10-2 パートタイム労働者に関する就業規則は作成しなければいけないか|労働相談Q&A
10-2 パートタイム労働者に関する就業規則は作成しなければいけないか
質問
私の会社には,正社員が15名ほどいますが,ほかにパートタイムの従業員が8名います。就業規則は作成していますが,正社員の労働条件等を定めたものしかありません。パートタイム労働者については,労働契約で労働条件等を明示しているので,就業規則を作成する必要はないと思っていますが,それでいいのでしょうか。
回答
<ポイント!>
就業規則は,正社員だけでなく,パートタイム労働者等を含めたすべての労働者について作成しなければなりません。
パートタイム労働者にも就業規則は必要
常時10人以上の労働者を使用する事業場の使用者は,就業規則を作成し,労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法第89条)。ここでいう「労働者」とは,事業又は事務所に使用される者で,使用者から労働の対償として賃金を支払われる者をいい,正社員だけでなく,パートタイム労働者等も含まれます。言い換えれば,パートタイム労働者等を含めたすべての労働者について,就業規則を作成する必要があるわけです。
パートタイム労働者について,正社員とは異なったルールを設ける場合には,就業規則の中に別の取扱いをする旨を明記するか,別個の就業規則を作成することになります。この点,行政解釈は,「同一事業所内の労働者である限り,その一部の者に対しても,当該就業規則は当然に適用されるものであるから,一部の労働者に対して特別な取扱いをしようとする場合には,当該就業規則の中に又は当該就業規則とあわせて,除外規定又は特別規定を定めなければならない。」としています。
労働契約の効力
「パートタイム労働者の労働条件等については,個々に雇入通知書を交付しているから,就業規則はいらないだろう。」という考えは,上記の説明のとおり,明らかに間違いです。それどころか,労働契約法は,「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は,就業規則で定める基準による。」と規定しているので(同法第12条),パートタイム労働者を対象とする就業規則を定めていなければ,結果として正社員の就業規則に定める労働条件による,ということにもなりかねません(結果的にはその請求は認められませんでしたが,退職金規程が正規職員のみならず嘱託職員にも適用されると争った,東京西鉄運輸事件・東京地判昭和56年1月28日など,裁判事件となったこの種の紛争は多くあります)。
就業規則作成の手続
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第7条は,「事業主は,短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し,又は変更しようとするときは,当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められる者の意見を聴くように努めるものとする。」と定めています(同法第7条)。
こんな対応を!
以上に述べたとおり,パートタイム労働者であっても就業規則の作成は必要です。労基法上必要な労働者代表(おそらく正社員の方がなられるでしょう。)からの意見聴取(同法第90条第1項)に加えて,パートタイム労働者の過半数代表者からも意見を聴いた上で,速やかに就業規則を作成しましょう。