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10-3 パートタイム労働者も有給休暇を取得できるか|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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10-3 パートタイム労働者も有給休暇を取得できるか

質問

私は,8か月前からパートタイマーとして働いています。どうしても休まなければならない用があるので,有給休暇を申し出たところ,「正社員でないから有給休暇はない。」と言われました。パートには有給休暇は与えられないのでしょうか。

回答

<ポイント!>

パートタイム労働者であっても,一定の要件を満たせば有給休暇は与えられます。

年次有給休暇発生の要件

年次有給休暇は,雇用形態にかかわらず,一定の要件を満たすすべての労働者に与えられます。したがって,パートタイム労働者などにも年次有給休暇はあります。
「一定の要件」とは,

  1. 雇入れの日から6か月間継続して勤務していること,
  2. 全労働日の8割以上出勤していること,

の2点です(労基法第39条第1項)。

アルバイトのような短期契約の労働者であっても,契約の更新が行われ,実態として継続して使用されている場合であれば,1の要件は満たします。契約期間の満了と同時に即時に契約更新している場合はもちろん,数日の間を置いて更新される場合であっても,実質的にみて勤務が中断していなければ,継続勤務とみなされます(国際協力事業団(年休)事件・東京地判平成9年12月1日参照)。
2の要件は,採用当初は,その6か月間の出勤状況で判断しますが,その後は,1年ごとの状況で判断します。なお,業務上の負傷・疾病のために休業した期間,育児休業・介護休業期間,産前・産後の休業期間は,出勤したものとみなされます(同条第8項)。

年次有給休暇の比例付与

しかし,たとえば,週に1日しか出勤しない労働者も,5日出勤する労働者も,上記の要件を満たせば年休日数は同じというのは合理的とは考えられません。そこで,労基法は,次のように労働時間が短く労働日数も少ない労働者については労働日数に応じて年休を付与する方式(比例付与方式)を採用しています(同法第39条第3項,同法施行規則第24条の3)。
すなわち,週の労働時間が30時間未満で所定労働日数が週4日以下(年間所定労働日数の場合は216日以下)のパートタイム労働者については,その所定労働日数によって,次の表に掲げるとおり,年次有給休暇を比例して付与しなければなりません。

 1.週の所定労働日数が4日又は1年間の所定労働日数が169日から216日までの労働者

継続勤務期間 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月
以上
付与日数 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日

2.週の所定労働日数が3日又は1年間の所定労働日数が121日から168日までの労働者

継続勤務期間 6か月  1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月
以上
付与日数 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日

3.週の所定労働日数が2日又は1年間の所定労働日数が73日から120日までの労働者

継続勤務期間 6か月  1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月
以上
付与日数 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日

4.週の所定労働日数が1日又は1年間の所定労働日数が48日から72日までの労働者

継続勤務期間 6か月  1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月
以上
付与日数 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

一般の労働者と同じ有給休暇が付与される場合

ただし,労働時間が短く労働日数が少ない労働者でも,次のいずれかの条件に該当する場合には,一般の労働者と同一日数の年次有給休暇が与えられます(勤続期間が6箇月以上で全労働日の8割以上出勤という要件を満たしていなければならないことは言うまでもありません。なお,常勤労働者の年次有給休暇付与日数については,労働基準法第39条の解説ページを参照してください。)

  1. 1週間の所定労働時間が30時間以上の労働者
  2. 1週間の所定労働日数が5日以上の労働者

(所定労働日数が週以外の期間によって定められている場合は,1年間の所定労働日数が217日以上の労働者)

こんな対応を!

御質問の事例の場合,所定労働日数の8割以上出勤していれば,年次有給休暇は取得できることになります。事業主の方は,「正社員でないと年次有給休暇は付与しなくても良い。」と思い違いをされているようですので,パートタイム労働者でも年次有給休暇はあることを説明した上で,事業主の認識を改めてもらいましょう。

更に詳しく

年次有給休暇を取ることを認められたとしても,「あなたは,パートなんだから,好きなときに休まれては困ります。」と言われるかもしれません。年次有給休暇は,原則として,労働者が自由に取得時季を指定することが認められており,パートタイム労働者だからという理由で例外扱いが許されるものではありません。
ただし,事業の正常な運営を妨げる場合に限って,使用者は,労働者の請求した時季を変更することができますが(この点は,一般の労働者の場合も変わりません),判例によれば,労働者が指定した時季にできるだけ休暇が取れるように配慮する義務を使用者に課しており,「忙しいから駄目」とにべもなくはねつけることは適当ではありません。(詳しくは,「忙しいことを理由に有給休暇の取得を拒否された」の項を参照してください。)