1-3 労働条件がはっきりしない|労働相談Q&A
1-3 労働条件がはっきりしない
質問
私は,今月からある会社に就職しましたが,賃金や休日などの労働条件については,口約束だけで,契約書などの書面は取り交わしていません。しかも,労働時間など,あいまいな部分もあります。ちゃんと約束どおりの賃金が支払われるのか不安ですし,労働条件をめぐってトラブルにならないかも心配です。どうすればよいのでしょうか。
回答
<ポイント!>
- 使用者は,労働者に対して賃金,労働時間などの労働条件を明示しなければなりませんし,そのうち,賃金,労働時間,休日などの事項については,書面の交付を要します。
- 常時10人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則を作成しなければなりません。
労働条件の明示
労働者が使用者の指揮命令のもとで労務を提供し,その対価として使用者が賃金を支払うことをお互いに約束する契約を「労働契約」といいます。労働契約は,口約束だけでも成立します。
労働基準法は,労働契約を締結するに当たり,次に掲げる事項を労働者に対して明示しなければならないと定めています(同法第15条第1項,同法施行規則第5条)。
- 労働契約の期間に関する事項
- 就業の場所と従事すべき業務に関する事項
- 始業・終業の時刻,所定労働時間を超える労働の有無,休憩時間,休日,休暇,労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金を除く。)の決定,計算・支払の方法,賃金の締切り,支払の時期,昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲,退職手当の決定,計算・支払の方法,退職手当の支払の時期に関する事項
- 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。),賞与,臨時に支払われる賃金・賞与に準ずる賃金,最低賃金額に関する事項
- 労働者に負担させるべき食費,作業用品その他に関する事項
- 安全及び衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償,業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰及び制裁に関する事項
- 休職に関する事項
このうち1~5はどの事業場においても必ず明示すべき事項であり,6以下はこうした定めをしている場合(例えば,退職手当制度がある場合に,ということです。)に限り明示すべき事項です。また,1~5の事項(4の昇給に関する事項を除く)は,必ず労働者に書面を交付して明示しなければなりません。
これらの明示された労働条件と実際のものとが異なる場合には,労働者は即時に労働契約を解除することができますし,就職のために転居した労働者が,契約解除の日から14日以内に帰郷する場合には,使用者はそれに要する旅費を負担しなければなりません(同法第15条第2項,第3項)。
就業規則の作成
労働基準法は,常時10人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則を作成しなければならないと定めています。
就業規則とは,労働条件や服務規律等に関して使用者が定めた規則の総称です。使用者が就業規則に記載すべきとされている事項は,そのほとんどが上記の「労働者に明示すべき事項」と一致しているため,1の「労働契約の期間に関する事項」と,2の「就業の場所と従事すべき業務」を除いては,労働条件を明示するときに,就業規則を提示してその内容を説明することが多いようです。
なお,常時10人以上の労働者を使用しているかどうかは,事業場(例えば,○○支店,△△工場など)ごとに判断します。企業単位ではありません。
こんな対応を!
お尋ねの事例では,労働者に労働条件を明示しておらず,しかも,賃金・労働時間等の事項について書面も交付していないようですので,事業主は,労働基準法に違反していることになります。そのことを申し入れて,労働条件を明らかにするように求めてください。
常時10人以上の労働者を使用している事業場なのに,就業規則を作成していないというのも労働基準法違反です。事業主に就業規則を作成するように求めましょう。現在の就業規則は,ずっと以前に作ったもので見ても参考にならないと言われた場合は,所定の手続を踏んだ上で就業規則を改訂するよう求めましょう。
更に,就業規則は,労働者に見せる必要はないと主張する事業主もいるようですが,使用者は,常時作業場の見やすい場所に掲示したり,備え付けたり,書面を交付するなど法令の定める一定の方法で,労働者に就業規則を周知させなければならないとされています(労働基準法第106条,同法施行規則52条の2)。したがって,このことを説明した上で,就業規則を労働者に周知するよう求めましょう。
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