7-4 転籍命令には応じなければならないか|労働相談Q&A
転籍命令には応じなければならないか
質問
子会社に転籍してほしいと言われましたが,労働条件が悪くなるのではないか心配なため拒否したいと考えています。業務命令違反で処分の対象になるでしょうか?
回答
<ポイント!>
転籍を命じるには,労働者の個別の同意が必要です。
個別的同意が必要
転籍(転籍出向)とは今までの会社との雇用関係を終了させ,新たに別の会社と雇用関係を結ぶことをいい,転籍後の労働関係は,転籍先が使用者としての責任を負います。
転籍命令には,出向と同様,就業規則等の規定があるだけではなく,さらに労働者の個別の合意が必要とされています(三和機材事件・東京地決平成4年1月31日)。
したがって,転籍命令を会社が一方的に行うことはできず,労働者がこれを拒否しても処分はできません。
こんな対応を!
転籍命令に応じられないのであれば,その意向を会社に伝えて話し合いましょう。
もし,会社側の転籍の必要性など理由を聞いた上で,条件次第では転籍してもよいと思われたら,労働条件を明確にしてもらい,不利益がある場合には代償措置について会社と十分に話し合うことが必要です。
将来トラブルにならないよう,有給休暇や退職金の算定方法等についても,できるだけ文書にしてもらうのがよいでしょう。
更に詳しく
権利義務の一身専属性
会社は労働者の同意がなければ,使用者としての権利を第三者に譲渡できないとされています(民法第625条)。
個別の合意について
関連会社との人事交流が人事体制に組み込まれており,入社時または途中で,関連会社への転籍もあること(労働条件も明確にされている)を労働者が了承しているような事情のもとでは,改めて合意をとる必要はないとされた例もあります(日立精機事件・千葉地判昭和56年5月25日)。
法令に違反する命令
当然ながら,転籍命令が労働組合活動を妨害,弱体化することを目的としてなされ,不当労働行為(労働組合法第7条)に当たる場合や,思想信条を理由としてなされ,差別的取扱い(労働基準法第3条)に当たる場合は,無効となります。