九十九橋(つくもはし)
空襲の激しさを静かに語る選奨土木遺産 九十九橋
九十九橋は,昭和25年に海田町の二級河川瀬野川に架けられた一般県道府中海田線の橋梁で,橋長75.0m,全幅4.7m,形式は4径間単純鋼下路式ワーレントラス橋である。
構造の特徴としては,トラスの部材ひとつひとつが,さらに細かいトラスで組み立てられている点で,架設当時貴重であった鋼材を少しでも節約しようとした当時の技術者の工夫がうかがえる。
この橋のもう一つの特徴は,用いられている鋼材が,終戦直前に空襲を受けた旧海軍工廠(山口県光市)の廃材である点だ。当時,橋の工事を担当した広島県職員の証言によると,調達した廃材には,海軍工廠で用いられていた際のリベット孔や空襲の際に空いた弾痕が残されていたため,必要に応じて塞ぎ,また,曲がったものはハンマーで叩いて直し使用したとのことである。構造上問題のない箇所については補修せず利用されたため,現在でも,弾痕や橋の構造上不要なリベット孔を見ることができる。
令和3年度には「兵器を製造していた工廠の廃材が戦後復興を支える橋に生まれ変わり,今もなお人々の生活を支えていることが歴史的に価値がある」との理由から,広島市の本川橋とともに選奨土木遺産(土木学会)に認定された。なお,本川橋も光海軍工廠の廃材が利用されており,九十九橋とは兄弟橋となっている。
物言わず静かにたたずむ九十九橋は,いまなお戦争の歴史を後世に語り継いでいる。
部材に残る銃弾の痕
受賞履歴
- 令和3年度 土木学会選奨土木遺産
位置図
アクセス情報
電車
- JR海田市駅南口より,約300m,徒歩約4分