是正指導について
1 これまでの経緯
- 平成10年5月に文部省(当時)から是正指導を受けた。
- その後,県教育委員会として,教育の中立性及び公開性を柱とした取組みを行った結果,県内の大半の学校においては,法令に則り,校長の権限と責任による学校運営がなされるようになり,昨年6月には,この間の取組みについて,文部科学省に報告を行った。その際,次の事項について,一部に課題が残されていることを併せて報告した。
・教育内容関係の項目
卒業式・入学式の国旗掲揚・国歌斉唱,人権に関する学習,道徳の時間の指導内容,国歌「君が代」の指導
・管理運営関係の項目
教員の勤務及び勤務時間,主任制,職員会議の運営,市町村立学校の管理運営
- 文部科学省からは,上記の報告に際して,次の点について指導を受けた。
・是正の確実な定着を図り,適宜改善状況を報告すること。
・教育の公開性を重視し,開かれた学校,開かれた教育行政を推進すること。
・県民に信頼される公教育の確立のために,教育介入の排除と教育の中立性の確保を確実なものとすること。
2 その後の成果と課題
- 県教育委員会としては,上記の課題や指導を踏まえて,是正の徹底をすすめている。
また,昨年度2学期末に,上記報告において既に改善が図られて来ているとした授業時数の確保について,予定より大幅に不足する中学校があることが判明したため,この点についても,改めて課題として取り組んでいる。
- こうした課題を中心として,昨年4月1日から本年4月30日までの期間を対象として,是正指導に係る実施状況調査及び校長ヒアリングを通して状況把握を行った結果に基づき,次のとおりその成果と課題を記すこととする。
(1)教育内容関係
(1)卒業式・入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の実施状況
卒業式,入学式における国旗掲揚・国歌斉唱の実施率は平成12年度の卒業式から100%になった。
ア)国旗の正面掲揚実施校数及び実施率
平成12年度卒業式 | 平成13年度入学式 | 平成13年度卒業式 | 平成14年度入学式 | |
---|---|---|---|---|
小学校 | 607校 (97%) |
601校 (97%) |
623校 (100%) |
609校 (100%) |
中学校 | 243校 (96%) |
247校 (98%) |
252校 (100%) |
252校 (100%) |
高等学校 | 127校 (98%) |
124校 (100%) |
130校 (100%) |
123校 (100%) |
盲学校・ろう学 校・養護学校 |
22校 (96%) |
23校 (100%) |
22校 (100%) |
21校 (100%) |
【成果】
平成13年度卒業式から,県内全ての公立学校において国旗が正面に掲揚され,国旗が出席者から自然に目に留まる望ましい形態での実施となるなど,着実に内実化が図られている。
イ)国歌斉唱時の教職員の不起立の状況
平成12年度卒業式 | 平成13年度入学式 | 平成13年度卒業式 | 平成14年度入学式 | |
---|---|---|---|---|
小学校 | 47人 (4校) |
46人 (7校) |
0人 | 1人 (1校) |
中学校 | 9人 (5校) |
2人 (2校) |
5人 (5校) |
4人 (4校) |
高等学校 | 119人 (43校) |
48人 (21校) |
26人 (17校) |
8人 (7校) |
盲学校・ろう学 校・養護学校 |
20人 (3校) |
12人 (2校) |
0人 | 2人 (2校) |
【成果と課題】
不起立者は年々減少し,指導の成果は見られるものの,平成14年度入学式においても15人の不起立者がおり,課題である。今後とも指導を継続する。
(2)人権に関する学習の内容
狭山事件,国旗及び国歌に関する教材の扱いに不適正な状況があると考えられる学校数
平成12年度 | 平成13年度 | |||
---|---|---|---|---|
小学校 | 中学校 | 小学校 | 中学校 | |
狭山事件に関する教材の扱い | 4校 | 1校 | 3校 | 0校 |
国旗及び国歌に関する教材の扱い | 5校 | 1校 | 0校 | 0校 |
【成果と課題】
人権学習に関して,学習指導要領に照らし不適正な状況があると考えられる学校は減少しているが,狭山事件に関する学習について,教育の中立性を欠いた扱いがされている学校があった。
当該市町村教育委員会及び当該校に対して,人権に関する学習の在り方や内容などを提示し,適正な学習内容となるよう引き続き指導する。
(3)道徳の時間の指導内容
【成果と課題】
道徳の時間の年間授業時数及び全内容項目についての指導は,概ね達成されている。
なお,道徳教育を中心とした学校体制づくりや教職員の指導力向上などをねらいとした道徳教育実践研究指定校15校の研究成果の波及や「心のノート」の積極的な活用により,指導内容を一層充実していく必要がある。
(4)小学校の音楽科での国歌「君が代」の指導
【成果と課題】
小学校音楽における国歌「君が代」については,平成13年度においてほとんどの学校で指導されている。
今後においては,音楽科の年間指導計画にそって指導の充実を図るよう継続的に指導する。
(2)学校管理運営関係
(1)教員の勤務及び勤務時間に係る管理
【成果と課題】
職員の勤務管理については,勤務時間終了前の退勤,出張等による特定の研究団体の事務への従事,年次有給休暇未取得のままでの職員団体の活動への従事など,明らかな法令等の違反行為はなくなり,校長が所属職員の勤務状況を把握でき,研修,出張をはじめ勤務管理が適切に行われるようになった。
なお,長期休業中の普通研修の承認については,適正に行われるよう指導の徹底を図った。今後も,継続的に指導の徹底を図ることが必要である。
(2)主任制及び主任手当の拠出
主任等の命課時期
校種 | 平成12年完了月日 | 平成13年完了月日 | 平成14年完了月日 |
---|---|---|---|
小学校 | 5月 1日 | 4月 6日 | 4月 5日 |
中学校 | 5月 2日 | 4月 6日 | 4月 4日 |
県立学校 | 4月13日 | 4月12日 | 4月15日 |
【成果と課題】
主任等の命課について,県立学校については,平成12年4月1日から学校管理規則を改正し,主任の役割を明確にするとともに,省令主任の命課については教育委員会の承認を必要とすることとし,適格者を命課するようにして,主任の機能化を図った。また,小・中学校についても市町村教育委員会を通して指導の徹底を図り,適格者の命課が行われつつある。
主任手当については,主任制度及び主任手当支給の趣旨の徹底を図ったことにより,拠出が着実に減少している。
今後も,校内において主任等がその職責を果たし,学校が組織として適切に運営されるようにするとともに,主任手当の拠出が行われないよう指導を徹底する必要がある。
(3)職員会議の運営
【成果と課題】
ほとんどの学校で職員会議が適正に運営されるようになった。しかし,一部の学校において依然として校長権限が制約される状況があり,引き続き職員会議の適正な運営について指導する必要がある。
(4)市町村立学校の管理運営
【成果と課題】
学校運営に関する校長の権限を制約するなど法令に違反する確認書等を締結している学校はなくなっているが,引き続き,市町村教育委員会と連携して適切な管理運営に努めるように指導していく必要がある。
(3)教育の公開性
(1)ホームページ作成状況(作成割合)
校種 | 平成12年度 | 平成13年度 |
---|---|---|
小学校 | 30.4% | 73.7% |
中学校 | 33.7% | 73.4% |
高等学校 | 81.1% | 93.4% |
盲・ろう・養護学校 | 41.2% | 58.8% |
平 均 | 36.6% | 75.5% |
【成果と課題】
約75%の学校においてホームページが開設され,学校の情報を広く公開する環境が整ってきた。未開設の学校に対しては情報公開の一手段として有効であると考えられることから,できるだけ早く開設するよう,また,すでに開設している学校に対しても適宜更新を行い,できるだけ新しい情報を公開するよう,県立学校及び市町村教育委員会に対して奨励していく必要がある。
併せて,公開研究会の開催や「学校に行こう週間」の取組みなどを通じて,積極的に情報公開し,学校の説明責任を果たすよう指導していくことが必要である。
(4)教育の中立性
教育の中立性に係わって運動団体と対応した学校数
校種 | 平成12年度 | 平成13年度 |
---|---|---|
小学校 | 52校 | 2校 |
中学校 | 32校 | 0校 |
高等学校 | 0校 | 0校 |
盲・ろう・養護学校 | 0校 | 0校 |
合計 | 84校 | 2校 |
【成果と課題】
教育の中立性や校長権限が制約されるような対応を運動団体に求めた学校は,減少しているが,引き続き指導する必要がある。
(5)授業時数の確保
ア)小・中学校
【成果と課題】
小学校においては,平成13年度,標準の総授業時数が確保されている。また,中学校においては,平成13年度途中において,一部の学校で標準の総授業時数が不足することが予想されたため,標準授業時数を確保する指導を行った結果,概ね確保できている。
今後は,新教育課程の実施に伴い,全ての学校に対し,年間指導計画の作成とそれに基づく授業実施の徹底や標準授業時数を確保するための体制の確立を図り,各教科等の標準授業時数が確保されるよう引き続き指導する。
イ)高等学校(全日制課程;各教科・科目の1単位当たりの授業時数の平均)
平成12年度 | 平成13年度 | |
---|---|---|
全学年 | 29.9 | 30.6 |
第1・2学年 | 31.4 | 32.2 |
※高等学校の各教科・科目等の単位については,1単位時間を50分とし,35単位時間の授業を1単位として計算することを標準とすると規定されている。
※高等学校において生徒に卒業までに履修させる単位数は,74単位以上とされているが,全日制課程では,3年間で90単位以上を履修させる教育課程を編成している学校も多い。
【成果と課題】
各学校においては,授業短縮や自習を極力減らすよう努めるとともに,学校行事の精選,二学期制の導入,長期休業の短縮,7時限授業の実施,65分授業の実施により授業時数の確保に努めている。
今後,授業時数の確保状況を定期的に把握するとともに,校長ヒアリング等により授業時数確保を指導する。
3 今後の取組み
- 校長ヒアリングを実施する中で,多くの学校及び市町村教育委員会の意識が一層高まり,是正の確実な定着が図られている。しかし,一部の学校や市町村教育委員会においては,主任制が有効に機能していないなど,依然として是正が不十分な状況があり,今後とも,これまでの取組みを継続し,是正指導を徹底する。
- 主任等が有効に機能し,校長の権限と責任による学校運営体制を確立するよう指導を徹底する。
- 是正の内実化をさらに図り,改革を進めていくために,開かれた学校づくりや研修を通して教職員の意識改革に向けた取組みの充実を図る。
- 学校運営改善のために,自己評価だけでなく外部評価の導入も視野に入れた学校評価システムの確立に向けて取り組む。