職員団体について
(1)公務員の労働基本権
公務員は,公共の利益のために公務に従事しているわけですが,勤労者として自己の勤務を提供することにより給与の支給を受けている点においては,一般の勤労者と異なるところはないため,憲法第28条の「労働基本権の保障」は基本的には公務員にも及ぶものと解されています。
しかし,実質的な使用者が住民全体であるという地位の特殊性と,全体の奉仕者としてその利益のために働いているという職務の公共性という点において,一般の勤労者と性格が異なっています。
そのため,公務員は,正常な業務運営を阻害したり,執務能率を低下させる争議行為等(ストライキ,サボタージュ等)が禁止されるとともに,教職員の勤務条件などは条例等で定められるほか,労働基本権が法により一定の制限を受けています。
これらを表にすると概ね次のようになります。
職員区分 |
労働関係に係る 基本法 |
労働三法 |
団結権 |
交渉権 |
争 |
労 |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
労 |
労 |
労 |
職 |
労 |
職 |
労 |
|||||
一般行政職員 |
地方公務員法 |
地方公務員法 |
△ |
× |
× |
○ |
― |
△ |
― |
× |
× |
教育職員 |
教育公務員特例法ほか |
△ |
× |
× |
○ |
― |
△ |
― |
× |
× |
|
現業職員 |
地方公営企業労働関係法ほか |
△ |
△ |
△ |
○ |
○ |
△ |
○ |
× |
○ |
|
(参考) 民間企業 |
労働三法 |
○ |
○ |
○ |
― |
○ |
― |
○ |
○ |
○ |
凡例:○印~適用 △印~一部(制限)適用 ×印~禁止されている・適用除外
―印~法的に適用されない(例:教育職員は職員団体を組織できるが,労働組合を組織できない)
(2)職員団体の目的
職員団体は,「職員がその勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体」です。より具体的には,職員の経済的地位の維持または向上を目的として,法令等に基づいて当局と交渉を行うことができる団体です。ただし,民間企業の労働者で組織される「労働組合」とは異なり,前述した公務員としての職務の性格上,職員団体は労働組合と同様の権利が認められておりません。
ここでいう「勤務条件」とは,給与及び勤務時間等のように,職員が当該地方公共団体に就職するかどうか,又は引き続き勤務するかどうかを決定しようとする場合に,通常,誰もが考慮する事項であり,具体的には,給与制度,勤務時間,休日,休暇制度に関する事項及び職場環境に関する事項などがあります。
また,「当局」とは,職員に対し使用者である地方公共団体の機関で,交渉事項を適法に管理し,又は決定できる機関をいい,教職員の勤務条件については,管理・決定権限を有する「教育委員会」が当局となります
なお,教職員人事に関する事項,校務分掌の決定,教育課程の編成など,行政上の企画・立案及び執行に関する事項(いわゆる管理運営事項)は,当局が住民の負託を受けてもっぱらその責任と権限において執行すべきものであって,交渉の対象とすることはできません。(地方公務員法第55条第3項)
これにより,職員団体が行政運営に介入し「職員の勤務条件の維持向上を図る」という職員団体本来の使命を逸脱しないようにされているところです。
(3)職員団体への加入・非加入等について
教職員の職員団体への加入・非加入等については,「職員は,職員団体を結成し,若しくは結成せず,又はこれに加入し,若しくは加入しないことができる。」と規定されています。(地方公務員法第52条第3項)
これは,職員団体を結成することも結成しないことも,職員団体に加入することも加入しないことも職員の任意であるということを意味しています。
また,職員団体に加入した場合においても,脱退することは自由であり,脱退の自由を職員団体の規約で制約することはできません。(行政実例 昭35.12.27 自治丁公発第84号)
作成日:平成12年12月5日