元気な広島インタビュー
取釜 宏行 さん
大崎上島町出身。東京・京都のベンチャー企業に勤務後、26歳でUターンし広島県立大崎海星高校の魅力化プロジェクトに参画。2019年に「学び」を通して地域活性化を目指す一般社団法人まなびのみなとを設立。
「学び」を通して高校生と地域の大人が繋がっていく
大崎上島町で「教育」を軸にしたまちづくりを続けて10年。その間に若い仲間が増え、高校生と住民が共同で商品開発などを行う光景も島の日常になりつつあります。
また広島県全域の高校生が学びを探究・発表する「マイプロジェクト広島」を運営する中で、学生の純粋な想いには人の心を動かす力があると改めて実感。地域で活躍しながら高校生たちを本気でサポートする大人が県内各地にいることも、広島の魅力だと思います。
島外から移住した若者が活躍できる場所づくり
高校進学を機に故郷の大崎上島町を離れましたが、いつかは島に戻ろうと決めていました。小さな頃から地域の人に多くのことを教えてもらい、時には叱られ、「地域に育ててもらった」という実感があるんです。「我が子も同じ環境で育てたい」「お世話になった島に何か恩返しがしたい」と考えていました。
東京のIT系人材会社、京都の教育関連会社に勤務後、大崎上島にUターン。2015年から「広島県立大崎海星高校の魅力化プロジェクト(魅力化PJ)」に「魅力化コーディネーター」として参画しています。学校と地域、自治体が一体となって大崎上島ならではの教育や町営塾の設立、生徒の全国募集などに取り組んできました。
魅力化PJは、地域おこし協力隊制度を活用した制度です。島外からやってきた若者たちと関わることで高校生や先生、島民の価値観が広がる「学び」に繋がっていましたが、隊員の活動期間は3年で終わってしまいます。
彼ら彼女らが協力隊卒業後も島で働ける場を作りたいとの思いから、2019年に一般社団法人まなびのみなとを設立しました。現在はスタッフ16人のうち現役の隊員が3人、OBが10人在籍し、町営塾の講師やまちづくり事業などで活躍しています。
学校や世代を越えた交流が生まれる「ミカタカフェ」を運営
まなびのみなとは、スタッフが新事業にチャレンジできる場でもあります。その一例が、子どもたちの居場所と学びの場になることを目指して2021年にオープンした「ミカタカフェ」です。島の高校生が店長を務め、高校生たちが開発したオリジナルメニューを提供しています。
今では「ミカタカフェ」を起点に島内の学生と島民、行政、島外の人々などが交わり、島のあちこちで新商品開発やイベント共催などが同時多発的に行われるようになりました。「教育を通じての地域活性化」がカタチになりつつあると感じますね。
広島県内の高校生が参加する「高校生マイプロジェクト広島」
高校生が学校から地域に出て活動している姿は、島の大人たちを刺激します。そして、その刺激を受けた大人たちが新しいことにチャレンジする姿に高校生たちもまた刺激を受けています。そんな好循環を大崎上島だけでなく広島県全体に広げていきたいと思い、2021年から「高校生マイプロジェクト広島」という事業を始めました。
「高校生マイプロジェクト広島」とは、高校生が自身の興味のあることや身近な課題をテーマにプロジェクトを立ち上げ、実践することで学びを深めるプロジェクト型探究学習の場です。全国展開されている学びの祭典で、広島地区の運営をまなびのみなとが担当しています。
今年1月に広島市内で開催した成果発表会には県内17校から高校生70人が参加し、地域の資源を活かした町おこしや、芸術や食を通じた平和実現など32のプロジェクトについて熱くプレゼンテーションしてくれました。観覧に来た県内企業の方々や教育関係者の皆さんも関心を持ってくださっていましたね。
県内各市町の社会人がサポーターとして参加していることもこの事業の特徴です。まちづくりや企業の第一線で活躍されている彼ら彼女らは、住んでいる地域の高校と企業などを繋げ、関連イベントを開催したり、豊富な経験に基づいたアドバイスをしたりと、高校生たちに全力で向き合ってくださっています。
島での新たな役割と、広島県の可能性
今後は、まなびのみなととしては行政と民間のそれぞれの良さをさらに引き出して掛け合わせるような役割を目指しています。よりスピード感をもって、島外の活動で得た新しい風を取り入れながら、教育を軸にしたまちづくりを進めていきたいですね。
これから特に力を入れていきたいのが、未就学児向けの居場所づくりです。今年4月からは「絵本図書館ひみつきち」がはじまりました。子育て中のママや、保育園や学校に通う子どもたちの第3の居場所として機能するとともに、まち全体で子育てをする雰囲気をつくっていけたらと思っています。
広島県全体でいえば、私は「高校生マイプロジェクト広島」を通じて「わが県にはこんなにたくさんの面白い人がいるのか!」と感動したんです。各市町を盛り上げている人々、そして行動する県内の高校生たちが地域を越えてさらに連携を強めていけば、広島をもっと元気にする取り組みができるだろうとワクワクしています。
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