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食品工業技術センター研究報告 第26号

印刷用ページを表示する掲載日2012年1月18日

「広島県立総合技術研究所食品工業技術センター研究報告 第26号」は,報文3報,ノート2報を掲載しています。

【報文】でんぷん分解性乳酸菌Lactobacillus plantarum A305株の培養特性およびマルトオリゴ糖の生成

著者:藤原朋子,山内慎也,土屋義信

小麦フスマから分離したデンプン分解性乳酸菌Lactobacillus plantarum A305株は,可溶性デンプン培養液中でマルトオリゴ糖を生成する。マルトオリゴ糖を高含有する乳酸発酵物の製造を目的に,A305株を用いた培養による可溶性デンプンからマルトオリゴ糖生成条件について検討した。培地は,MRS培地の炭素源を可溶性デンプンに代えた培地を用いた。A305株の培養は,MRS培地900mlにA305株の前培養液100mlを接種して,37℃にて100rpmで撹拌しながら行った。pH6.5制御培養では,デンプン分解酵素の作用が不十分で,増殖は培養早期で停止し,マルトオリゴ糖の蓄積も認められなかった。pH4.5およびpH5.0でpH制御した培養では,炭素源とした可溶性デンプンを消費し終えるまで増殖可能であった。一方,マルトオリゴ糖は,G3,G4,G5がある程度生成したが,菌体の増殖に伴い消失した。デンプン分解酵素反応液中に,生菌体が存在する条件下では,G1,G2は菌体により消費され,ほぼG3とG4のみになった。G3とG4を主なマルトオリゴ糖として培養液中に蓄積するためには,まず菌体の増殖とデンプン分解酵素の生産を促進した後に,菌体の増殖は抑制されるが生存可能なpH4程度の低pHに維持することが必要であった。

論文のダウンロード (PDFファイル)(862KB)

【報文】酒母製造に利用可能な乳酸菌の選抜

著者: 藤原朋子,藤井一嘉,外薗寛郎

速醸酛系酒母製造における乳酸添加の代わりに利用可能な乳酸菌株を選抜する目的で,当センター保有の乳酸菌103株について,4種類の培地での生育性による選抜を行った。さらに,選抜した乳酸菌株を用いて,酒母作製試験および清酒小仕込試験により,製造した酒母と製成酒の成分を評価した。
麹汁成分で生育可能,アルコール10%で生育不能,濃糖グルコース20%で生育可能,および麹汁のみで培養可能の4条件を満たす株として15株を選抜した。
乳酸菌を先に増殖させた後に酵母を添加する20℃での酒母製造法で,Lactobacillus属5株(L. sakei NBRC3541株,L. curvatus B1株,L. brevis 021101A株,L. manihotivorans LMG18011株およびL. plantarum 011029A株)を選抜した。乳酸菌と酵母を同時に添加する方法で,1株(Leuconostoc mesenteroides A2株)を選抜し,これらを用いて速醸酛系酒母製造方法と同等の酒母および製成酒の製造を行うことが可能であった。

論文のダウンロード (PDFファイル)(627KB)

【報文】超音波画像解析によるゆで卵の異物検出

著者:渡邊弥生,塩野忠彦,橋本顕彦,青山康司

医療用超音波画像診断装置を用いて,ゆでた鶏卵の異物となる卵殻(殻異物)の検出について検討した。卵殻からの超音波反射は,周波数が低い(6~9 MHz)方が強かった。また卵殻を検出するのに適した超音波プローブと対象間の距離は1~3 cmであり,1つのプローブで卵全体を検査することは難しかった。ゆで卵の超音波による横断画像をゆで卵全体について取得した後に,各横断画像について2値化処理した後にトリミングを行い,平均濃度値を求めることによって,ゆで卵の殻異物の有無を判別できる可能性が示唆された。ゆで卵が回転またはプローブを平行移動しゆで卵の上方を通過する動的条件下において,取得した超音波画像を2値化処理した画像では,殻異物による反射像,プローブに近いゆで卵上端部の反射像およびその他のノイズ像がみられた。殻異物の反射像の等価楕円主副軸比を指標として,殻異物と白身反射やその他のノイズとを判別できる可能性が示唆された。

論文のダウンロード (PDFファイル)(1.09MB)

【ノート】県内酒造場の山廃酛から分離した乳酸菌とその性質

著者:藤原朋子 

自然由来の硝酸還元菌や乳酸菌の自然増殖による生酛系酒母製造において,酒質を変えることなく酒母製造の安定化のために添加できる乳酸菌候補として,広島県内酒造場の山廃酛(伝統的製法の生酛系酒母)から乳酸菌を分離・同定し,その性質を調べた。細胞の形態,糖の資化性,生成乳酸の光学活性などの表現型解析と16S rDNA塩基配列解析から,分離乳酸球菌はLeuconostoc mesenteroides,分離乳酸桿菌はLactobacillus curvatusと同定した。分離した乳酸菌はいずれも,生酛系酒母で生育すると報告されている乳酸球菌L. mesenteroidesや乳酸桿菌Lactobacillus sakeiと同様に,低温生育性,低pH生育性,アルコール感受性を有していた。

論文のダウンロード (PDFファイル)(758KB)

【ノート】超音波画像解析によるカキ異物検出法の開発

著者:橋本顕彦,渡邊弥生,塩野忠彦,青山康司

医療用超音波測定器を使用し,超音波反射画像によるカキ剥き身に付着・混入する異物検出を試みた。カキ殻片を異物として含んだカキ剥き身を水中に設置し,超音波断層撮影を行った。その結果,異物が輝点として測定されたため,画像処理により輝点の検出処理について検討した。カキ剥き身の輪郭検出と輝点検出処理を組み合わせた結果,異物候補を絞り込むことができた。さらにカキ貝柱に付着する異物輝点を確定するために,カキ貝柱とその他組織の識別を試みたが,両者を明確に識別することは困難であった。

論文のダウンロード (PDFファイル)(1.2MB)

抄録

抄録のダウンロード (PDFファイル)(608KB)

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