8-3 法令で禁止されている解雇には,どのようなものがあるか|労働相談Q&A
8-3 法令で禁止されている解雇には,どのようなものがあるか
質問
私は,10日前に会社で作業中にけがをしてしまい,現在,病院に入院しています。病院の診断書によると,治療には相当の期間を要するとのことで,会社にその診断書を添えて休業を願い出ましたが,昨日,業務に支障が生じるとの理由で,突然,来月末で解雇すると言われました。会社の業務で負傷したのに,納得がいきません。このようなことが許されるのでしょうか。
回答
<ポイント!>
労働者が業務上負傷したり,病気にかかって,療養のために休業する場合,その期間とその後の30日間は,解雇することはできません。
解雇に関する法令上の制限
労働基準法によると,使用者は,労働者が業務上負傷し,又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は,解雇してはならないと定められています(同法第19条)。
このほか,解雇に関しては,現行法令上,いくつかの規制が設けられています。それを列挙すると,次のとおりです。
- 産前産後休業の場合の解雇制限(労基法第19条)
- 国籍等を理由にした差別的解雇の禁止(同法第3条)
- 労働基準監督署等への申告を理由とする解雇の禁止(同法第104条)
- 解雇予告制(同法第20条)
- 労働組合員であること等を理由とする解雇の禁止(労働組合法第7条)
- 性別を理由とする解雇の禁止(男女雇用機会均等法第6条第4号)
- 婚姻・妊娠・出産等を理由とする解雇の禁止(男女雇用機会均等法第9条)
- 育児・介護休業取得等を理由とする解雇の禁止(育児・介護休業法第10条,第16条)
- 個別労働関係紛争に関し,あっせんを申請したこと等を理由とする解雇の禁止(個別労働関係紛争解決促進法第4条,第5条)
- 公益通報をしたことを理由とする公益通報者の解雇(公益通報者保護法第3条)
以上の具体的な解雇制限規定に,労働契約法第16条で,次のような包括的な解雇制限規定が加わりました。「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」
判例法理について,詳しくは,「人員整理のための解雇は,どこまで許されるか」の項を参照してください。
こんな対応を!
業務上の負傷・疾病にかかり療養のため休業している期間及びその後の30日間は,以上のとおり,使用者はその労働者をいかなる理由であれ,解雇することはできません。
もっとも,
- 天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合(例えば,大地震で工場が倒壊し,事業再建の見通しが立たず廃業する場合など。なお,「やむを得ない事由」があるかどうかについては労基署長の認定を受ける必要があります)
- 療養開始後3年経過しても治癒しない場合に使用者が労働者に対して打切補償したとき(又は,療養開始後3年を経過したとき,もしくはその後に労災保険制度により傷病補償年金を労働者が受けているとき)
には,例外的に解雇が可能とされていますが,あなたのケースにはいずれも当てはまりません。
解雇が労基法により禁止されている旨を説明し,雇用を継続するよう使用者に申し入れましょう。使用者が申し入れを聞き入れないときは,労働基準監督署又は県などの労働相談機関に相談しましょう