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令和4年度広島県労働情勢講座「新卒採用マーケットの現状とこれから ~戦略実現に向けた人材確保に向けて~」質疑応答(回答)につきまして

印刷用ページを表示する掲載日2023年3月28日

令和4年度広島県労働情勢講座「新卒採用マーケットの現状とこれから ~戦略実現に向けた人材確保に向けて~」質疑応答(回答)につきまして

令和5年3月14日(火曜日)に開催した,令和4年度広島県労働情勢講座「新卒採用マーケットの現状とこれから ~戦略実現に向けた人材確保に向けて~」では,多くの方にご参加いただきありがとうございました。なお,当日対応できなかった質問について,講師の栗田様より回答をいただきました。
(あくまでも栗田様個人の見解ということをご承知おきください。)

Q1(1)大手企業を中心に、既存の従業員に対して「ジョブ型雇用」が,一部行われ始めています。
○こうした新たな動きのなかで、新卒採用(特に大卒・院卒)に関して、ジョブ型での新卒採用はどのような動向なのでしょうか?

A:就職白書2023の調査結果もご参考いただければと思いますが,今、巷で言われている「ジョブ型採用」という採用形態において,「職務を限定した配置配属で、入社後は一切人事異動を行わない」という、通常「ジョブ型雇用」と言われる考え方のもと実施されているのは全体の2割くらい。「ジョブ型」と言いつつも、「初任配属は確約されるが、一定期間以降に人事異動の可能性がある」という「ジョブ型雇用」とは言えない形態のものが8割くらいです。日本の新卒採用は,基本的に、「新卒一括採用」というジョブローテーションを前提とした「メンバーシップ型雇用」に適応するための採用のあり方が主流でした。
 ただ大学生を対象とした「働きたい組織の特徴調査」の結果からみると、「ジョブローテーションを前提としていろいろな部署を経験する中で自分のキャリアを積み上げていきたい」と希望する学生は全体の約45%で、残りの約55%は「専門領域で長期間にわたってキャリアを磨いていきたい」と答えています。そういう志向・価値観を持つ学生に対しては、初任配属を確約してくれる「ジョブ型採用」という枠組みは非常に有効だと思います。
 あくまでも「ジョブ型」がどうかとか「メンバーシップ型」がどうかという話ではなく,現状の一律的で、画一的すぎる日本の雇用システムの中に、多様な選択肢を提示していくという観点で「ジョブ型採用」と言われる採用手法が増えていくというのは,ポジティブなことではないかと思います。

○この新卒のジョブ型雇用の動きがあるとするなら、それはAIなどいわゆるIT関連技術にかかわる、理工系学生が主たる対象なのでしょうか? その出身学部や、学部卒なのか院卒なのか?あるいは、海外の大学・大学院卒業の学生なのか?この点について、ご教示ください。

A:おっしゃるとおり,やはり職務別の採用というのは「ジョブ型雇用」といわれる出口にかなり馴染みやすい部分がありますので,IT関連技術などに関わりの多い理工系の学生さんにとっては馴染みやすいものだと思います。ただ文系であっても,法務や経理など、専門性が求められる職務に通じる学びをしている修士や学士の方も,「ジョブ型雇用」は結構馴染みやすいと思いますので、決して理系だけに閉じて,ということではないと思います。どんな分野であれ、自身が研鑽してきた学びを、社会に出て、仕事に活かしたいという意欲のある方であれば、文系や理系、国内や海外に関わらず,対象としては十分考えられるのではないかと思います。

(2)今、春闘の時期で、新卒者の給与額アップがニュースなどで報道されています。ベースアップや定期昇給などです。これを受けて、24卒学生(今、就活をしている学生)に向けての求人票には、4月以降、新たなベースアップされた給与額が記載されるのだと思いますが、そうなると、他企業とのいわゆる給与額の「差」が、各企業の24卒の採用に関係してくると思われるかどうか? それとも、24卒ではなく、25卒からの影響になってくるのかどうか?この点についてどのようにお考えか,ご教示ください。

​A:今,現時点でベースアップを表明されているということは,実際の採用活動においてPRにもなりますので,企業は学生さんにしっかり伝えられる努力をされると思います。
ですから、通常の採用活動を通じ、PRポイントとして企業は随時伝えていくと考えられますので,25卒はもちろん、24卒についても反映される可能性は高く、影響も出てくるのではないでしょうか。

(3)今日のお話は、大卒の採用に関してが主でしたが、いわゆる少子化のなかで、高卒採用の企業動向・採用意欲については、どうでしょうか?

​A:少子化の影響は、大卒人材に限らず、もちろん高卒人材にも及んでくることは必至なので、高まってくると考えられます。

 

Q2 資料内42ページにて「いきいき職場」が最も売り上げを上げているとのことでしたが、近年の学生の企業選びの思考としては「働きやすさ」「やりがい」のどちらをより重視される、などの傾向などはございますか?栗田様の感覚でも構わないのでご教示いただけると幸いです。

​A:個人によって様々だと思いますが,これからの時代は、どちらかではなく、どちらも求められる時代になっていくのだと思います。現代の若者は、「仕事が人生のすべてではなく、人生の一部」という考え方を持つ人が増えています。そういった面では「働きやすさ」というのは,非常に重要な要素になると思いますし、幼少期からSDGs教育やボランティア活動などを体験している関係で、社会に貢献することにやりがいを感じる学生が増えていると聞きます。そういった価値観を持つ若者には、企業としての存在意義や従業員として自社で働く意義や意味について、きちんと伝えていくことは、人材の定着や活躍に非常に重要になってくると思います。「どちらか」ではなく、「どちらも」だと思います。

 

Q3 コロナ渦以降,5日間のインターンシップが減り,1dayの企業説明会が増えたように思いますが,学生には短い期間のオープンカンパニーやキャリア教育が好まれる傾向にあるのでしょうか。

​A:実際学生が参加している割合でいうと,おっしゃるとおり1dayと言われるプログラムへの参加割合は多いです。ただ企業が実施するプログラムを期間別にみると、そもそも全体の7割くらいが1dayとなっています。企業側が提供しているプログラム自体が1日未満のものが多いので,必然的に学生の参加も多くなっているところはあると思います。また、これも目的によりけりで,例えば広く浅くどんな会社か,どんな仕事か知りたいというときは1dayが有効だというお話を聞きます。インターンシップに5日も2週間もかけていたら,何社か見たら全部終わってしまうという話になってしまいます。ただ、広く知るためには1dayがいいが,深く知るためにはやはり長期間の方がいいという声も聞くので,目的によって使い分けて頂くのがよいのかなと思います。

 

Q4 中小企業で人事を担当しているものです。なかなか人が来ず採用に苦戦しています。中小企業だからこそこんなことができそうですよね、と思うアイデアがあれば教えてください 

​​A:これはなかなか王道がないので,お答えが難しいご質問です。まずは何はともあれ、自社の魅力をちゃんと把握し、言語化することからだと思います。
そのためには、今いらっしゃる従業員の方の入社動機や、今の仕事の何に魅力を感じているのか、なぜこの会社で仕事をし続けているのか、そのあたりを明らかにするのが良いと思います。
それらを明らかにした上で、そういった自社の魅力に、「興味を持ってくれそう」で、かつ「自社に実際の応募してくれそう」なターゲットとなる学生は、どこにいるどんな人なのかという仮説を立てます。
その準備をした上で、あとは行動あるのみです。マス広報で集めようと思っていても、よほどの知名度がない限りなかなか学生からの応募を集めることはできません。そこは、局地戦で、近隣の学校訪問や、従業員が卒業した学校など、ご縁のある学校を中心に地道に活動するのが重要だと思います。
 いろいろ回っていると、思わぬところでターゲットとなりえる学生と出会えたりすることがあります。単年での成果を性急に求めるのではなく、長い目で関係性構築から始めるつもりでじっくり取り組んでもらうのが良いと思います。なんらか接点が持てれば、小回りが利きやすく、経営者との距離も近い中小企業はいろいろな魅力の伝え方ができます。ある企業は、自社に興味を持ってくれた学生さんを招いてバーべーキュー大会を行い、そこでの立ち居振る舞いや社員の皆さんとの相性などを見極め、学生との相互コミュニケーションを深めながら、採用活動を行われたりしています。中小だからこその動機づけ方法です。採用力は、行動し続ける企業に蓄積されていきます。是非、頑張ってください。

 

Q5 採用活動に関わっている中で、最大の課題があります。企業の知名度をあげるのに、一番効率の良い施策は何でしょうか?(SNS・ホームページ・就職サイトへの掲載等は既に実施しております)

​A:採用につなげる採用広報ということであれば、「世の中全体で知名度を上げる」ことより、「ターゲットとなる学生の中での知名度を上げる」ということに注力されるほうがより効果的ではないかと思います。広告業界でも、誰にでも通じるありきたりな言葉で広報を行っても,結果的に誰にもささらないというのはよくいわれることです。自社の独自の魅力を洗い出し、その魅力がささるターゲット学生はどこにいるのか,その学生だけに響く、エッジの効いたメッセージやデリバリー方法はなんなのか,このあたりの仮説をちゃんと立てて,PDCAを回していく中で、精度を上げていくしかないと思います。
 ちょっと質問の趣旨とはずれるかもしれませんが、フルコロナ世代と言われる24卒学生は、「自分らしい就職をしたい」と思いつつ、「自分らしさって何?」ということに自信が持てず不安に感じている人が多いという話をよく聞きます。だからこそ、これからの採用活動でカギとなるのは、短期的な企業都合の採用充足だけを目的とした採用活動ではなく、今後の社会を担う学生ひとりひとりのキャリア開発支援者としての目線を持って採用活動を行っていくことだと思います。社会人の先輩として、「学生一人ひとりに真摯に向き合い、一人ひとりの『らしさ』や『強み』を一緒に紐解きながら、どういう職場で、どんな人達と、どういう仕事をしていくことが、その学生にとって幸せな人生を送ることになるのか」、そこに共に向き合ってくれるキャリア支援者として寄り添っていくことが、結果的に自社にマッチする人材を引き付ける効率の良い施策になるかもしれません。

 

〈栗田様からのコメント ~講座を終えて~〉
 採用力が弱いとされる中小企業の皆さんが、採用成功するためのポイントは、まずは今、働いていらっしゃる従業員の皆さんを大切にする施策に取り組むことだと思います。従業員ひとりひとりの会社や仕事に対するエンゲージメントが高まれば高まるほど、自社にフィットする学生さんへの訴求力を高めていくことができると思います。企業によって求める人材像は変わると思いますが、人を大事にしようとする姿勢や想いは、どんな個人にとっても重要なポイントになると思います。
 24卒の学生の皆さんは、コロナ禍で様々な行動を制限されてしまい、タテのつながりやヨコのつながりが希薄になったことにより、他者との比較の中で、「自分らしさ」を自覚できる機会が非常に乏しくなってしまったと聞いています。大学生活の中で、「自分らしさとは何か」を深めきれぬままに、就職活動を始めざるを得ず、自分らしい決定をするということに不安を覚えている学生が多くなっているらしいのです。
 そう言う状況だからこそ、企業の皆様には、採用活動において、 短期的な視点での採用充足を目的とした選考者として臨むだけではなく、中長期的な視点でもって、一人一人の「らしさ」や「強み」に目を向けながら、個人のキャリアに寄り添うキャリア支援者として、学生に向きあっていただけるとありがたいです。
 従業員を大事にしようとしている実際の取り組みや、個人の「らしさ」や「強み」に目を向け、個人一人ひとりに寄り添おうとする姿勢は、それ自体が他社との差別化ポイントにもなり得ます。これからの時代は「人」です。人を大事にしていこうとする取り組みは、経営TOPの賛同が得られれば、小回りの利く中小企業ほど、迅速に展開することも可能です。
 広島県において、人を大事にする企業が増加し、イキイキと働く人たちが増えることで、広島県全体が元気になっていかれることを心より願っております。