8-16 58歳を定年とする定年制には従わなければならないか|労働相談Q&A
8-16 58歳を定年とする定年制には従わなければならないか
質問
私の会社には,これまで定年制がありませんでしたが,就業規則が改正されて「58歳に達した日の属する年度の末日をもって退職とする。」という規定が盛り込まれました。この規定によると,私は,今年度末で定年退職しなければなりません。まだまだ働き続けたいのですが,就業規則にある以上,辞めざるを得ないのでしょうか。
回答
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律により,定年制を設ける場合には,満60歳以上としなければなりません。
定年制とは
定年制とは,期間を定めずに雇用されている労働者について,その労働者が一定の年齢に達したときに当然に労働契約を終了させるという制度です。最高裁も「定年制は……人事の刷新・経営の改善等企業の組織及び運営の適正化のために行われるもの」であるとして,一般的には,その合理性を認めています(秋北バス事件・最大判昭和43年12月25日)。
60歳未満の定年制は無効
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)により,平成10年から,事業主が定年制を定める場合には,鉱業における坑内作業の業務を除き,その定年は60歳を下回ることができないこととされました(第8条)。したがって,60歳を下回る定年制を設けたとしても,それは無効とされ,定年の定めがないものとみなされます。
雇用継続の努力義務
更に,高年齢者雇用安定法は,65歳までの安定した雇用の確保を図るために,65歳未満の定年制を定めている事業主に対して,定年の引上げや,継続雇用制度(定年に達した人が希望するときは,定年後も引き続いて雇用する制度)の導入,定年の廃止のいずれかの措置(「高年齢者雇用確保措置」)を講じる義務を課しています。(第9条)。
なお,高年齢者雇用確保措置に係る年齢(65歳)については,年金支給年齢引き上げに応じて段階的に達成することとして,経過措置が設けられています(平成22年4月1日から平成25年3月31日までの間は64歳)。
こんな対応を!
「58歳に達した日の属する年度の末日をもって退職とする。」という内容の定年制は,このように高年齢者雇用安定法によって無効とされ,結局,定年の定めがないものとなります。その旨を事業主に理解してもらい,引き続き雇用してもらうよう要求しましょう。
さらに詳しく
「60歳に達した日をもって定年退職とする。」という規定の場合,退職日は,「年齢計算ニ関スル法律」により,60歳の誕生日の前日となります。