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8-4 労働協約に違反して解雇することは可能か|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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8-4 労働協約に違反して解雇することは可能か

質問

私は,先日,長年勤めてきた会社を解雇されてしまいました。労働協約には,従業員を解雇する場合には,あらかじめ労働組合と協議しなければならない旨定められていますが,会社側は,この手続を踏んでいません。このような解雇は,果たして有効なのでしょうか。

回答

<ポイント!>

就業規則や労働協約に解雇の手続に関する規定があれば,その手続を踏まない解雇は無効とされる可能性があります。

就業規則・労働協約の規定に従うことが必要

解雇が有効とされるためには,法規定に違反していないことは当然必要ですが,そのほかに就業規則や労働協約の規定に従ったものであることも必要です。

就業規則や労働協約に定められた解雇事由に該当すること

退職に関する事項については解雇の事由を含めて,必ず就業規則に規定を設けなければなりません(労基法第89条第3号)。
また,労働組合と使用者が締結する労働協約の多くで解雇に関する取り決めがなされています。
労働協約や就業規則に定められた解雇事由は,判例上一般に限定列挙と解され,したがって,それ以外の事由でなされた解雇は無効と解されています。もっとも,裁判例の中には,就業規則所定の解雇事由が極端に少ない場合について,これを限定列挙と解するなら,例えば非行により会社に重大な損害を与えた社員ですら解雇できない等の不都合な結果を招くとして,例示と判断したものがなくはありません(大阪フィルハーモニー交響楽団事件・大阪地判平成元年6月29日)。

就業規則や労働協約に定められた手続をふむこと

就業規則や労働協約に解雇に関する手続が定められている場合には,その手続をふむ必要があります。
労働協約において,労働者を解雇する場合には,労働組合との協議ないしは労働組合の同意を必要とする旨定められている場合は,協議や同意なしに解雇することはできません。
「協議」条項は,解雇について労働組合の同意を得ることまで求めるものではありませんが,労働組合の理解を得るべく誠実に協議する義務を使用者に負わせるものです。ただ会見すればよいというものではありません。これに対し,「同意」条項は,文字どおりには,解雇には労働組合の同意を要すると定めるものですが,判例は,解雇を正当化する事由が客観的に存在するのに労働組合が同意拒否の態度に固執している場合には同意権濫用と評価し,使用者は労働組合の同意なしに解雇できると判示しています(北里研究所事件・東京高判昭和46年11月25日)。
なお,就業規則所定の解雇手続を経ないでなされた解雇の効力に関しては,裁判例は分かれています(「人事委員会の意見を聴く」旨の規定に反する解雇を有効とした日赤本社事件・東京高判昭和29年10月30日,理事会招集権限のない者によって行われた理事会における解職決議を無効とした相模女子大学事件・横浜地判昭和53年11月30日参照)。
解雇の重大性に照らせば,慎重に事を運ぶのが望ましく,重大な手続違反(懲戒解雇の場合に弁明の機会を与えないなど)があった場合には,解雇は無効と解すべきと考えます。

こんな対応を!

労働協約に協議約款がある以上,労働組合との協議を経ていない解雇の効力は否定されます。会社側にその旨を説明し,解雇する場合には,労働組合と協議を行うよう申し入れましょう。