犯罪等により被害を受けた方、そのご家族やご遺族の方の支援を担う人材を育成するために、8月2日(水曜日)に広島市内で「広島県犯罪被害者等支援研修」を開催しました。研修は第一部として講演、第二部として講義・事例検討を行いました。なお、この研修は、公益社団法人広島被害者支援センターに委託して行われました。
講師は、2002年5月に息子さんを交通事故で亡くされました。加害者は免許取消中で、任意保険や自賠責保険をかけておらず、覚せい剤の常習者ということでした。
講演では、はじめに、自然災害と犯罪被害の違いを話されました。2019年に講師の家が台風で被害にあったとき近所の人がいろいろと声をかけてくれたのに、17年前に息子を亡くしたときはごく親しい人以外は顔を合わせないように避けられて、悲しい思いをされたということでした。多くの人は、自然災害に遭うのは、おたがいさま、我がこととしてとらえているのに、犯罪被害の場合は、自分には起こらない、他人事と考えています。どうしたら、我がこととして考えてもらえるのだろうか。犯罪被害者を自分のこととして考えてもらいたいという願いを持たれています。
講師が係わっている「犯罪被害者団体ネットワーク(ハートバンド)」の活動や、「市町村による支援の実態調査アンケート調査&結果」を紹介されながら、被害者が経験する、心身の不調や日常生活の困難なことなどについて説明されました。
講師自身のこととして、息子さんを亡くされて、一番つらかったことは現実を受け入れられなかったこと。一番困ったことは刑事裁判を引き受けてくれる弁護士がなかなか見つからなかったこと。できなくなったことは桜並木を見て息子さんの入学式のことを思い出され、桜の花は好きな花ではなくなったと話をされました。
また、被害者・遺族が言われて傷つく言葉、言ってはいけないこと、言ってもよいことの話がありました。犯罪被害者に対して慰めの言葉を言わなければと思ってつい言ってしまった言葉が、かえって被害者を傷つけたりします。そのときには、「たいへんだったね」「本当にくやしいよね」という簡単な言葉をかけてもらえればいいということでした。支援する場合には、それだけでなく、犯罪被害者に対して共感と尊厳の念をもって接するべきだということです。しかし、同情と共感は違います。また、共感することと共感を伝えることは大きな差があります。言葉で伝わるのは10%以下ですので、誤解させるようなことは避け、大変ですが、支援者はプロとして誠実に対応してもらいたいということでした。
小さな市町だと直接相談に行くと、すぐバレてしまうので行きたくないと言われます。そのときには支援センターや県のコーディネーターに相談して、市町の担当者とも連携して支援していくことが大切だということです。被害はないはずではなくて、あるはずという立場で被害を発見し、支援をつなげること。二次被害を避けるために及び腰になってしまいがちですが、紹介された警察官、救急隊員、市役所の職員の「出会った三人のプロたち」の例のように毅然とした態度で誠実に接してくれることが被害者にとって力になるということでした。最後に二つの詩を紹介されました。
講師のお話から、犯罪被害を自分のこととして考えること、被害者への接し方、支援機関との連携の大切さを学ぶことができたと思います。その中で、共感を伝えることと誠実な対応に努めることについては常日ごろから心がけていくべきことと思いました。