1-2 身元保証人の責任とは,どのようなものか|労働相談Q&A
1-2 身元保証人の責任とは,どのようなものか
質問
先日,ある会社から採用内定を受けた知人から,身元保証人になってくれるように頼まれました。保証人になってもいいのですが,身元保証人がどのような責任を負うのかわからず,不安です。身元保証人の責任とは,どのようなものなのでしょうか。
回答
<ポイント!>
- 身元保証の期間は5年を超えることができず,また,期間の定めのない身元保証契約の有効期間は3年です。
- 身元保証人が負うべき損害賠償の額を定めるに当たっては,使用者の過失や労働者の任務などの一切の事情が考慮されます。
身元保証とは
使用者が労働者を雇って使用する際に,例えば,労働者の使い込みなどにより使用者が損害を被る場合に備えて,親戚や知人などに,その損害を補填するように約束させておくことは,広く行われています。このように,雇用契約に伴って使用者が労働者によって受ける損害を第三者に担保させることを身元保証といいます。
雇用契約に伴う身元保証については,保証人が不当に重い責任を負うことのないように,「身元保証ニ関スル法律」(略して「身元保証法」といいます。)に規定が置かれています。
身元保証契約の存続期間
身元保証法の規定により,期間の定めのない身元保証契約の存続期間は原則として3年となり(第1条),期間を定める場合でも5年を超えることはできません(第2条第1項)。契約を更新することはできますが,更新期間は5年を超えることはできません(第2条第2項)。
使用者の通知義務
使用者は,
- 労働者に業務上不適任や不誠実な事柄があって身元保証人の責任が発生しそうなとき,
- 労働者の任務や任地を変更したために身元保証人の責任が重くなったり,労働者の監督が困難となったとき,
には,遅滞なく身元保証人に通知しなければなりません(第3条)。身元保証人がこの通知を受け取ったり,身元保証人自身がこのような事実があることを知ったときは,将来に向けて身元保証契約を解除することができます(第4条)。
保証債務の限度
裁判所は,労働者の監督に関しての使用者側の過失の有無,身元保証人が保証をするに至った事由や払った注意の程度,労働者の任務や身上の変化など,一切の事情を考慮した上で,身元保証人の損害賠償の責任やその額について判断します(第5条)。
したがって,労働者の行為による使用者の損害について,身元保証人がその全額を賠償しなければならないというものではなく,身元保証人の責任の軽減が図られています。
また,身元保証法に違反する特約で,身元保証人にとって不利益なものは,すべて無効となります(第6条)。
こんな対応を!
以上のように,身元保証法では,身元保証人が不当に重い責任を背負うことのないよう,配慮されています。
しかし,保証人になる以上は,それ相応の責任を負うことになることは言うまでもありません。知人に頼み込まれて,まさか本当に自分に責任が及んでくることはないだろうという軽い気持ちから保証人を引き受けることには問題があります。しかし,保証人がいないと知人の就職に差し障りが出てくるおそれもあります。
身元保証人の負うべき責任と,相談者と知人との関係などをよく考慮した上で,身元保証人を引き受けるかどうかを決められてはいかがでしょうか。