食品工業技術センター研究報告 第28号
「広島県立総合技術研究所食品工業技術センター研究報告 第28号」は,報文2報,技術論文1報,ノート1報を掲載しています。
- 【報文】凍結含浸法による形状保持軟化食品素材の力学特性
- 【報文】凍結含浸法による動物性素材の軟化処理
- 【技術論文】酒造好適米「八反錦1号」の代替系統「広系酒42号」の醸造特性
- 【ノート】食品の異物分析事例
【報文】凍結含浸法による形状保持軟化食品素材の力学特性
著者:中津沙弥香
凍結含浸専用調味料「VgTORON 2」及び「MeTORON 1」を用いて16種類の形状保持軟化食品素材の力学特性を解析した。力学特性は,2バイトテクスチャー試験により,硬さ,付着性,バランス度及び凝集性の値を測定した。また,食感としての残留感や繊維感を評価するため,目開き1 mmのナイロンメッシュ上の残渣率を測定した。硬さは,比較対照食品の絹ごし豆腐と同等以下のものが4種類(ニンジン,サトイモ,ブロッコリー,タクアン)認められ,いずれも植物性の試料であった。付着性は,硬さが同等であれば含水率や脂含有率が高いほど小さくなることが示唆された。バランス度は,硬さの値が小さいほど大きくなる傾向であり,4種類(サトイモ,ブロッコリー,タクアン,マダラ)において絹ごし豆腐と同等,2種類(ニンジン,豚ヒレ肉)において絹ごし豆腐よりも高い値となった。凝集性は,軟化シイタケを除いて絹ごし豆腐よりも小さい値であった。目開き1 mmのナイロンメッシュ上の残渣率は,硬さの値が小さいほど値が小さくなり易く,動物性の形状保持軟化食品素材では,畜肉類の方が魚類よりも残渣が少ない傾向を示した。大豆は,酵素処理により種皮が分解されることで残渣率が低下し,このことは,口腔内での種皮の残留感が減少し,より安全に喫食できる物性になったことを示唆した。
【報文】凍結含浸法による動物性素材の軟化処理
著者:柴田賢哉
凍結含浸法を用いて動物性素材を軟化した。植物性素材と同様に,酵素反応時間を調整することにより軟化度を制御することができた。0.5%濃度の酵素液で軟化した牛モモ肉は,結合繊維タンパク質が分解されており,箸で容易に切れるほど軟化した。高齢者用食品として利用できる軟らかさであった。凍結含浸法では減圧処理により食材内に酵素を含浸するが,肉組織に酵素を効率よく含浸するためには,減圧下で素材が膨張する条件が必要であり,筋繊維を断ち切るように切断した素材を用いて80%以上の真空度で減圧する必要があった。
【技術論文】酒造好適米「八反錦1号」の代替系統「広系酒42号」の醸造特性
著者:大土井律之,藤原朋子,西濱健太郎,山崎梨沙,勝場善之助
酒米新系統「広系酒42号」は,「八反錦1号」の多収性及び醸造適性を維持しつつ,砕米や胴割粒の発生の低減を目標に開発された。「八反錦1号」と比較して,玄米及び70%精米の白米の性状には差が見られなかったが,酒造適性については同等と判断した。
【ノート】食品の異物分析事例
近年の分析した異物混入事例から,特徴的な4件紹介した。瓶入りウーロン茶中の黒色浮遊物は,ポリフェノール塩であった。米飯中の異物は,釜に付着したご飯が焦げたものであった。フライに付着した赤色物は,赤色106号であった。さつまいも調理品の付着物は,印刷インクが付着したものであった。
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