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女性ホルモンの分泌量は一生の間で大きく変化します。
分泌が始まる思春期,妊娠するためにたくさん分泌される性成熟期,さらに急激に分泌が低下する更年期を経て,ほぼ分泌がなくなる老年期,それぞれのライフステージにおいて不調やホルモン関連疾患が発症します。
また,約1か月という短い周期でも大きな変化を繰り返し,心身両面に様々な影響や変化を生じます。これらは,ホルモンが生涯あまり変化しない男性には見られない女性特有の症状なのです。日常生活や就業に少しでも支障をきたしている場合は,早期の医療介入が必要です。
これまでの半世紀で,女性のライフスタイルは大きく変化してきました。
少産化により生涯の月経回数が増加し,実はこれが子宮内膜症など月経関連疾患増加の要因になっていることはあまり知られていません。子宮内膜症患者の50%は不妊になるため,子宮内膜症の増加は少産化に拍車をかけることになります。
月経困難症について
月経痛は生理的なことと思って我慢していませんか?
20歳を過ぎても月経痛が強い,3日以上鎮痛剤が手放せない,日常生活や仕事に支障をきたしたことがある,このような方は,子宮内膜症をはじめとした月経関連疾患の疑いがありますので,なるべく早く婦人科を受診しましょう!子宮内膜症患者の約50%は妊娠しにくくなることがわかっていますが,早期に対処することで,予防・治療が可能な病気です。
月経前症候群(PMS,PMDD)について
月経前に感じられる便秘や腹痛,食欲亢進,体重増加,浮腫はどの身体症状,さらにイライラ 落ち込み 眠気 無気力などの気分障害は,排卵後の卵巣から正常に分泌されている黄体ホルモンが引き起こします。約60%の女性が自覚し,少なからずQOLの低下をきたしています。生活習慣の改善により多少改善する場合もありますが,月経周期に伴う変調振り回されることなく安定したコンディションを保ちたい方は,やはり婦人科医師に相談することをお勧めします。
更年期症候群について
女性ホルモンが急激に減少することによって自律神経失調症状をはじめとしたさまざまな不調が生じます。そして閉経後の骨粗しょう症,高脂血症などについては,平均寿命が30年延びたことによって新たに現代女性に加わった健康問題でもあります。更年期に適切な対処をすることによって将来の健康寿命を長くすることも分かっています。
女性の一生はホルモンの変化とともに揺らぎ続ける一生でもあります。内科や外科のかかりつけだけでなく,ぜひ婦人科のパートナードクターをみつけていつでも気軽に相談できるようにしませんか?月経トラブルやホルモン関連疾患で就職や昇進をあきらめたり,外出をためらったりするなんて,女性としての人生損していると思うのです。女性自身はもとより社会全体で正しい知識をもち対処することによってこそ,本当に女性が輝き活躍できる時代が訪れるのではないでしょうか。
(この記事は,平成30年度「働く女性応援よくばりハンドブック 改訂版」へ寄与いただいたものを掲載しています。)