清酒に含まれる4-Vinylguaiacol(4-ビニルグアイアコール)対策
Q 清酒に含まれる4-Vinylguaiacol(4-ビニルグアイアコール,以下4-VG)が生成する原因や防止方法について教えてください。
A 清酒に含まれる4-VGは,低濃度では香辛料や穀物を連想する臭い,高濃度では燻製臭の原因物質です。4-VG含有を指摘される清酒には,薬品臭の原因となるguaiacol(グアイアコール)も含まれています。ワインでは,ワイン酵母によってフェルラ酸が4-VGに変換されることが明らかになっていますが,清酒酵母ではこの変換が起こりません。実は,清酒中の4-VGやグアイアコールは,米の細胞壁中のフェルラ酸から生成されますが,この生成に関与しているのが,麹に付着する細菌[バチルス属,スタフィロコッカス属]や清酒酵母ではない酵母[カンジダ属,ピキア属]です。すなわち,清酒製造に関与しない汚染微生物が原因であるため,4-VGは生成を防止すべき物質として認識され,清酒の製造現場では様々な対策が実施されています。
対策の基本は製麹を行う麹室(こうじむろ)に汚染微生物を持ち込まず,増やさないことです。実施例は次のとおりです。
- 麹室に入室の際,手洗い,場合によっては手袋使用,着替え,履物替えの徹底
- 麹室内の殺菌
- 使用後の布,器具の洗浄及び殺菌
- 麹米への適切な吸水
汚染微生物の存在場所として,麹室の床面という報告がありますので,床面の掃除や殺菌を念入りに行ってください。上記の対策を実施しても,臭いが軽減しない場合は,種切後の麹米に100倍希釈した乳酸を噴霧し,麹菌以外の微生物の増殖を抑制する方法があります。
一方,4-VGが生成してしまった清酒への対処方法については,活性炭処理による除去は可能ですが,他の香味に影響を与えてしまいます。香味への影響が少ない方法として,Polyvinylpolypyrrolidone(ポリビニルポリピロリドン,以下PVPP)の使用が有効です。PVPPはポリフェノールを特異的に吸着する特性があり,用途はワインの変色防止,ビールの濁り防止,リンゴ果汁の清澄,茶飲料の渋味軽減等があります。これまでの報告では,清酒1L当りPVPP を1g使用し,1時間処理で十分に除去可能とあります。
参考資料
清酒中の4-VG生成要因(金桶光起(新潟県醸造試験場長),平成28年度広島県酒造講話会資料)
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