4-5 平均賃金の算定の仕方に納得がいかない|労働相談Q&A
4-5 平均賃金の算定の仕方に納得がいかない
質問
私は,会社から解雇を言い渡され,30日分の解雇予告手当の支払を受けました。しかし,解雇予告手当には,通勤手当相当分が含まれていないようなので,会社側に問い合わせると,「通勤手当は労働の対償ではなく実費弁償に当たるから,算入しなくて良い。」と言われました。それで良いのでしょうか。
回答
<ポイント!>
通勤手当は,労働の対償として支払われる賃金に該当し,平均賃金の算定の基礎に算入することとされています。
平均賃金の計算が必要となる場合
平均賃金の計算は,次の場合に必要となります。
手当種別 | 法規程 |
---|---|
解雇予告手当 | 労働基準法第20条 |
休業手当 | 労働基準法第26条 |
年次有給休暇中の賃金 | 労働基準法第39条(平均賃金以外でも可) |
災害補償 | 労働基準法第76,77,79~82条 |
減給の制裁の制限 | 労働基準法第91条 |
平均賃金の計算方法
労基法によると,平均賃金の計算式は次のとおりとなります(第12条第1項)。その趣旨は,労働者の生活保障のため,「平均賃金」は労働者の通常の賃金をできる限りありのままに算出するというところにあります。
(平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3か月間の賃金総額)÷(その期間の総日数)
「3か月間」の算定
「事由発生日以前3か月間」とは,算定事由発生日の前日から遡った暦日の3か月です。
ただし,賃金締切日がある場合は,直前の賃金締切日から起算します(第12条第2項)。
なお,雇入後3か月に満たない労働者については,雇入後の期間となります(第12条第6項)。
控除される期間
次に掲げる期間がある場合には,その日数及び期間中の賃金は,「3か月間」及び賃金総額の算定に当たって控除されます(第12条第3項)。これらの期間は尋常ではない期間で賃金額も少なくなるので除かれるのです。
- 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
- 産前産後の休業の期間
- 使用者の責めに帰すべき事由による休業期間
- 育児休業・介護休業の期間
- 試用期間
賃金の総額
賃金の総額とは,「3か月間」に使用者が労働の対償として労働者に支払ったすべてのものをいい,賃金,給料,手当等の名称のいかんを問いません(第11条)。
ただし,次に掲げる賃金については,「賃金の総額」に算入されません(第12条第4項)。これらは通常の賃金ではないと考えられているからです。
- 臨時に支払われた賃金
- 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(夏季・年末の賞与等)
- 通貨以外のもので支払われた賃金で,法令又は労働協約の定めに基づかないもの
上記に該当しない賃金はすべて「賃金の総額」に算入されます。したがって,お尋ねの通勤手当も平均賃金の算定に当たっては賃金総額に算入しなければなりません。
総日数
「総日数」とは,「3か月間」の暦日の総計であって,労働日数の総計ではありません。
最低保障
日給制,時間給制,出来高払制などの場合においては,平均賃金は,次の算式で算定した最低保障額を下回ってはいけません(第12条第1項第1号)。
最低保障額=賃金の総額÷「3か月間」の実労働日数×60%
こんな対応を!
通勤手当は,平均賃金の算定の基礎に算入しなければなりません。その旨,会社側に申し入れて,解雇予告手当を再計算してもらいましょう。