令和6年度販売 試験醸造酒「明魂」の文字
広島県立総合技術研究所食品工業技術センターで試験醸造している「明魂(めいこん)」というラベル文字は、90年以上の歴史と共に変化をとげています。明魂を味わうとき、「明魂」の文字にも着目してみてください。
令和4年度からの「明魂」の文字は、比治山大学名誉教授、石田信夫さんによるものです。石田さんに、文字に込めた想いと、今年から加えた紅葉のバックのデザインについてお聞きしました。
新ラベルに込めた想い
初代の「明魂」は、野武士を思わせるような迫力がある素晴らしい字体でした。2代目は、「魂」をやや楷書風に読みやすくしていますが、その分バランスが悪くなりました。しかも何回も使い回されるうち、細部がヘタって勢いもそがれたのが残念でした。
縁あって3代目を手掛けることになり、楷書にやや遊びを持たせつつ「明快さ」「読みやすさ」と「勢い」「切れ味」を併せ持つ字体を試みました。全体的にごつごつした印象になったので、「明」の五画の払いに軽みを持たせました。
両側には県木のもみじを散らしました。過去の他銘柄のラベルも参考にし、錦秋のイメージを込めました。
<石田信夫名誉教授>
1952年、広島市生まれ。1974年、中国新聞社入社。文化部、編集委員室、論説副主幹を経て、2010年から2023年まで比治山大学現代文化学部マスコミュニケーション学科教授。
酒ラベル収集歴50年。2021年にはラベル展「酒票の美―文字と意匠」が「筆の里工房」で開かれ、図録で「ラベル伊勢発祥説」を展開。「酒ストリート」のサイトにも3回の連載。ラベルに関する本を近く刊行。
著書は「海のかなたに蔵元があった」(時事通信社)、「広島の酒蔵」(中国新聞社)、「杜氏になるには」(ぺりかん社)、「妻の王国」「男が語る離婚」(いずれも文藝春秋)など。
過去の髭文字「明魂ラベル」
明魂は、以前は一升瓶で販売していました。このラベルは、一升瓶に貼るためのものです。石田教授の想いの中にある、初代、2代目の髭文字「明魂」の文字はこのように変化をしています。初代髭文字ラベルの写真は、石田教授にご提供頂きました。
令和3年度に使用した「明魂ラベル」は、2代目髭文字「明魂ラベル」を基に、4合瓶に合う形で、生まれ変わらせたものです。
*明魂は、まだ広島県立醸造試験場と呼ばれていた時の昭和4年からつくられています。
「明魂ラベル」の変遷
過去の「明魂ラベル」は、髭文字以外の字体も使用され、販売経路やボトルの形状などに合わせて、変化をしています。
明魂は、前年の研究に合わせた試験醸造酒であるため、販売する酒の味わいが異なります。明魂のラベルも、販売するときの想いを込めて、変化を遂げています。ぜひ、ラベルにも着目して、味わってみてください。