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11-5 仕事がハードで健康を害するのではないかと不安でたまらない|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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11-5 仕事がハードで健康を害するのではないかと不安でたまらない

質問

私が勤務している職場では,残業が日常化しており,土曜日,日曜日も休むことができません。また,出張等も多く疲労が蓄積しています。このような状況が今後も続けば,病気になるのではないかと心配です。このような働き方は,問題がないのでしょうか。

回答

<ポイント!>

過重労働や過労で健康を損ねるような働き方を防止するためには,適正な労働条件の確保,労働者が安心して休めるような人事管理に向けた,労使双方の日常的な取り組みが必要です。

労働条件の原則

労働者が使用者に対して労働を提供し,使用者がこれに賃金を支払う合意を,労働契約といいます。労働契約には,労働に当たって取り決めておくべき様々な条件,例えば賃金の額や支払方法,労働時間や休日・休暇,服務規律,安全衛生や労働災害の保障などの労働条件を定める必要があります。
労働条件は,労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすものでなければならず,法は,その向上を図るよう努めることを当事者に義務付けています(労働基準法第1条)。 

労使双方の努力の必要性

このため,労働条件は,自由で対等な意思の合致のもとに,対価や条件を決定することが必要です。労働基準法も「労働条件は,労働者と使用者が,対等の立場において決定すべきものである。」(第2条第1項)と定めています。
このような観点から,適正な雇用環境の実現に向けて,労使双方が努力する必要があります。

安全配慮義務

このほか,労働契約に基づく使用者の付随的な義務として,労働者の生命・健康を危険から保護するよう配慮すべき「安全配慮義務」が使用者にあることは判例によって確立しています。いわゆる「過労死・過労自殺」に関連して,この義務について,最高裁は「使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負担等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当である」と判示しています(全電通事件・最二小判平成12年3月24日)。 
安全配慮義務により,使用者は,危険防止のために必要な物的・人的条件を整備すること(設備や環境の整備,適格者の配置,安全教育など)を求められます。
労働時間等に関する対策は,(1)36協定は限度基準に適合するように定める,(2)労働時間は適正に把握する,(3)年次有給休暇の取得を推進する,(4)労働時間等の設定を改善する,が挙げられます。
労働者の健康管理対策としては,(1)健康管理体制を整備する,(2)健康診断を実施し,事後措置を講じる,(3)長時間労働者等に対して面接指導等を実施することが挙げられます。なお,平成27年12月1日からは従業員50人以上の事業場は,ストレスチェックと労働者の申し出により面接指導を実施し必要な措置を講じることが義務づけられています。
このように,「安全配慮義務」は,使用者の支配下で労務提供がなされるという労働契約の特質に由来するものであり,指揮命令権に内在する不可分の義務といえます。

「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成18年3月17日基発0317008号)について

「過労死」が社会問題化して久しいのですが,厚生労働省は通達を出して,過労死防止のための周知啓発,窓口指導,監督指導に積極的に取り組むことを明らかにしました(平成14年3月12日)。その後,平成17年の労働安全衛生法の改正を受けて(平成18年4月施行),全面改訂されました。
監督指導に関しては次のような内容が含まれています。

事業主は,労働安全衛生法等に基づき,労働者の時間外・休日労働時間に応じた面接指導等を次のとおり実施するものとする。
  1. 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者であって,申出を行ったものについては,医師による面接指導を確実に実施するものとする。
  2. 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超える労働者であって,申出を行った者(1に該当する労働者を除く。)については,面接指導等を実施するよう努めるものとする。
  3. 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者(1に該当する労働者を除く。)又は時間外・休日労働時間が2ないし6月の平均で1月当たり80時間を超える労働者については,医師による面接指導を実施するよう努めるものとする。
  4. 時間外・休日労働時間が1月当たり45時間を超える労働者で,健康への配慮が必要と認めた者については,面接指導等の措置を講ずることが望ましいものとする。

なお,ここで月45時間を超える時間外労働など,いくつか数値が示されていますが,これは,厚生労働省のいわゆる「過労死認定基準」(正式には「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」平成13年12月12日)で「過労死」のいわば危険ゾーンを示す数値として挙げられているものです。
すなわち,この「過労死認定基準」によると,

  1. 脳血管疾患等の発症前1~6か月間の1か月平均時間外労働が45時間以内だと,当該脳血管疾患等の発症は業務との関連性が弱いが,
  2. 45時間を超えると,当該脳血管疾患等の発症は業務との関連性が強まり,
  3. 発症前1か月間の時間外労働時間が100時間を超えるか,又は2~6か月間の1か月平均時間外労働が80時間を超えると,当該脳血管疾患等の発症は業務との関連性が強い

と評価されているのです。

こんな対応を!

長時間労働等の過労等により精神的,肉体的な疾患が生ずる可能性がある場合,まず職場の労働条件等を就業規則等で確認し,問題がある場合は,事業主と雇用管理の適正化について話し合い,就業環境の改善に向けて努力する必要があります。また,厚生労働省も過重労働による健康障害の防止に積極的に取り組んでいますから,労働基準監督署に相談されるのもよいでしょう。