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広島県特産品副産物「酒粕」の菓子原料化技術の開発

印刷用ページを表示する掲載日2023年10月27日

宮地夏奈、今井佳積、柴田賢哉、山崎梨沙、梶原良

1 背景

 広島県には、灘・伏見と並ぶ三大酒処の西条をはじめ、多くの酒蔵があります。県内の菓子業界は、酒処広島の「酒粕」を利用した新たな菓子の開発に向けて取り組みました。しかし、酒粕は固く混ぜ込みにくい、加工中に香りが失われる等の課題がありました。そこで、当センターは広島県菓子工業組合と共同で、菓子原料に適した滑らかで香り高い「酒粕ペースト」の製造方法の開発に取り組みました。
図1酒粕のペースト化

2 方法

 酒粕のペースト化のため、酒粕の硬さに対する加温の影響調査と軟化可能な酵素剤の選定を行いました。硬さはクリープメータにより硬さ応力を測定し、酵素剤の評価は残留固形分計測により行いました。また、酒粕の吟醸香や違和感のある香りの変化をガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)で測定し、加温が酒粕の香りに与える影響を調べました。

3 結果

 酒粕は、50~60℃に予備加熱することで、手やミキサーで混ぜ込める程度に軟化しました。軟化酵素は、供試した13種類のいずれにも一定の残留固形分低減効果が認められました。酵素の失活温度、風味、コスト等を考慮し、デンプン分解酵素と食物繊維分解酵素を組み合わせて使用することとしました(図2)。
図2酵素剤処理による残留固形分量の違い
​ また、真空包装後の加熱処理では、吟醸香である酢酸イソアミル、カプロン酸エチルは失われないことを確認しました。一方、燻製香といわれる4-ビニルグアヤコールは90℃以上の加熱で急激に増加することが分かりました(図3)。以上の結果を踏まえ、酒粕ペーストの製造工程を決定しました。
図3酒粕の加熱に伴う香気成分の変化

4 商品化

 2017年(平成29年)に行われた全国菓子大博覧会・三重をきっかけに、企業から商品が販売されました(図4)。
図4商品化例

5 食品企業へ向けたPR

  1. 取り組みやすい簡単な方法!
     少し温めた酒粕に酵素を混ぜて、一定時間反応させるだけの簡単な加工方法です。酒粕ペーストは一般的な冷蔵庫、加熱装置で製造可能なため、特別な機械を新たに導入する必要はありません。
  2. いろいろな製品に利用可能!
    ​ 滑らかで扱いやすいペースト状のため、様々な材料に均一に混ぜ込むことが可能です。冷凍保存しておくことで、安定した品質で一年を通じて使用できます。
    滑らかで香り高い「酒粕ペースト 」のご紹介