冬季の気温が高くなった年であっても大雪に見舞われた年があり,常に積雪や寒害に対して油断なく警戒することが重要です。作業者の安全確保を最優先に,下記を参考に,適切な対応が行われるよう留意する。
【共通事項】
1 降雪時の農地・農業用施設の見回りは,気象情報を十分に確認するとともに,次の点に留意しつつ,作業者の安全確保を優先に,対策の徹底を図る。
(1)道路・ほ場周辺で,隣接する用水路,落差等がある場所には近づかない。
(2)見回りをする際には一人では行かない。
(3)滑りにくい靴を履く。
(4)倒壊の恐れのある施設には近づかない。
(5)ハウス,畜舎等の雪下ろしを行う際には,ヘルメット等をかぶり,滑りにくい履物を履くなどし,複数人で作業を行う。
(6)大雪や吹雪等の悪天候時には,作業は行わない。
2 冬季は,降雪等により施設や倉庫等の管理や巡回ができない場合もあることから,日ごろから出入口等の施錠を確認するなど,防犯対策に留意する。
【野菜,花き】
1 雪害対策
(1)施設栽培においては,ハウス周辺に雪が積もり,サイドが開けられない状態で天候が回復すると,葉,果実や花に日焼けを生じることがあるので,開放できる妻面換気口を開けて換気を行い,温度管理に注意する。
(2)露地栽培においては,雪解け後,湿害を受けないよう排水溝の点検や溝そうじ等の排水対策を講じる。
【果樹】
1 雪害対策
(1)事前準備
積雪の多い地域においては,早期の剪定,支柱等による枝の補強,果樹棚の補強等に努める。特に苗木・幼木や改植後間もない若木については,結束して樹冠を縮める,支柱により接木部を補強する等の対応を講ずる。積雪時の野そ被害を低減するため,樹幹へのプロテクター等の巻きつけ,忌避剤の塗布や散布,殺そ剤の投与等の対策に努める。多目的防災網などを設置している果樹園では,積雪による施設及び樹体の被害を回避するため,あらかじめ支柱から外す。
(2)除雪・積雪中の対策
安全が確保できる範囲で,樹園地を見回り,除雪を行う。雪に埋まった枝は沈下しないうちに可能な限り掘り起こす。掘り起こしが困難は場合,スコップで雪に切れ目を入れる,又は,樹冠下の雪踏みを行う。
2 寒害対策
(1)低温に弱いかんきつ類等の常緑果樹は,次の点に留意する。
〇寒害の恐れがある場合は,寒冷紗や不織布等で被覆し,樹体が直接寒風にさらされることや樹体の凍結を防ぐ。特に,苗木,幼木や改植後間もない若木は寒さに弱いため,コモや不織布等で樹体を保護する等防寒対策に努める。
〇防風垣や防風網を設置している場合は,裾の部分の巻き上げを行い,冷気の停滞を防止する。また,敷わら栽培では,地表面での熱移動が妨げられるため,敷わらの全面被覆は避ける。
〇今後,収穫・出荷期を迎える中晩柑等においては,異常低温が予想される前に収穫適期の果実を収穫する。また,寒害等によりヤケ,苦味,す上がり等の果皮・果肉障害が発生した場合には,出荷時にこれらの果実の混入防止に細心の注意を払う。
(2)落葉果樹は,凍害の恐れがある場合には,主幹部への白塗剤の塗布,わら巻き等の防寒対策を行う。
【園芸用施設】
降雪や降雪後の降雨によりパイプハウスが倒壊する恐れがある場合(積雪荷重がおおむね20kg/m2 を超えると予想される場合)には,気象庁からその旨の気象情報が発令されることとなっていることから,最新の気象情報を常に注視する。
また,次の点を踏まえ,作業の安全確保と施設及び施設内作物の保護に万全を期する。
1 事前の対策
(1)ハウスの被覆資材の破れや隙間の点検,補修等により,保温性向上に努める。
(2)積雪により荷重が集中すると思われる箇所を特に補強する。
(3)基礎部が腐食している場合は,パイプの交換や補強資材により,強化を図る。
(4)基礎の沈下を防ぐため,谷樋からのオーバーフロー防止対策を講ずるなど,施設の保守管理と構造強化に努める。
(5)停電した場合に備え,潅水に必要な水を貯めておく。また,停電時に行う作業の内容及び手順,役割分担について確認しておく。特に,大規模施設園芸においては,予備電源については賃貸を含め導入を検討しておくとともに,導入にあたっては既に所有している場合も含め事前に動作確認を行っておくこと。
2 降雪直前からの対策
次の資料を参考にして,保守管理を確認するとともに,積雪前に内部被覆を開放して融雪対策に努める。最新の気象情報による積雪深がハウスの耐雪強度を大きく上回る場合は,被覆資材を切断除去することで施設への積雪を防ぐ。
○平成26年2月の大雪被害における施設園芸の被害要因と対策方針(一般社団法人日本施設園芸協会)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/sisetsu/pdf/yuksisin.pdf
○ 農業技術の基本指針(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo03/gityo/g_kihon_sisin/attach/pdf/r2sisin-1.pdf
【畜産】
1 寒冷対策
特に,幼畜・幼雛について,消化器病や呼吸器病の予防のため,適切な防風・保温に努めるとともに,適切な換気にも配慮する。また,幼畜の保温のための機器については,ガスホース,配線及び吊り下げ金具を含め,使用前に異常の有無を点検する等により,畜舎の火災の発生防止に努める。
畜舎内やパドックが凍結した場合は,砂や融雪促進剤等の散布を行い,転倒等の予防に努める。
また,肉用牛及び乳用牛においては,飲水の凍結防止,飲水後の体温低下の抑制及び水槽周りの凍結による転倒防止が重要であり,飲水の加温や飲水器周辺への滑り止めマットの設置等の対策を講ずるよう努める。
2 積雪対策
積雪による畜舎や家畜の事故防止を図るため,安全には十分に配慮した上で,早めの雪下ろし及び畜舎周辺の除雪に努める。
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