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7-2 職務内容の変更は,使用者が自由に行えるか|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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7-2 職務内容の変更は,使用者が自由に行えるか

質問

私の会社では,近々,組織を大幅に改編する予定です。それに伴って,現在,作業員の職種で採用している従業員を事務職に配置換しようと考えているのですが,そのような配転は,使用者の意思で自由に行えるのでしょうか。

回答

<ポイント!>

  1. 職務内容の変更を伴う配転は,労働契約で職種を限定していない限り,就業規則や労働協約に根拠があれば,可能です。
  2. ただし,業務上の必要性と,労働者の被る不利益を比較して,後者が著しく大きい場合には,権利の濫用とされる場合があります。

配転命令の正当性

「配転」とは,企業内において労働者の仕事の場所や内容などを変えることをいいます。配転には,勤務する事業場の変更を伴う転勤と,同一事業場内における職務の変更である配置転換を含みます。
就業規則や労働協約に「業務上の必要がある場合には,配置転換,転勤を命じることができる」などといった根拠となる規定があれば,使用者側は,従業員の職務内容や勤務地を決定する権限(配転命令権)を有します。
裁判例では,就業規則や労働協約に配転に関する根拠規定があり,実際にも,その規定に基づいて配転がしばしば行われている場合には,採用時等に職種・地域を限定する特約がない限り,会社は,労働者の同意なしに配転を命じることができるとしています。
ただし,配転命令が権利の濫用に当たる場合には,その命令は無効とされます。

労働契約による制限

労働契約で職種が限定されている場合は,使用者が一方的に配置転換を命令することはできず,労働者の合意が必要です。
採用時には,職種限定の特約や専門技能がなくても,その後の特別な訓練や養成によって技能・熟練を修得し,長い間その業務に従事してきた人の労働契約が,その職種に限定されていると判断される場合があります(日野自動車工業事件・東京地判昭和42年6月16日)。
しかし,近年の裁判例では,経営多角化や業種転換,技術革新などが激しい今日においては,単に同じ仕事に長年継続して従事してきたことだけでは,職種の限定の合意があったとは認めにくいとされます(日産自動車事件・最一小判平成元年12月7日)。

権利濫用の法理による制限

労働契約に職種の限定の特約がない場合であっても,次のような場合には,配転命令は権利の濫用として無効とされます(東亜ペイント事件・最二小判昭和61年7月14日参照)。

  1. 業務上の必要性がない場合
    ここでいう「業務上の必要性」とは,「余人をもっては容易に替えがたいといった高度の必要性」までは要求されません。「労働力の適正配置,業務の能力増進,労働者の能力開発,勤務意欲の高揚,業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点」が認められればよいとされます。
  2. 配転命令が他の不当な動機・目的をもって行われた場合
    ​例えば,会社の経営方針に批判的な労働者に対する報復的な配転命令などがこれに当たります。
  3. 配転命令によって労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を被る場合
    業務上の必要性がそんなに大きくないのに,労働者の受ける不利益が著しく大きい場合には,配転命令は無効となります。

こんな対応を!

お尋ねの件は,「作業員の職種で採用している」とのことですが,労働契約で特に職種を限定している場合には,従業員と話し合って,その同意を得るようにしましょう。本人の同意が得られなければ,一方的な配転命令は基本的にはできません。