10-1 パートタイム労働者の労働条件は口頭による説明でもよいか|労働相談Q&A
10-1 パートタイム労働者の労働条件は口頭による説明でもよいか
質問
私は,ある会社でパートとして働いています。採用されたときの店長の説明では,契約更新ごとに,時給を10円増額させるとのことでしたが,口約束なので本当に守られるかどうか不安です。どうしたらよいのでしょうか。
回答
<ポイント!>
- 使用者は,労働者に労働条件を明示しなければなりません。
- 加えて,パートタイム労働者等短時間労働者に対しては,「昇給の有無」,「退職手当の有無」,「賞与の有無」を文書の交付等により明示しなければなりません。
短時間労働者とは
パートタイマーにはいくつも定義がありますが,ごく一般的にいえば「この事業場の一般労働者に比して労働時間が短い者」ということになるでしょう。この定義に当てはまる人は,パートタイム労働者,アルバイトなど,呼び方のいかんにかかわらず,短時間労働者になります(もっとも,わが国の企業では,呼称こそ「パートタイマー」ですが,労働時間が一般労働者と変わらない労働者も存在します)。
ところで,短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(略してパートタイム労働法といいます。)は,短時間労働者を定義して,「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者に比べて短い労働者」としています(同法第2条)。
ほぼ,上記の一般的定義と変わりませんが,厳密には異なります。この定義はあくまで同法の適用範囲を定めるものであって,労働法の全分野に共通の定義でないことにご注意下さい。たとえば,年次有給休暇の比例付与の対象となる短時間労働者の定義はこれと全く異なるなど(労基法第39条第3項参照),法律や問題に応じて異なった定義がなされているのです。
労働条件は明示しなければならない
さて,労働基準法第15条第1項は,「使用者は,労働契約の締結に際し,労働者に対して賃金,労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と定め,そのうち,
- 労働契約の期間,
- 就業の場所・従事すべき業務,
- 始業・終業時刻,残業の有無,休憩時間,休日,休暇等,
- 賃金の決定・計算・支払の方法,賃金の締め切り・支払時期,
- 退職,
の5項目については,書面の交付を要するとされています(同法施行規則第5条第1項)。
短時間労働者への文書の交付
しかし,パートタイム労働法第6条第1項は,特に短時間労働者の場合については,「事業主は,短時間労働者を雇い入れたときは,早くに,この短時間労働者に対して,労働条件に関する事項のうち労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるものを文書の交付その他厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」と規定しています。
すなわち,短時間労働者に対しては,労基法による上記5項目以外の「昇給の有無」,「退職手当の有無」,「賞与の有無」,「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」についても文書(雇入通知書など)の交付等によって労働条件を明示することが求められているのです。
こんな対応を!
労働時間や賃金,休日などの労働条件については,採用に際し明示することが義務づけられ,また,上記5項目の労働条件については,文書の交付により明示することが義務づけられています。これらがなされていないのであれば,その旨使用者に説明し,明示してもらいましょう。
上記5項目以外の労働条件についても,パートタイム労働法の規定に従い,文書を交付してもらうよう申し入れを行いましょう。
さらに,労基法によりますと,昇給に関する事項(昇給期間,昇給率その他昇給の条件等)は必ず就業規則に記載することになっています(同法第89条第2号)。会社の就業規則を調べて(使用者には就業規則を従業員に周知する義務があります(同法第106条)),この点,どうなっているか確認してみましょう。なお,パートタイマーと就業規則との関係について詳しくは,「パートタイム労働者に関する就業規則は作成しなければいけないか」の項をご覧ください。