13-4 企業には障害者を雇い入れる法的義務が課されているのか|労働相談Q&A
13-4 企業には障害者を雇い入れる法的義務が課されているのか
質問
私の会社には従業員が60名いますが,障害者は雇用していません。ある人から「企業には障害者を雇う義務がある」と言われたのですが,本当でしょうか。雇わない企業には,何かペナルティーがあるのでしょうか。
回答
<ポイント!>
- 一般の企業は,常用労働者の2.2%に当たる人数以上の障害者を雇用しなければなりません。
- 常用労働者が100人を超える企業が法定雇用率を満たしていない場合は,納付金の納付が課されます。
法定雇用率
「障害者の雇用の促進等に関する法律」(略して「障害者雇用促進法」といいます。)においては,すべての事業主は,進んで身体障害者または知的障害者または精神障害者(精神障害者保健福祉手帳保持者)の雇入れに努めなければならないと規定しています。
更に,同法は,事業主が雇い入れるべき障害者の割合について,次のとおり具体的な数字を挙げています(一般の企業につき,同法第43条第1項,2項)。
所定労働時間が30時間以上の身体障害者または知的障害者または精神障害者(精神障害者保健福祉手帳保持者)は1人,週20時間以上30時間未満は0.5人としてカウントします。
なお,重度身体障害者または重度知的障害者については,1人を雇用することをもって2人分と算定されます(一般の企業につき,同法第43条第3項参照)。
また,重度身体障害者または重度知的障害者を短時間労働者として雇用した場合には,1人の身体障害者または知的障害者を雇い入れたものとみなされます(同法第71条参照)。
なお,精神障害者である短時間労働者であって,「雇入れから3年以内の方または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方」かつ,「平成35年3月31日までに雇い入れられ,精神障害者保健福祉手帳を取得した方」については,1人をもって1人とみなされます。
納付金の納付義務
上記の法定雇用率を達成していない企業は,不足する人数1人に対して5万円の納付金を納付する義務を負います(同法第53条,第54条)。ただし,同法の附則によって,常用労働者が100人以下の事業主については,当分の間,この規定は適用されません(同法附則第4条)。
なお,平成22年7月から制度が適用される常用労働者が201人以上300人以下の事業主は,平成22年7月から平成27年6月までの5年間,また,平成27年4月から制度が適用される常用労働者が101人以上200人以下の事業主は,平成27年4月から平成32年3月までの5年間は納付金の減額特例(一人につき月額5万円を4万円とする)が適用されます。
障害者の雇用を促す諸制度
法定雇用率未達成の企業から聴き取るした納付金は,次のような調整金や助成金の支給のための費用に充当されます。
障害者雇用調整金
常時100人を超える労働者を雇用している事業主が,法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合には,超えている人数に月額27,000円を掛けた金額が調整金として支給されます(同法第50条)。
報奨金
常用の労働者数が100人以下の事業主が,一定数を超えて障害者を雇用している場合には,超えている人数に月額21,000円を掛けた金額が報奨金として支給されます(同法附則第4条)。
助成金
障害者を雇用するために施設・設備の改善等を行って職場環境を整備したり,適正な雇用管理を行ったりした事業主に対して,その費用の一部を助成するものです(同法第51条)。
雇入れ計画の作成命令・適正実施勧告・公表
厚生労働大臣は,障害者雇用率が未達成である事業主に対して障害者の雇入れに関する計画の作成を命じ,必要に応じてその適正な実施を勧告することができます(同法第46条)。そして,正当な理由がなく,この勧告等に従わないときは,その旨を公表できることとされています(同法第47条)。公表という社会的制裁によって計画実施を強力に指導しようとしているのです。
解雇等の規制
障害者雇用促進法は,事業主が障害者である労働者を解雇する場合には,その旨を公共職業安定所長に届け出なければならないと定めています(同法第81条)。
ただし,これ以外に,障害者に対する解雇等の規制は,法制度上は特には定められておらず,一般の労働者と同様に取り扱われることとなります。この点の詳細は,「休職後も私傷病が完治していないときは,どうなるか」,「事故の後遺症を理由に解雇を言い渡された」の項をご覧ください。
こんな対応を!
上に述べたように,一般の企業は,少なくとも常用労働者の2.2%に当たる人数の身体障害者または知的障害者または精神障害者(精神障害者保健福祉手帳保持者)を雇用しなければなりません。
納付金・公表制度のほかにはペナルティーはありませんが,障害者雇用促進法第5条や第37条の「すべて事業主は,障害者の雇用に関し,社会連帯の理念に基づき,適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであつて,その有する能力を正当に評価し,適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない。」との規定の趣旨を尊重するとともに,働きやすい職場環境の整備等にも配慮しましょう。
制度の詳しい内容は,(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構広島支部(広島市中区光南5-2-65
広島職業能力開発促進センター内 電話082-245-0267(代表))にお問い合わせください。
参考 障害者雇用納付金制度の概要