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5-8 出張中の移動時間は時間外手当の対象にならないのか|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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5-8 出張中の移動時間は時間外手当の対象にならないのか

質問

私は,先日,東京に出張したのですが,打ち合せが17時まで長引いたため,広島に帰着したのは23時を過ぎていました。そこで,通常の終業時刻を超える部分について時間外手当を請求したのですが,「出張中の移動時間に対しては時間外手当は出ない。」と言われました。出張に伴い帰宅が遅くなったのに,納得できません。会社の言い分は正しいのでしょうか。

回答

<ポイント!>

出張中の移動時間は,日常出勤に費やす時間と性質的に同じか,類似したものと考えられ,労働時間に算入されず,時間外手当の対象とはならないとするのが相当です。

出張中の労働時間

出張は,事業場外で業務に従事するものですから,使用者がその実際の労働時間を確認することはむずかしい場合が通常です。このような場合,労働基準法は,所定労働時間労働したものとみなすと規定しています(第38条の2第1項)。

出張時の移動時間

出張の際の往復の旅行時間が労働時間に該当するかどうかについては,通勤時間と同じ性質のものであって労働時間でないとする説と,移動は出張に必然的に伴うものであるから,使用者の拘束のもとにある時間とみて,労働時間であるとする説,使用者の拘束のもとにあるが,特に具体的な業務に従事することを命じられているわけでないから,労働時間とはいえないとする説などがあります。
この点,裁判例には,「出張の際の往復に要する時間は,労働者が日常出勤に費やす時間と同一性質であると考えられるから,右所要時間は労働時間に算入されず,したがってまた時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である」とするものがあります(日本工業検査事件・横浜地判川崎支判昭和49年1月26日)。
このように説は分かれているのですが,移動時間中に,特に具体的な業務を命じられておらず,労働者が自由に活動できる状態にあれば,労働時間とはならないと解するのが相当といえます。
ただし,出張の目的が物品の運搬自体であるとか,物品の監視等について特別の指示がなされているとか,特別な病人の監視看護に当たるといった場合には,使用者の指揮監督下で労働しているといえますので,労働時間に含まれると考えるべきでしょう。

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出張中の休日

では,出張日程の途中に休日がある場合や,休日が移動日に当たる場合は,どうでしょうか。
出張中に休日がある場合,その当日に用務を処理すべきことを明示的にも黙示的にも指示していない場合は,その当日は休日として取り扱われます。
また,「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても,旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取扱わなくても差し支えない」とする行政解釈があります(昭和23年3月17日 基発461号,昭和33年2月13日 基発90号)。

こんな対応を!

出張中の移動時間については,その時間中に処理すべき用務について特段の指示がある場合を除き,労働時間とみなされず,したがって,時間外手当の対象とはならないとする説が相当と考えます。
ただし,会社の出張規程などに,出張時の移動時間を勤務とみなす規定や,出張時にも時間外手当を支給する規定がある場合には,それによります。会社の規程を調べてみましょう。