4-6 賃金カット(制裁罰としての減給)はどこまで可能か|労働相談Q&A
4-6 賃金カット(制裁罰としての減給)はどこまで可能か
質問
私は自動車の部品メーカーで働いています。先般,私のミスが原因で,同じ月に機械操作の誤りから機械を損傷させるとともに,相当多数の不良品を出すといった2件の事故を引き起こし,その結果,一月のうちに数回の減給処分を受けることとなりました。
このため,この月の収入が減額されるだけでなく,翌月の収入も減額されてしまいました。
ところで,法律では,減給の制裁は月額で10分の1までとなっているそうですが,今回の処分は翌月まで減額されていますが,違法ではありませんか。
回答
<ポイント!>
- 1回の減給額は,平均賃金の1日分の半額を超えてはいけません。
- 1賃金支払期において減給できる額は,その賃金総額の10分の1以内でなければなりません。
減給とは
服務規律やその他の企業秩序・利益を維持する制度として,規律違反や利益侵害に対する制裁として懲戒処分が行われています。
通常の企業では,懲戒解雇,諭旨解雇,出勤停止,減給,戒告,訓告などが懲戒処分として行われています。
「減給」とは,労務遂行上の懈怠や職場規律違反に対する制裁として,本来ならばその労働者が現実になした労務提供に対応して受けるべき賃金額から一定額を差し引くことをいいます。この場合,減給,過怠金,罰金など名称は問いません。
減給処分の限度額
「減給」については,労働基準法第91条で,「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え,総額が賃金支払期における賃金の総額10分の1を超えてはならない」と定められています。
「減給」は,まず,「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え」てはなりません。これは,「1回の事案」に対しては,減給の総額が平均賃金の1日分の半額以内でなければならないことを意味します。1回の事案について,平均賃金の1日分の半額を何回(何日)にもわたって減額してもよいという意味ではありません。
次に,「減給」は,「総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない」。これは,一賃金支払期に複数の事案に対する減給をなす場合には,その総額が当該賃金支払期における賃金総額の10分の1以内でなければならないという意味です。もし,これを超えて減給の制裁を行う必要がある場合は,その部分の減給は,次期の賃金支払期に延ばさなければなりません。
こんな対応を!
まず,今回の制裁としての減給が,就業規則や過去の事例からみて相当性を持つものかどうか検討する必要があります。今回の措置の正当性を検討し,疑問があれば,その根拠を事業主に確認することも必要です。
正当な制裁である場合,その減額が法的に適正なものであるかどうか,確認する必要があります。