ソースの粘度を測定する方法と原料が粘度に与える影響
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Q 自社で製造しているソースの粘度を測定する方法と、使用している原料が粘度に与える影響を教えてください。
A 製品の粘度を測定する方法としては、B型粘度計(写真1)を使用した方法があります。B型粘度計は、回転するモーターにスプリングでつながった測定用のローターをサンプルの中に入れ、ローターにかかる粘性トルクを測定してサンプルの粘度を測定します。
日本農林規格(JAS)に規定されたウスターソース類では、この粘度によって、ウスターソース、中濃ソース及び濃厚ソースと分類しており、粘度の高いお好み焼き用ソースは濃厚ソースに分類されます1)。
写真1 B型粘度計
ソース等に粘度をつける場合、でん粉などの多糖類の添加が一般的な方法です。JASにおいてウスターソース類では粘度を付与する目的で、原材料にでん粉、食品添加物として増粘剤及び加工でん粉の使用が認められています1)。
でん粉はその由来(小麦、馬鈴薯、とうもろこし等)によって特徴的な粒の形をしており、加熱に対する挙動(糊化特性)も大きく異なり、製品の粘度に影響することが知られています2)。
でん粉の糊化特性を測定する方法としてはビスコグラフやラピッドビスコアナライザーを使用した方法があります。ビスコグラフ(写真2)はサンプルの入った容器内にピンまたはプレートを挿入し回転させ、かかる粘性トルクをサンプルの粘度として測定します。ビスコグラフの特徴として、容器を加熱または冷却することで、その温度経過とサンプルの粘度との関係を知ることができます。
写真2 ビスコグラフ
ソースに添加されたでん粉は、加熱に伴い水を吸って膨潤し、粘度を増していきます。この現象を糊化と呼び、いったん最高粘度に到達した後も、さらに加熱を続けると粘度が低下します。またその後の冷却に伴っても粘度が変化していきます(図1)。
ビスコグラフからは、糊化開始温度、最高粘度及び温度、ブレークダウン粘度、最終粘度といったデータを得ることができます3)。でん粉の糊化特性を把握することで、製造工程における加熱の目安や冷却時における粘度の予測を立てることができ、さらには製品のテクスチャー等の情報も得ることが可能です。
また、ソースは野菜・果物ピューレや、糖、食塩、食酢、香辛料等を調合して製造されますが、でん粉、増粘剤及び加工でん粉の粘度は共存する調味料の影響も大きいことが知られています4)。でん粉の糊液は糖分が多くなると粘度が増加し、酸性になると粘度が低下するといわれていますが、添加が糊化前か糊化後かでも変わってきますので、製造工程には気を配る必要があります。
以上のように、粘度の測定はソースの製造及び品質管理には欠かすことのできない指標と考えられます。当センターではデジタル式の粘度計及びパソコンで温度制御可能なビスコグラフを保有しています。いずれも設備利用として機器の利用ができますので、お問い合わせください。
参考文献
1)農林水産省、ウスターソース類の日本農林規格(http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/04_kikaku_usuta_soosu_150528.pdf(外部へリンクします))
2)でん粉と食品適性(小倉徳重、日本調理科学会誌、1973、調理科学6、 p76-87)
3)ブラベンダー社 ビスコグラフ資料(http://parkercorp.jp/images/pdf/bra_06.pdf(外部へリンクします))
4)澱粉糊の調理特性に及ぼす呈味物質の影響(平島円、日本調理科学会誌、2007、調理科学会誌40、p 47-51)
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