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「採用や育成には社長や役員も積極的に。能力と意欲重視で自然と女性活躍の方向に」

株式会社佐々部材木店

  • 製造業
  • 三次市
  • 31~100人
方針・取組体制能力開発・キャリアアップ支援登用
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会社概要
法人名 株式会社佐々部材木店
所在地 三次市東酒屋町306-48
URL http://www.sasabezaimoku.co.jp/index.html
業務内容 広島県を中心に、木製パレットや国内外向け梱包用木箱など木材工業製品の製造・加工を行っている。住宅建築に関する構造材や床材なども扱っており、注文住宅の施工販売やリフォーム、土地などの不動産売買や住宅の省エネ化のサポート、ホームセキュリティーなど住まいづくりに関するさまざまな設備まで、住宅に関するワンストップサービスを提供している。
従業員数 86名
女性従業員比率 29%
女性管理職比率 16.7%

(2021年12月時点)

改革の
point
  • 社長自ら率先して採用活動に関わり、毎年コンスタントに女性新卒社員を採用し、定着につなげる
  • 従業員一人ひとりとの対話を重視した、中長期的な視点での個別人材育成
  • 勤務年数や前職での経験を問わず、能力と意欲が高く、成果を上げた人材を管理職に登用
 

1.社長自ら率先して採用活動に関わり、毎年コンスタントに女性新卒社員を採用し、定着につなげる

広島県北部の三次市に本社を置き、世羅町、広島市と県内に複数の拠点を持つ株式会社佐々部材木店。木材・木製品製造業における女性管理職比率は2.2%であるのに対し、同社の女性管理職比率は16.7%と高い。また、管理職候補となる女性従業員も含め、多くの女性が活躍している。
同社の女性活躍のもう一つの特徴として、2017年以降ほぼ毎年女性新卒者を採用できている点が挙げられる。今回は、4代目代表取締役社長佐々部博之氏(以下、佐々部社長)に、同社の女性活躍推進状況と今後のビジョンについて、話を聞いた。

 

「私が代表取締役社長に就任した2017年から、女性従業員の新卒採用を始めました。当時、40代?50代が主力として活躍していましたが、会社の長期的な成長を考えると、組織の若返りが必要だと感じていたこともあり、女性従業員の新卒採用を始めました。それまで当社内において「女性を採用し、育てる」という発想がなかったように思うのですが、私自身は性別で区別することなく採用し、育成することが重要だと考えていました」と、佐々部社長は話す。

 

大企業と比較し、中小企業は採用活動、中でも新卒採用に苦戦する企業が多い中、毎年採用できている理由として、佐々部社長自らが採用活動に積極的に関与し、応募者一人ひとりとじっくり話をしている点が挙げられる。

「採用面接の際は、応募者が何に興味があるか、どんな仕事がしたいか。また、どのような働き方をしたいかなど、本人の希望を細かく聞くようにしています。当社は、木材に関わるさまざまな事業を展開しており、本人の希望に沿った業務や経験を積む機会があります。 例えば、インテリアコーディネーターの資格を持った従業員は建築部で、大学で木材に関する研究を行っていた従業員は建材部で活躍しています。当社の月の平均残業時間は1?2時間と少なく、ワークライフバランスを重視する若い世代にもフィットする部分が多かったのではないでしょうか」。

 

社長は採用後の育成にも積極的に関わっているそうで「新卒社員の育成に慣れていない当初は、どうしても中途採用者と同じように即戦力として結果を求めがちでした。また、特に女性従業員を一から育てた経験もなく、現場にも戸惑いがあったと思います。そこで、まずは、OJTでベテラン従業員について仕事を覚えてもらい、私自身も適宜フォローしながら、みんなで育てるという感じでした。一通り業務を行えるようになったら、次の役割にチャレンジしてもらうなど、一人ひとりに成長のステージを用意するようにしています」。

 

こうしてコンスタントに採用、育成してきた女性従業員は、会社の戦力として順調に育っているそうで「ジョブローテーションで全ての部署を一通り経験してもらいたい。そして、その中から将来の経営幹部が育ってくれたら」と、佐々部社長は期待を寄せる。

2.従業員一人ひとりとの対話を重視した、中長期的な視点での個別人材育成

佐々部社長の「対話」を重視する姿勢は、人材育成にもよく表れている。
「年に2回、一人ひとりの希望する業務や働き方を聞き、会社の方針や思いを伝える個別面談の機会を設けています。新入社員は自身で目標を設定することが難しいため、例えば、『3年後には店長になってもらいたい』など、ある程度具体的な目標を提示し、将来の見通しがたつ工夫をしています。誰でも先が見えないと不安ですし、ずっと同じ仕事ばかりするのはつまらない。定期的に対話を重ね、必要に応じて軌道修正しています」。
面談は各部門を統括する役員が実施することとし、それぞれの役員が、担当部門の人材マネジメントの責任者であることを明確にし、育成の長としての自覚を持たせているとのこと。

sasabezaimokutenn_1_DSCF6778_2.JPGそのかいもあってか、前職が保育士で、業界未経験で入社した女性従業員が、リフォームに関わる営業兼現場監督として営業職と技術職を兼務していたり、同じく業界未経験で入社し、育児と両立しながら建築士の資格を取得し、現在は現場監督者として活躍する女性もいるのだそうだ。

経営層が積極的にコミュニケーションを取り、道筋を示し、背中を押すことが従業員の安心感や自信につながり、一人ひとりが、自身のキャリアを主体的に描くことで、キャリアアップを実現している。

 

また、経営層の一人が女性活躍のロールモデルになっているそうだ。
建築部を統括する砂古麻衣子取締役(以下、砂古取締役)は、2人の子供を育てる母親でもある。
「2006年に建築部の立ち上げメンバーとなり、その2年後に長男を出産しました。立ち上げ間もない時期だったこともあり、産後3カ月で復職しましたが、子供が小さいうちは、よく熱を出したり、思うように仕事ができないことも多く、本当に大変でした」と話す。
そんな自身の経験から、結婚し、子供が生まれても、働き続けられる職場環境整備に尽力してきた。「子供が熱を出したときには、気兼ねなく休んだり、早退しやすい雰囲気づくりや、サポートしてくれるメンバーのフォローを促すなど、経営層が率先して動きました。その他にも、業務を平準化したり、複数体制にして属人化を防ぐなど、突発的な早退や休暇などにも対応でき、働き続けられるためのさまざまな工夫をしてきました」。

砂古取締役の思いが形となり、現在の建築部では18名中13名が女性で、ライフイベントを経ても働き続けることが当たり前となっている。さまざまな世代の子供を持つ女性従業員同士が子育ての悩みを共有するなど、プライベートも含め何でも相談できる和気あいあいとした職場で、離職率も低いのだそうだ。

 

砂古取締役育児とキャリアアップを両立することは容易ではないが、安心して働き続けられる環境が整っているからこそ頑張ることができる。「年2回の面談に限らず、従業員から要望があれば、いつでも相談に乗るようにしています。当社は、資格手当や資格取得時の補助などの制度もあります。自身の努力が給与に直結するため、従業員も主体的に自身のキャリア開発を進めていますし、会社としても密にコミュニケーションを取りながらサポートしています」と、話してくれた。

3.勤務年数や前職での経験を問わず、能力と意欲が高く、成果を上げた人材を管理職に登用

同社では現在2名の女性管理職が活躍しているが、建築部で課長を務める女性は、入社3年目で課長へ昇進したのだそう。佐々部社長は、「入社年次や前職での経験は関係ありません。彼女の場合は、現場補助者として入社しましたが、現場監督ができるまでに成長し、PCスキルも事務所の中で1番高かったため、課長になってもらいました。しかるべき人に必要な役割がついてくるという考え方です」と話す。

「これまで、女性活躍を意識して取組をしてきたということは特にありません」と佐々部社長は話すが、最後に、一人ひとりが自分らしく活躍できている秘訣について聞いた。
「私自身は、業務において、男性にできて女性にできない、女性にできて男性にできないといった性別による区別は基本的にはないと考えています。一方で、例えば、生産に関わる業務は、機械化されていない作業も多いため力仕事が多く、女性を配置することが難しかったりもします。そういった意味で、適材適所で配置した結果、当社の場合、営業職で多くの女性従業員が活躍しています。育成に関しては、一人ひとりの話をじっくり聞き、こちらからも思いを伝え、互いにコミュニケーションを密に取ることが大事だと考えています」。

まさに、女性活躍推進や人材育成のキーパーソンとして佐々部社長の存在はとても大きい。組織の新たな戦力として加わった若手従業員のこれからの成長とともに、多様な人材の活躍がとても楽しみだ。

●取材担当者からの一言
「当たり前のことを当たり前にやっているだけ」という佐々部社長の言葉通り、女性が活躍できるための要素が集約されている企業だと感じた。女性従業員の採用、一人ひとりの中長期的な視点でのキャリアビジョン形成と目標設定、若年時にチャレンジングな業務機会を与えて成長を促す育成方針、従業員一人ひとりと経営層との定期的なコミュニケーション機会の設定、性別を問わない優秀な人材の管理職登用などだ。こうした環境の中では、「女性を活躍させる」ということを意識せずとも、自然と多様な人材が自分らしくキャリアを築くことができているのだということを改めて感じた取材だった。

 

●取材日 2021年12月
●取材ご対応者
代表取締役社長 佐々部 博之氏
取締役 砂古 麻衣子氏