「ひろしま『ひと・夢』未来塾」の第6回講座(プラン発表会・合同講義)と卒塾式を開催しました。
区分 | 時間 | 内容 |
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プラン発表会 | 13時00分~15時20分 | ・はじめの一歩コース 塾生20人が1人ずつマイプランを発表 ・プロフェッショナルコース 塾生28人が4~5人で構成される6つのグループに分かれてビジネスプランを発表 |
合同講義 | 15時40分~17時00分 | ・自分おこしができる人の集団がやがて地域をおこすことになる 講師 牧大介氏(株式会社西粟倉・森の学校代表取締役校長) ・四万十方式の地元発着型産業づくり 講師 畦地履正氏(株式会社四万十ドラマ代表取締役社長) |
審査結果発表 |
17時10分~17時30分 |
・各コース別に,最優秀賞,優秀賞,来場者賞の発表 ・賞状の授与 |
卒塾式 | 17時30分~18時00分 | ・修了証書授与 ・塾長あいさつ |
はじめの一歩コース,プロフェッショナルコースのコース別に2会場に分かれてプラン発表を行いました。塾生のこれまでのワークの成果発表ということもあり,塾生以外にも多くの方が来場されました。
・はじめの一歩コース
塾生一人ひとりが各自作成したマイプランについて,5分間で発表しました。プレゼンテーションに慣れていない塾生も多く,会場はやや緊張した空気が漂っていましたが,進行を務めたメイン講師の気遣いなどにより,徐々にリラックスした雰囲気になっていきました。
審査員からは,「自分が好きなことをプランの核に据え,楽しんで取り組むことが大事」という助言や,「誰から何と言われようとやり遂げる情熱を持ってほしい」というエールがあり,塾生たちはこれらのコメントを真摯に受け止めていました。
(審査員)
・牧大介氏 (株式会社西粟倉・森の学校代表取締役校長)
・金井貴裕氏 (一般社団法人広島青年会議所常任理事)
・木村富美氏 (広島県中山間地域振興課長)
・プロフェッショナルコース
塾生4~5人で構成される6つのグループがそれぞれ作成したビジネスプランについて発表しました。着ぐるみを着て発表するなど,チームプレーを活かしたプレゼンテーションが行われ,会場は盛り上がりました。
(審査員)
・眞鍋邦大氏 (株式会社459代表取締役)
・畦地履正氏 (株式会社四万十ドラマ代表取締役社長)
・森信秀樹氏 (経済同友会代表幹事)
・井手修身氏 (イデアパートナーズ株式会社代表取締役)
・八谷秀幸氏 (広島県地域振興部長)
今回の講義は,中四国を代表する地域ビジネスの実践者を講師としてお迎えし,地域づくりにも繋がる内容であったため,両コースの塾生が合同で受講しました。
・自分おこしができる人の集団がやがて地域をおこすことになる 講師 牧大介氏(株式会社西粟倉・森の学校 代表取締役校長)
西粟倉村のローカルベンチャーの取組事例を挙げながら,地域づくりに繋がる人づくりについて説明していただきました。
牧氏は平成18年に地域再生マネージャーとして西粟倉村に赴任し,まず,林業の6次産業化に取り組まれました。当時の西粟倉村での林業は,伐採した木材を市場へ出荷するだけでしたが,地域の森林組合の若手職員が「木の里工房・木薫」というベンチャー企業を起こし,村内で幼稚園・保育園向けの遊具などに加工できる体制を整備しました。この事業を一つの契機として,村の雇用対策が本格化し,全国から新たな人材を積極的に受け入れるようになりました。
木製遊具
西粟倉村には,地域おこし協力隊として赴任し,出張型の日本酒バーを運営する酒屋を起業するなど,ユニークな取組をされている人もいます。いろいろな人を受け入れる中で,地域に既にあるものを活かしながら,自分が好きなことにこだわって仕事にしていくのがローカルベンチャーの一つの可能性だと感じているそうです。
ローカルベンチャーが成長し,雇用が創出されると,その周辺に食堂ができたりして,その地域の暮らしが豊かになり,魅力が向上します。そうなると,そこで何かにチャレンジしようという人たちが集まってきて,さらに起業や移住が増えるという好循環が生まれます。一つの大きな会社を創るのではなく,小さな会社を数多く創ることで,地域に豊かなコミュニティが育まれ,結果として地域ブランドが形成されていくということが西粟倉での取組から見えてきたそうです。これを「スイミー作戦」(※)と呼んでいるそうです。
※スイミー:「スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし」オランダの作家レオ・レオニの絵本。谷川俊太郎訳
一匹一匹の魚は小さく弱いけれど,群れになることで大型の魚よりも大きく強くなるという話。
・四万十方式の地元発着型産業づくり 講師 畦地履正氏(株式会社四万十ドラマ 代表取締役社長)
高知県四万十町で取り組まれた地域産品を活用したビジネスについて説明していただきました。
畦地氏が地域産品の商品開発に取り組み始めた20年前は,現在のように「地域ビジネス」という言葉もなく,事業の企画・実施は手探りの状態でした。そこでまずは地域の人に会って話をすることで,地域にあるいいものを見つけていくことにしたそうです。
しまんと新聞ばっぐ
商品化したものの一つが「新聞バッグ」です。地域の女性が製作していたもので,日本の折り紙文化と「もったいない」の気持ちが込められた商品です。新聞やテレビで紹介され,高知県を代表する商品に育ち,ニューヨークのギフトショーでも紹介されるまでに至りました。
このバッグは販売されるだけでなく,作り方を教える講座が四万十で開催されており,地域外との交流にもつながっています。
また,かつて地域の特産品であった栗の増産にも取り組まれています。四万十では,栗の生産に欠かせない木の剪定をする人がいなくなり,技術が継承できず,生産量が大きく減少するという悪循環に陥っていました。そこで,剪定技術の復興を図るため,岐阜県在住の剪定士の方に,Iターンで募集したスタッフに対する技術の指導をお願いしたそうです。
栗増産への地道な取組を続けていく中で,現在は,教えていた剪定士の方も四万十に移住され,大きな粒の栗が育つようになったそうです。また,需要の拡大を図るため,栗の加工食品の開発・販売にも取り組まれ,産業としての規模を拡大させ,生産者に利益を還元できるしくみを構築されました。
牧氏,畦地氏の取組は地域ビジネスの好事例として広く知られたものであったため,多くの方が来場して聴講しました。地域特性を活かしたビジネスを検討している人たちにとって,非常に興味深い内容であったため,塾生,聴講者のほか,審査員の方々も聴き入っていました。
各コースのメイン講師から,最優秀賞,優秀賞,来場者賞が発表され,賞状の授与が行われました。
はじめの一歩コース最優秀賞受賞の新舎さんは,地元への想いと若者ならではの新たな視点,事例調査やプレ実施による気づきなど,実現性を高める工夫と熱意が感じられる点が高く評価されました。
受賞者 | マイプランの内容 | |
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最優秀賞 | 新舎 篤 | 「祭り」をテーマにしたフォトコンテストの実施による三原市久井町の知名度の向上と地域の「祇園祭り」等のPR |
優秀賞 | 木村哲也 | 築70年を超える古民家を活用した世代を超えた交流の場づくり |
来場者賞 | 寺本光児 | 中山間地域での「自然体験」,「子どもの居場所づくり」,「学校外での学び」の3つを柱とした,自分の責任で子どもが自由に遊べる場づくり |
プロフェッショナルコース最優秀賞受賞のCグループは,鳥獣被害対策という中山間地域での切実な課題を取り上げたこと,事業化,商品化までのプロセスの完成度の高さが評価されました。
受賞グループ | メンバー | グループプランの内容 | |
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最優秀賞 | Cグループ | 片岡 誠,大坪史人,酒井 望, 中生月成,宮崎絵美 |
捕獲鳥獣(シカ)の食肉として利用できない部位を有効活用したペットフードの開発・販売 |
優秀賞 | Fグループ | 妹尾奏子,鈴木裕太,東郷晶子, 長山恭子,吉田勝司 |
2本のストックを持って歩く“ノルディックウォーキング”を活用した,高齢者の健康維持に繋がる観光メニューの開発 |
来場者賞 | Bグループ | 佐々木ひろこ,佐藤亮太, 上馬秀樹,吉宗五十鈴 |
柑橘栽培地である大崎上島町の地域資源(ネロリ:柑橘の花の精油)を活かした「セルフケアツアー」の企画 |
はじめの一歩コース・最優秀賞受賞の新舎さん(左)とプロフェッショナルコース・最優秀賞受賞のCグループの皆さん(右)
塾長である湯崎知事出席の下,卒塾式が執り行われました。各コースから1名ずつ代表して塾長から修了証書を受け取りました。その後,塾長から塾生に対し,この塾での学びやネットワークを活かした中山間地域での取組に向けた激励のメッセージが送られました。
卒塾式終了後,塾長,メイン講師,塾生などで記念撮影を行いました。一連のプログラムを修了し,塾生たちは安堵した表情を浮かべていましたが,今後のプラン実践に向けてお互い頑張っていこうと気持ちを新たに激励し合いました。