【レポート】働きがい向上に取り組む意義とは?((株)マエダハウジング代表取締役 × GPTWジャパン代表 × 知事)(2021年7月20日更新)

 (株)マエダハウジング 代表取締役 前田政登己氏 × GPTWジャパン 代表 荒川陽子氏 × 広島県知事 湯崎英彦

働きがい認定企業知事表敬

働きがいの調査・研究機関として世界的な活動を行うGreat Place to Work® (以下、GPTWという。)の調査により、県内初の「働きがいのある会社」に認定された株式会社マエダハウジング(以下、マエダハウジングという。)の前田代表取締役と、GPTWジャパンの荒川代表が知事を表敬訪問し、「働きがい」に注目した新しい働き方改革について意見交換を行いました。

また、県では、GPTWの知見を活用し、働きがいのある優秀企業の創出・情報発信に取り組んでおり、その一環として、GPTWの「働きがい」の現状を見える化する調査に参加する費用の一部を助成する事業を開始しています。 ​

「働きがい」向上に取り組んだ背景

前田氏 令和3年4月にGPTWより「働きがい認定企業」として認定されました。
当社は住宅リフォーム会社であり、労働集約型産業で働き方改革の壁が高い業界ですが、4年前に県の働き方改革コンサルティング事業に参加したことを契機に、積極的に働き方改革に取り組んできました。その結果、残業削減や有休取得率の向上など、一定の成果を出すことができました。多くの従業員が働き方改革を肯定的に捉えています。ただ、働き方改革を進めるにつれ、企業として成長するためには「働きやすさ」の整備だけでは不十分だと感じるようになりました。「働きやすさ」だけではなく「働きがい」向上に向けた働き方改革を進めるため、GPTWの「働きがいのある会社」調査に参加をしました。

GPTWの活動概要・(株)マエダハウジングの評価ポイント

荒川氏 GPTWは、働きがいに関する調査の結果が一定水準を超えた企業を「働きがい認定企業」として認定し、さらにその上位の企業を「働きがいのある会社」ランキングとして発表する活動を世界60カ国で行っています。元々、1991年に米国で活動を始めており、米国では経済誌のFortune誌で毎年「働きがいのある会社」ランキングを公表しています。米国で発表する「働きがいのある会社」と共通の評価基準・方法で、世界60カ国で認定・ランキング発表をしています。
マエダハウジングさんは、「地域社会に貢献している」「部門を超えてなじみやすい」「この会社の雇用は守られている」という3点において特に優れていらっしゃいます。また、ワークライフバランスをとるよう推奨されていると感じている従業員の方が多く、「働きやすい」会社であるということに加え、経営層・管理者層が会社のビジョンや実現プロセスを明確にしており、その結果、地域社会に貢献しているということを従業員の方が実感されています。それがやりがいにつながり、総合的に働きがいの高い会社になっていると考えています。

「働きがい」向上に取り組む意義

湯崎知事 広島県では平成29年から働き方改革を推進してきましたが、これまでの取組の中心は休暇の取得やテレワークなどの柔軟な働き方といった「働きやすさ」が中心でした。ただ、企業のパフォーマンスを上げていくためには、「働きがい」が重要です。「働きやすさ」と「働きがい」両輪での働き方改革を進めていくことで、企業の競争力向上や従業員の方のハッピーにつながる。つまり県民がハッピーになるということだと思います。
コロナ禍で厳しい状況にあるからこそ、「働きやすさ」はもちろん「働きがい」は必要になると思っています。「働きがい」の高い企業では、苦境を乗り越えるために従業員の方が力を出すことができると思います。

広島県に働きがいのある会社が増えていけば、広島県の競争力やハッピーの増加につながると思います。以前マエダハウジングさんを訪問し、幹部の方とディスカッションさせていただきましたが、その際、皆さんの表情がいきいきしていたことは印象的です。

前田氏 働き方改革を進めることで、会社もかなり変わってきました。「残業が少ない、休みが取りやすい、給料が上がる」というのは「衛生要因」、つまり会社を辞めない理由にはなると思いますが、「動機づけ要因」、つまり評価され、周りから認められる、ありがとうと言ってもらえる、そういった要素を高めていくことが重要だと考えています。人生の大半を占める「仕事」ですから、「働きやすさ」だけではなく「働きがい」も高い会社にしていきたいですね。

前田氏 認定をとったことで、県内企業の経営者の方から何件も問合せがありました。「働きがい」の状況を見える化することについて、皆さん戦々恐々とされている感じでした。正直私自身にとってもGPTWの「働きがいのある会社」の調査を受けるのは勇気がいることでした。ただ、結果を受け止め、そして目指す姿を明確にし、従業員を巻き込んで取り組めば必ず会社はよくなるということをこれまでの経験で実感しているので、今回の調査を受けたことで、より良い会社になれると信じています。一社でも多くの企業が「働きがい」向上にチャレンジされると良いなと思います。

荒川氏 「働きがい認定企業」となった場合、さらに上位の企業は「働きがいある会社」としてランキング発表するという仕組みになっています。また、世界ランキングの他に、アジアランキングというのもあり、アジアランキングには日本企業も多数ランクインしています。更なる高みを目指していただければと思います。

取組において重要なこと

荒川氏 取組において特にこだわっていらっしゃる点はありますか。

前田氏 新しいことをやる時には、トップダウンというのも必要ですが、それだけでは浸透しません。ミドル・ボトムアップのプロジェクトや委員会を通じて皆で意見交換しながら進めることが重要だと思います。また、「働きがい」を高めるためには、まずは現状を見える化することから始まると考えています。そして、会社の方針としてエンゲージメントを高めるということを掲げ、従業員に伝えるようにしています。

荒川氏 会社のビジョンや実現プロセスを明確にするという点でも優れていると先ほど申し上げましたが、目指す姿を明確に発信し、従業員の方を巻き込むというところは素晴らしいですね。

「働きがい」と地域社会への貢献

湯崎知事 地域社会に貢献しているという点も評価も高かったと先ほどご説明がありました。広島県では空き家が増加していますが、マエダハウジングさんは中古の家をリフォームにより新しく生まれ変わらせるという事業をされていて、ESG(Environment、 Social、 Governance)のSocialの部分を本業の中で実現しているというのは素晴らしいです。若い人の仕事の価値観にも合致していると思います。

前田氏 社内ではSDGsについても意識を高める動きがあります。私たちにできることは限られていますが、小さなことの積み重ねで何かが変わる。そこに自分たちが関わるという意識を持つことも、「働きがい」の向上につながるのではないかと思っています。

荒川氏 若い世代は、地域社会への貢献という点について非常に関心が高いです。そういう点でも、「マエダハウジングで働きたい!」と思われる方がどんどん増えていくのではないかと想像しています。

コロナ禍で「働きがい」向上に取り組むということ

前田氏 コロナ禍で、ますます「働きがい」が注目されていると感じています。当社でもコロナ禍により通常通りの事業ができないという危機に直面しました。ただ、この危機を最大のチャンスと捉え、会社を変えていくことが重要だと思います。そこでDX(デジタルトランスフォーメーション)やRPA(ロボティクスプロセスオート―メーション)を導入し生産性を上げていくという試みも始めているところですが、一番生産性が上がるのは、何よりも従業員の「働きがい」だと思っています。そして重要なのは、関わる人全員が幸せになることです。そのためにも自発的、自律的にやりがいをもって働くことは重要だと考えています。

働きがい知事表敬

(令和3年7月20日)