広島県が育種した清酒酵母の特徴
Q 広島県独自の酵母を使用して清酒を醸造したいと考えています。広島県が育種した酵母の特徴を教えてください。
A 広島県は,広島県酒造組合と共同で酵母を育種しており,このうち現在主に利用されている酵母は次の7つです。
また,広島県が分離した最古株で,現在研究を進めている酵母「広島6号」の特徴を紹介します。
広島令和1号酵母
冷酒向けの酵母。
酢酸イソアミルのバナナやブドウのような華やかな香りを多く生成し,軽快で冷酒向きの味わいとなります。
KA-1-25と同程度の高い発酵力があります。
広島21号
泡なしタイプの普通酒向けの酵母。
香気成分の生成は穏やかで,軟水に適し穏やかな発酵特性を持ちます。
広島県が育成した酵母の中では発酵力が高く,醸造期間の短縮が可能です。
せとうち-21
純米酒・吟醸酒向けの酵母。
穏やかな洋ナシ様の吟醸香(酢酸イソアミル)が特徴で,低温のもろみ経過によって,酸やアミノ酸の含有量が少ない清酒を醸します。
発酵力は「広島21号」と同程度です。
KA-1-25
純米酒・吟醸酒向けの酵母。
株式会社熊本県酒造研究所の承諾を得て,熊本酵母KA-1を親株とし,平成7年に当センターで泡なし化と酢酸エチル(溶剤臭)の低減についての改良を行った菌株です。酢酸イソアミルを主体とするバナナ様の穏やかな香りを生成し,高い発酵力を有しています。
広島吟醸酵母(13BY,26BY)
吟醸酒向けの酵母。
リンゴ様の華やかな香り(カプロン酸エチル)を多く生成し,この生成量は全国的にも最高レベルです。
また,酢酸エチル(溶剤臭)の生成量が少ない特徴を持ちます。
発酵力はやや低めです。
広島もみじ酵母®
純米酒・吟醸酒向けの酵母。
「広島吟醸酵母」と「広島21号」の交配によって得られた酵母です。
「広島吟醸酵母」より香り(カプロン酸エチル)が穏やかなため,食中酒として料理に合わせやすい清酒に仕上がります。
また,「広島吟醸酵母」より発酵力が高いため,醸造期間の短縮が可能です。
併せて,酸の生成量が多く,スッキリとした味わいを生み出す株も育成しました。
詳細は,こちらのページでも紹介しています。
広島6号
広島県醸造試験場が分離した酵母の中で最も古く,大正15年に広島県内の酒蔵から得たものです。
現在主に利用されている協会系酵母と遺伝的には近縁ですが,生存率の高い胞子を形成できる,という清酒酵母では非常に珍しい特徴があります。
この特徴を,新たな清酒酵母の育種や酵母の遺伝解析に活用できるよう,現在研究を進めています。
紹介した酵母で醸造した清酒の香りと味のマッピング図
最も新しい「広島令和1号酵母」は, 酢酸イソアミルのバナナやブドウのような華やかな香りを多く生成し,軽快で冷酒向きの味わいになり易いという特徴を持ちます。
「広島吟醸酵母」や「広島もみじ酵母®」は,リンゴのような華やかなエステルの香りを多く生成するという特徴を持ち,「広島21号」,「せとうち‐21」,「KA-1-25」は,生成する香りが比較的穏やかで様々な味わいを生み出すという特徴を持ちます。
当センターが酵母の開発に力を入れているのは,清酒の味わいや香りへの酵母の寄与が大きいからです。
清酒の味わいや香りは,酵母が発酵中に生成する又は酵母が消費しなかった有機酸や各種アルコール,エステル,アミノ酸及び糖類で形成されています。
紹介した酵母は食品工業技術センターが保管しており,広島県酒造組合(電話:082-221-9338)を通じて購入できます。
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