皮ごと美味しく食べられるレモン加工技術の開発
中津沙弥香,今井佳積,重田有仁、浜名洋司、谷本暁
1 背景
広島県はレモンの収穫量全国一位で,国産レモンの約60%,加工用レモンの約65%を占めています。2010年代以降,広島県産レモンの知名度を上げる取り組みが活発になり,これまでに多くのレモン関連商品やレシピ,用途が開発されてきました。レモン関連商品の多様化に伴い,皮付きレモン素材を利用したいという要望は高まっていきました。
皮付きレモンは,
・外観からレモンらしさを感じられる
・レモンらしい味や香りが主張できる
・皮に多く含まれている機能性成分を摂取できる
しかし,皮付きレモンには、
・果皮は硬く,噛み切りづらい
・果皮は加熱しても軟化しづらく,果肉はすぐ軟化する
・果皮は加工すると苦味が増す
という課題があります。
2 方法
課題の本質を追求すると,皮は硬いというよりも,果肉との瑞々しさが大きく違うため,食感の調和がなく,その影響で果肉の酸味と果皮の苦味を感じるのに時間差が生じるため,後を引く苦味が際立つことがわかりました。果皮が瑞々しくなれば,果皮の噛み切りづらさと苦味の課題が一緒に解決できるのではないかと考えられました。そこで,果皮アルベド(白いスポンジ状組織)へ液体を浸潤させ,噛み切り易さや苦味の感じ方を評価しました。
3 結果
(1)水浸潤による噛み切り易さの違い
7mm厚にスライスしたレモンを1/4にカットし,一定のリズム(毎分90回咀嚼)で咀嚼したときの咬筋(人間がものを噛むときに使う筋肉)の筋電位シグナルを計測しました。
その結果,食べ終えるために必要な咬筋の総筋活動量は,水浸潤によって対照(浸潤なし)に比べて有意に減少しましたa)。食べ終えるまでの摂食時間も同様に優位に短くなりましたb)。(※p<0.05)
(2)水浸潤による人が感じる苦味の変化
7mm厚にスライスしたレモンを1/4にカットし,一定嚼リズム(毎分90回咀嚼)で咀嚼したときに被験者が感じる苦味強度を時間強度曲線(Time Intensity: TI)法により測定しました。
その結果,水浸潤によって対照(浸潤なし)に比べて最大苦味強度となる時間が早くなり,最大苦味強度及び苦味強度の積算値(面積)も減少しました。
4 食品企業に向けたPR
(1) 加工技術の特徴 ~軟らかく瑞々しく,美味しく,いろいろな形~
レモンの色・味・香りを残してお好みの食感に調整できます。
果肉の酸味との調和で,レモン独特の強い苦味を和らげます。
ダイス、スライス、串切り、丸ごとなど商品に応じて様々な形状で加工できます。
(2)皮ごと美味しく食べられる加工のメリット ~機能性成分,夏にも美味しい,フードロス~
機能性成分の多くは果皮に含まれており,美味しく食べられることで健康志向の商品開発に寄与できます。
品質変化の少ない加工素材にすることで,商品需要が高まる夏場にもレモンの爽やかな商品を販売できます。
皮を余すことなく食べられフードロス削減になります。
※本技術は広島県が保有する特許技術(特許7137878号)です。ご利用にあたっては広島県との契約が必要です(有料)。