12-5 厚生年金には必ず加入しなければいけないのか|労働相談Q&A
12-5 厚生年金には必ず加入しなければいけないのか
質問
私は、従業員20人の輸送機械器具製造の会社に勤めています。給与明細を見ると、厚生年金保険料が控除されていますが、健康保険はともかくとして、厚生年金については、必要ないのではないかと思っています。厚生年金には必ず加入しなければならないのでしょうか。
回答
<ポイント!>
強制適用事業所に雇用されている70歳未満の人は、原則として、必ず厚生年金保険に加入することとなります。
厚生年金保険とは
厚生年金保険とは、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者又はその遺族の生活の安定と、福祉の向上に寄与することを目的としており、民間企業や国・地方公共団体などに雇われている人を対象としています。
公的年金制度の体系
現在の公的年金制度は、いわゆる2階建ての仕組みを取っており、すべての国民に共通する基礎年金部分として国民年金があり、その上に民間の会社員や公務員等を対象とする厚生年金が乗っています。
※厚生労働省パンフレット「国民年金はじめのはじめ」より
年金の対象者
国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、すべて国民年金に加入することになっています(国民年金法第7条)。これに対して、厚生年金は、雇用者を対象としています。
厚生年金保険が強制的に適用される事業所(強制適用事業所)は、常時1人以上の従業員を使用する法人(株式会社、有限会社等)や、常時5人以上の従業員を使用する製造業、土木建築業、鉱業、運輸業、販売業、金融保険業などの個人事業所です(厚生年金保険法第6条)。
強制適用事業所に雇用されている70歳未満の人は、必ず厚生年金保険に加入することとなり(同法第9条)、70歳になれば、被保険者の資格を失います。ただし、老齢給付の受給資格期間を満たしていない場合には、その期間を満たすまで任意に厚生年金に加入することができます(「高齢任意加入被保険者」同法附則第4条の3)。
※ 年金制度改正法(令和2年法律第40号)の成立に伴い、令和6年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の対象企業となる適用範囲が拡大されます。
- 現在、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等で週20時間以上働く短時間労働者は、厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象となっています。
この短時間労働者の加入要件がさらに拡大され、令和6年10月から被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。 - 詳しくは、厚生労働省ホームページ「年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました」及び日本年金機構ホームページ「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」をご覧ください。
給付の内容
国民年金と厚生年金保険の給付の概要は,次のとおりです。
区分 | 国民年金 | 厚生年金 |
---|---|---|
老 齢 給 付 |
老齢基礎年金 【受給要件】 ○ 保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上あること 【受給開始時期】 ○ 原則として65歳から受給(60歳から65歳までの「繰上げ受給」や、66歳から75歳までの「繰下げ受給」の選択可能) |
老齢厚生年金 【受給要件】 ○ 老齢基礎年金を受け取れる方のうち厚生年金の加入期間があること(老齢基礎年金に上乗せして受給) 【受給開始時期】 ○ 原則として65歳から受給(60歳から65歳までの「繰上げ受給」や、66歳から75歳までの「繰下げ受給」の選択可能) |
障 害 給 付 |
障害基礎年金 【受給要件】 ○ 次のすべての要件を満たしていること ア)障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの間にあること ・ 国民年金加入期間 ・ 20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間 イ)障害の状態が、障害認定日に、障害等級表に定める1級または2級に該当していること ウ)初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること |
障害厚生年金 【受給要件】 ○ 次のすべての要件を満たしていること ア)厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること イ)障害の状態が、障害認定日に、障害等級表に定める1級から3級のいずれかに該当していること(ただし、障害の状態が軽くても、その後重くなったときは、障害厚生年金を受け取ることができる場合があり) ウ)初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること |
遺 族 給 付 |
遺族基礎年金 【受給要件】 ○ 次のいずれかの要件を満たしている方が死亡したとき ア)国民年金の被保険者である間に死亡したとき イ)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき ウ)老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき エ)老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき 【受給対象者】 ○ 死亡した方に生計を維持されていた次の遺族が受給 ア)子のある配偶者 イ)子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある方) |
遺族厚生年金 【受給要件】 ○ 次のいずれかの要件を満たしている方が死亡したとき ア)厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき イ)厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき ウ)1級・2級の障害厚生年金を受けとっている方が死亡したとき エ)老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき オ)老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき 【受給対象者】 ○ 死亡した方に生計を維持されていた次の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受給(遺族基礎年金に上乗せして受給) ア)子のある配偶者 イ)子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級の状態にある方) ウ)子のない配偶者 エ)父母 オ)孫(子と同様) カ)父母 |
こんな対応を!
厚生年金保険は、一部の例外を除いて、加入が強制されています。この保険は、労働者やその遺族の生活の安定などを図るための重要な制度であり、その意義と役割について正しく理解しましょう。
※ 厚生年金保険や国民年金の制度の詳細や手続については,日本年金機構にお問い合わせください。