10-4 有期労働契約の反復更新後の雇止めは自由か|労働相談Q&A
10-4 有期労働契約の反復更新後の雇止めは自由か
質問
パートで初めは6か月間の契約でしたが,採用時に「長く勤めてもらいたい」と言われており,そのつもりでいたところ,この度,急に次の更新はしないと言われました。自動的に契約更新してもう3年も勤めているので急に言われても困るのですが,期間がある以上仕方ないのでしょうか。
回答
<ポイント!>
- 有期契約が繰り返し更新されると,期間の定めのない契約と変わらないとされたり,契約更新(雇用継続)に対する労働者の期待が合理的と判断される場合があります。
- このような契約を会社が一方的に終了させるには,合理的な理由や,解雇予告など解雇に関する法的手続が必要です。
契約終了には合理的理由が必要
期間に定めのある契約は期間が満了したら終了するのが原則です。しかし実際には雇用調整を容易にするため,便宜的に有期契約とし,更新手続きもかなりルーズに行われている状態で長期に渡って雇用しているケースも多いと思われます。
判例では,例えば,
- 採用時,「長く勤めて欲しい」といったような,長期雇用を期待させる言動があった,
- 更新時に本人の意思確認もなく手続きも形式的,または手続きもないような状況にあった,
- 更新がたびたび繰り返され,特に問題がなければ更新されている状況にあった,
- 他の従業員も同様の状態であった,
などの事実が認められるケースでは,有期契約は実質的に期間の定めのない契約と変わりがない(東芝柳町工場事件・最一小判昭和49年7月22日)とか,あるいは,変わりがないとまでは言えないが,労働者が雇用の継続を期待することに合理性があるとされ(日立メディコ事件・最一小判昭和61年12月4日),契約終了に当たっては解雇権濫用の法理(社会通念上是認できる合理的理由がないと解雇権の濫用となり解雇が無効となるとする原則)が類推適用されています。
なお,この「解雇権濫用法理」は,労働契約法第16条に明文化されています。
また,たとえ1回目の更新時であっても,期間満了後の継続雇用を合理的に期待させるような雇用(過去に更新拒絶の例がなく,労働者も当然契約が更新されるものと思っていたなど)であれば,更新拒否にはやむを得ないと認められるような特段の事情が必要であるとした判決もあります(龍神タクシー事件・大阪高判平成3年1月16日)。
整理解雇の場合,正社員に比べ規制は緩い?
多くの裁判例では,正規社員に先立ってのパート社員の整理解雇の効力を広く認めるなど,解雇の合理性の程度は正規社員の場合に比べて緩やかに解釈されています(前掲・日立メディコ事件・最一小判は,正規社員の希望退職を募らず,有期契約労働者の整理解雇を不当・不合理とはいえないと判示しています)。もっとも,どの程度緩やかに解するかについては,裁判例はまちまちであり,はっきりとしたことを言うのは困難です。
こんな対応を!
御質問の場合,6か月契約のパートとはいえ,採用時には長く勤めて欲しいと言われ,特別な手続きもなく何度も契約は更新されており,雇用継続が当然に期待される契約になっていると思われます。
このことを踏まえて,会社に契約終了の理由を説明してもらい,納得できないものであれば,契約継続の意向を伝えて話し合ってみてください。
もし,契約終了に応じるのであれば,上記に紹介した判例法理に基づいて,労働基準法所定の手続(30日前予告かもしくは30日分以上の賃金の支払)に準じた手続を取ってもらうよう求めましょう。
更に詳しく
有期労働契約に関するトラブル未然防止のため,厚生労働省は労基法第14条第2項に基づき「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準」(平成15年10月22日 厚労省告示357号)を定め行政指導・助言を行っています。
「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準」のポイント
- 使用者は有期労働契約の締結に際し,更新の有無,および,更新ありの場合は更新する場合としない場合の判断の基準を明示すべきこと。
- 更新しないこととする場合には契約期間満了日の少なくとも30日前までにその予告をすべきこと。
- 更新しない場合で労働者がその理由についての証明書を請求した場合には遅滞なくこれを交付すべきこと。
- 雇い入れ日から起算して1年を超えて継続勤務している有期労働者について更新する場合には契約期間をできるだけ長くするように努めるべきこと等。
無期労働契約への転換
平成25年4月1日以降に締結された有期労働契約が繰り返し更新されて5年を超えたときは,労働者の申込みにより,期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換します。(労働契約法第18条)