の犯罪情勢につきましては,昨年の刑法犯認知件数がピーク時の3割以下にまで減少し,日本一安全・安心な広島県の実現に向けて大きな成果を上げているところでございます。
こうした成果を踏まえつつ,県民だれもが穏やかで幸せな暮らしを実感できるよう,引き続き,安全・安心なまちづくりを進めてまいります。
次に,暮らしを楽しむ機会の創出についてでございます。
まず,観光地ひろしまの推進についてでございます。
地域経済への波及効果の大きい観光関連産業の活性化を図るため,地域の核となる観光資源のブラッシュアップや,市町,民間事業者等と連携した観光キャンペーン等に加え,インパクトを重視した観光プロモーションを展開することにより,国内外からの観光客の誘致と周遊促進に取り組んでまいりました。
こうした取組により,総観光客数は平成22年の5,577万人から平成27年の6,618万人へと大きく増加しており,4年連続で過去最高を記録するなどの成果が現れておりますが,地域経済の活性化につなげていくためには,観光客数だけではなく,飲食や宿泊消費等を通じた観光消費額を更に増加させていくことが重要でございます。
このため,周遊性の向上や滞在時間の延長,宿泊・飲食など,観光消費額の増加につながるプロダクトの開発・育成と,その情報を届けるための効果的なプロモーション展開など,魅力ある観光地づくりを推進してまいります。
さらに,2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて,多くの外国人観光客が本県を訪れるよう,国や地域ごとの特性に応じた誘客戦略に基づき,インバウンド観光の促進に向けた取組を進めてまいります。
「瀬戸内 海の道構想」の推進につきましては,平成28年4月に事業開始したせとうちDMOと連携し,瀬戸内ブランドの確立を通じた交流人口の拡大による地域産業の活性化を図る取組を進めた結果,平成24年と比較して,瀬戸内への来訪意向は3.8%増,外国人延宿泊者数は2.5倍以上に増加しております。
今後も,瀬戸内を共有する近隣県やせとうちDMOと一層連携して,観光プロダクト開発を促進するとともに,プロモーションの充実を図り,外国人観光客数や観光消費額の増加に向けた取組を進め,「瀬戸内 海の道構想」の実現を目指してまいります。
次に,2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした地域活性化についてでございます。
東京大会に参加するチームの事前合宿の受入れにつきましては,本県におけるスポーツの振興に直接つながるとともに,受入国と,文化,教育,経済など様々な分野での交流が行われることで,将来にわたって,本県の活力につながる契機になると考えております。
このため,現在,メキシコ合衆国選手団の誘致に向けた調整を積極的に行っており,先月には,メキシコオリンピック委員会幹部の視察が実現したところでございます。
この視察を通じて,本県の競技施設が,メキシコ側が求める要素を十分に満たしていることに加え,受入主体となる各市町,競技団体等,関係者の熱心なアピールにより,運営面での協力体制についても高い評価を得たところでございます。
また,メキシコオリンピック委員会からは,本年5月に,会長をトップとする代表団訪問の意向を受けており,これに合わせた基本合意の締結など,誘致の実現に向けて,私が先頭に立って取り組んでまいります。
また,東京パラリンピック大会に向けて,広島県障害者スポーツ協会と連携した
体験イベント等による普及啓発や,昨年10月に締結した広島大学等との協定を踏まえ,来年度は,広島大学病院医科学センターとの連携による選手の育成・強化に取り組んでまいります。
あわせて,昨年4月に設置いたしました広島県アートサポートセンターにおける普及啓発や創作活動を支援する人材育成などを進めるとともに,来年度は新たに舞台芸術祭を開催し,創造性,芸術性にあふれた創作活動の魅力を発信するなど,障害者芸術文化の振興に取り組んでまいります。
続いて,その他の主要施策について御説明いたします。
まず,災害に強いまちづくりの分野でございます。
平成26年8月に発生した土砂災害に係る対策につきましては,56箇所の緊急事業が完了し,地域の安全性を高めるための砂防ダムの追加設置など,緊急事業と一体的に実施する事業も,県が実施する全ての箇所において工事に着手しており,おおむね計画どおりに進捗しております。
また,昨年6月に発生した豪雨災害への対応につきましては,国及び福山市と共同設置した治水対策検討会において,広範囲に浸水被害が生じた瀬戸川流域への具体的な対策を取りまとめ,現在,瀬戸川の河床掘削工事や河道改修に向けた住民説明会を行うとともに,福川の治水対策の実施に向けて,関係機関との協議を進めております。
来年度は,河川整備計画に位置付けた瀬戸川の河道改修や福川への水位計設置など,治水対策検討会で取りまとめた各種対策を着実に進めてまいります。
土砂災害警戒区域等の指定の加速化に向けた取組につきましては,調査対象である377小学校区のうち,190小学校区の基礎調査に着手しており,また,来年度予定しておりました36小学校区の基礎調査の発注手続を前倒して行うなど,着実に進めているところでございます。
基礎調査を平成30年度,区域指定を平成31年度までに完了させることを目標に,引き続き,全力で取り組んでまいります。
次に,広島県「みんなで減災」県民総ぐるみ運動についてでございます。
昨年8月に実施いたしました県民意識調査において,「災害の種別に応じた避難場所・避難経路の確認」及び「非常用持出品の準備」に取り組まれた県民の割合が共に5割を超えるなど,これまで重点的に進めてまいりました「知る」取組が浸透し,県民の皆様の防災意識の高まりが確認できました。
一方で,防災訓練など,防災・減災活動を「実践する」取組につきましては,依然として3割程度の参加に止まっていることから,勤務先や子育て世代のコミュニティ単位での防災教室など,多様な場面で防災活動が実践されるよう取組を進め,県民参加の促進を図ってまいります。
こうした取組を通じて,県民の皆様の日常生活において防災・減災行動が定着していくよう,行動計画に定める「知る」取組から「実践する」取組への深化を図り,行動目標の早期達成に向けて着実に取り組んでまいります。
最後に,「広島の価値の共鳴・共振」の分野でございます。
広島県が魅力ある地域として選ばれることを目指し,地域全体のイメージアップと個々の地域資産の価値向上を図るため,ひろしまブランドショップTAUを活用した首都圏PRを始めとする「ひろしま」の魅力発信などに取り組んでまいりました。
来年度は,これまでの取組に加え,県民投稿型サイトの活用等による情報発信や,県産食材を活用した食体験の場を通じた食の魅力向上に取り組むなど,引き続き,ひろしまブランドの国内外での認知・評価の向上を図ってまいります。
次に,東京圏等から広島への定住促進についてでございます。
東京圏で高まりつつある地方移住の機運を取り込み,広島への移住につなげる大きな流れを作り出すため,来年度は,特にサラリーマン層に対する情報発信や仕事のサポートを充実させながら,引き続き,市町や地域,企業等と連携し,広島らしいライフスタイルの魅力発信,移住希望者と地域のマッチング,移住者に対する受け皿づくりの3つの柱を総合的に進めてまいります。
次に,国際平和拠点ひろしま構想の推進についてでございます。
昨年のオバマ前大統領の歴史的な訪問を契機に,世界から広島への注目が高まっていることから,ひろしまブランドコンセプトの一つである「平和への希望が集う場所」としての価値を更に高めるためにも,広島からの核兵器のない平和な世界の実現に向けた取組を一層進めていく必要があると考えております。
このため,今春,オーストリアのウィーンで開催される,NPT運用検討会議準備委員会の場において,本県の取組を発信するとともに,核兵器廃絶に向けたプロセスの進展を図るため,世界の主要な研究機関との連携を深めてまいります。
昨年12月に,広島県議会国際平和貢献議員連盟を設立いただくなど,国際平和実現に向けた県内の機運は一層高まっております。
今後も,皆様と一層の連携を図りながら,核兵器のない平和な国際社会の実現に貢献してまいりたいと考えております。
次に,当面する県政の諸課題への対応について,御報告いたします。
まず,鞆地区道路港湾整備事業についてでございます。
鞆のまちづくりを促進するため,福山市と連携・協力し,住民の皆様にも丁寧に御説明しながら,昨年度から具体的な事業を実施しております。
町中の交通処理対策として,県営鞆町鍛冶駐車場を昨日供用開始いたしましたほか,防災対策として,1月から雁木の復元工事を進めており,今後も,鞆地区のまちづくりの課題解決に向けた事業を着実に推進してまいります。
こうした中,これまでの経緯や現在の取組状況を含め,県としての方針を私が鞆地区住民の皆様に御説明する場を設けることにつきまして,現在,福山市や地元の関係者と調整を行っているところであり,できる限り早く開催できるよう努めてまいります。
次に,広島高速5号線についてでございます。
シールドトンネルの設計や施工計画などの内容に関しまして,学識経験者等で構成するトンネル施工管理委員会において妥当であるとの御意見をいただき,先月末に住民説明会を開催したところでございます。
今後は,平成30年度のトンネル掘削開始を目指し,シールドマシン製作や施工ヤード造成等を進めることとしており,引き続き,広島市,広島高速道路公社と連携し,住民の皆様の御理解・御協力を得られるよう丁寧な対応に努めながら,着実な事業推進に取り組んでまいります。
次に,水道事業の広域連携についてでございます。
人口減少が進展する中,将来にわたって,水道サービスを提供していく上での喫緊の課題として,積極的に広域連携を推進していくことが必要と考えております。
昨年10月に検討を開始いたしました広域連携案の策定に向けて,今後,各市町と協議を重ね,取組を加速してまいります。
次に,平成29年度当初予算案の概要を申し上げます。
まず,欲張りなライフスタイル
の実現に向けた取組や災害に強いまちづくりなどの重点施策へ経営資源を重点的に配分することとし,399億円を計上したところでございます。
一方で,国の制度改正により,平成29年度から広島市に教職員の給与負担権限が移譲されることなどから,来年度の一般会計当初予算案の規模は,総額9,779億円となり,対前年度比277億円,2.8%の減となっておりますが,移譲の影響を除きますと,11億円の増となっております。
予算以外の議案といたしましては,「広島県個人情報保護条例等の一部を改正する条例」など条例案16件,その他の議案では,「工事請負契約の締結について」など11件を提出しております。
また,報告事項として,専決処分報告などを提出しております。
どうぞ,慎重に御審議いただき,適切な御議決をいただきますよう,よろしくお願いいたします。
ただいま追加提出いたしました議案につきまして,その概要を御説明いたします。
まず,平成28年度の一般会計補正予算案の概要を申し上げます。
社会保障関係費や税関係交付金などの事業費の確定に伴い,減額の対応を行うとともに,公共事業につきましても,国の認証などによる事業費の確定に伴う減額の整理を行うこととしております。
また,本年度予算のうち,やむを得ず,翌年度に繰り越して実施する事業について,繰越明許費を計上しております。
以上の結果,一般会計につきましては,497億3,929万円の減額となり,本年度予算の累計額は9,899億1,798万円となります。
また,特別会計補正予算案は10会計で,36億5,126万円の減額,企業会計補正予算案は4会計で,11億380万円の減額となっております。
どうぞ,慎重に御審議いただいた上,適切な御議決をくださるよう,よろしくお願いいたします。