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4-4 過払いの賃金を一度に清算しても問題はないのか|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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4-4 過払いの賃金を一度に清算しても問題はないのか

質問

先日,会社から「給与の算定に誤りがあったため,今月分で清算したい。」と言われました。しかし,過去の給与は既に生活費として使っており,今月の給与で一度に清算されると,生活面で大きな影響が出ることになります。このようなことを行っても,問題はないのでしょうか。

回答

<ポイント!>

賃金の過払い分の控除は,その時期,方法,金額などからみて労働者の経済生活の安定を害さない限り,賃金の全額払いの原則による相殺禁止の例外として許容されます。

調整的相殺は一定の範囲で許される

使用者は,労働者に賃金の全額を支払わなければなりません(労働基準法第24条第1項)。
しかし,前回の支払期までの賃金が,なんらかの理由で過払いとなっている場合に,使用者がその調整のために,以後の賃金から控除することは,技術的な問題として一定限度の範囲内で許されています。
判例でも,過払いのあった時期と賃金の清算・調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期になされ,あらかじめ,労働者に予告され,その額が多額にわたらないなど,労働者の経済生活の安定を脅かすおそれがない場合には,調整的相殺は許されると判示しています(福島県教組事件・最一小判昭和44年12月18日,群馬県教組事件・最二小判昭和45年10月30日)。

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調整的相殺が許される理由

調整的相殺が許される理由としては,賃金過払いの不可避性(遅刻,欠勤などの減額事由が賃金支払日に接近して生じた場合は,対応が困難であることから賃金過払いが生ずる。また,賃金計算上の過誤・違算も避けがたい。)と,賃金と関係ない他の債権を相殺するのとは性格が異なること(実質的にみれば,本来支払われるべき賃金は,その全額が支払われたことになる。)などが挙げられています。

こんな対応を!

給与の過払いを調整するための賃金の控除については,労働者の経済生活の安定を脅かさない範囲で許されるものであり,日常生活に支障が出るようでしたら,2~3か月の範囲で分割して相殺するような緩和措置などを取るよう依頼しましょう。
また,今後,このような場合には事前に説明してもらうよう,申し入れを行いましょう。