学校経営支援について
広島県教育委員会 平成15年11月14日
I 是正指導の内実化に係る学校訪問指導について
1 学校訪問数
小学校……… 32校
中学校……… 30校
2 是正指導の内実化に係る課題のある学校
項目 | 具体的な状況 | 校数 |
---|---|---|
教職員の勤務及び勤務時間に係る管理 | ○校長が夏季休業中の教職員の勤務管理や勤務状況の確認を適切に行っていなかった。 | 1 |
○校長が研修内容等を十分に確認・精査をすることなく,普通研修扱いとしていた。 | 1 | |
職員会議の運営 | ○職員会議の運営において,補助機関の趣旨に沿った十分な運営がなされていなかった。特に,一部の学校では,職員会議において議決事項があるなど,校長権限が制約されていた。 | 14 |
校務分掌組織と職務分担 | ○校長が校内組織(部会等)の一分野の担当者となっていた。 | 21 |
主任制の機能化 | ○主任が連絡調整及び指導,助言の役割を果たさず,部員が行うべき業務も担当していた。 | 12 |
学校運営に係る校長と職員団体学校分会との確認書等の状況 | ○勤務時間中に,職員団体学校分会が校長に確認書の締結を求めていた(確認書は締結していない)。 | 1 |
人権に関する学習の内容 | ○解放子ども会等の指導を要求する保護者等との話合いに,校長は,勤務時間外に職員を長時間対応させていた。 | 2 |
○人権教育の内容が,地域進出や特定の人権課題に関する学習等に偏り,広島県人権教育推進プランに沿っていなかった。 | 8 | |
指導要録の記入 | ○指導要録の所見欄等の一部に,一律的な記載が見られた。 | 8 |
3 課題のある学校への支援について
県教育委員会では,学校訪問において問題点を指摘するとともに,市町村教育委員会に対しても指導を行った。これを受け,市町村教育委員会では是正に努め,その結果,大部分の学校で改善が見られた。今後,さらに是正指導の内実化を推進し,校長を中心とした組織的な学校経営の確立を図るため,各教育事務所に配置している学校経営改革推進員を活用し,個々の校長への相談・指導等を行っていく。
II 今後の学校経営改革について
1 本県の学校経営の現状・課題と今後の取組みの方針
(1)教育委員会の指導助言・支援体制
県立学校の学校経営を支援するため,平成12年4月に指導第二課に校務調整班を設置した。また,平成15年4月には学校経営改革担当課長を設置する等,市町村立学校を含めて,県教育委員会としての学校経営に対する指導助言・支援体制の整備を図ってきた。
しかしながら,今回の学校訪問指導の結果に見られるように,学校経営の状況や取組みには学校ごとに差異がある。
今後は,県教育委員会として,各学校の状況や取組み,課題をつぶさに把握して,学校や市町村教育委員会に対してよりきめ細かな指導助言と支援を行う必要がある。このため,県教育委員会として市町村教育委員会と連携し市町村立学校への学校訪問指導等を実施するなど,各学校の学校経営の状況把握と指導助言・支援の充実を図る。また,市町村合併の進展する状況の中で,各市町村教育委員会の学校経営指導機能の充実を支援する必要がある。
(2)校長権限の確立及び管理職任用の在り方
職員会議の補助機関化等により校長権限に基づく責任ある学校経営がすべての公立学校で行われるよう,県立学校や市町村教育委員会に対する指導の徹底に努めてきた。
今後は,さらに校長権限の確立を進めるとともに,校長がその権限を的確に発揮し責任ある学校経営がなされるよう,校長としての意欲や教育理念・学校経営理念を重視することとし,校長任用に当たって自己申告制を導入する等の改善を通じて積極的に評価していくことが必要である。
併せて,校長の任用に当たって,教育界の内外を問わず広く人材を登用する途を開くため,公募制を導入することが適当である。
また,教頭の任用にあたっても,実績とともに意欲を重視することとし,校長または市町村教育委員会の推薦に加えて自己推薦による方式を導入することが適当である。
(3)学校経営体制の整備
文部省是正指導以来,主任への適格者の確保や主任制の定着,校務運営会議の設置等校長を中心とした学校経営体制の整備に努めてきたところである。
しかしながら,すべての学校において主任が十分機能しているとは言いがたい実態があることから,今後とも,現行主任制の機能化をさらに進める。
また,学校がその権限を行使し責任を遂行し,その自主・自立性をより一層高めていくため,主幹制(仮称)の導入,エキスパート教員(仮称)制度の導入等学校経営体制の整備を進めることが適当である。
(4)組織マネジメントの確立
これまで,学校が一致協力して教育課題に対応できるよう,組織マネジメントの考え方の普及を図るとともに,学校経営目標に基づく学校評価や目標管理による人事評価を導入するなど,組織マネジメントを展開・発揮するための施策に取り組んできた。
今後は,学校経営の推進の基盤である組織マネジメントを確立するため,学校評価,人事評価の定着・充実を図るとともに,学校経営改革モデル校(仮称)を設置して先導的な学校経営のモデルの開発を進める。
2 学校経営改革の重点施策(具体的実施方法)
今後は,下記の具体的な施策について検討を進め,成案を得たものから逐次実施する。
(1)校長任用に当たっての自己申告・公募制の導入
校長としての意欲や教育理念・学校経営理念を重視するとの観点から,県立学校の校長任用について,自己申告・公募制を導入し,広く人材を求める。具体的な仕組みとしては,次のようなことが考えられる
1) 県立学校について,進学指導重点校,専門高校等学校経営上の特色に応じた「類型」を設定する。
2) 県立学校の現任校長は,「自己申告書」において,現任校のほかに,新年度勤務を希望する「類型」を選択し当該類型の学校の経営方針を記入して提出する。
また,その他県立学校長に任用されることを希望するものは,希望する類型の学校についての経営方針等を記入した「校長応募書」及び小論文を提出し,面接等を受けるものとする。
3) 県教育委員会は,上記2)について審査した結果を基にして,配置校の決定等を行う。
なお,現任校長・教頭以外の者については,原則として,校長への任用候補者として決定し,新年度は県立学校又は県教育委員会に配置し研修を実施することとし,校長としての配置は翌年度以降とする。
(2)主幹(仮称)制度の導入
学校経営体制の充実を図るため,校長及び教頭を補佐するとともに,教諭等の職務上の上司となる主幹(仮称)制度を導入する。具体的な仕組みとしては,次のようなことが考えられる。1) 主幹(仮称)は,特定の主任に命課された教諭との兼職とし,教頭を補佐し,教職員の指揮監督等を行うことを職務内容とする。
2) 主幹(仮称)を設置する場合,人数は各学校1名までとし,どの主任と兼務させるかは,県教育委員会(市町村立学校にあっては市町村教育委員会)と協議の上,校長が決定する。
(3)エキスパート教員(仮称)制度の導入
学校での教科等の指導体制の充実を図るため,教科指導,生徒指導等において優れた力量を有するエキスパート教員(仮称)について,県レベルで指導者として認証する仕組みを導入する。具体的な仕組みとしては,次のようなことが考えられる。1) エキスパート教員(仮称)は,所属校の教科指導,教員研修等において専門的な指導助言に当たるとともに,県内各地域における教員研修,教育研究団体の活動,学校の研究公開等において,専門的立場から指導助言を行う。
2) エキスパート教員(仮称)の認証は,県立学校長,市町村教育長の推薦により,県教育委員会に置かれる審査委員会の審議を経て行う。
(4)学校経営改革モデル校(仮称)の設置
学校経営改革に関する先導的なモデルを示すため,学校経営改革モデル校(仮称)を設置し,主幹(仮称)やエキスパート教員(仮称)などについての調査研究を行う。具体的な仕組みとしては,次のようなことが考えられる。1) 学校経営改革モデル校(仮称)においては,各学校の状況に応じて,主幹(仮称)やエキスパート教員(仮称)を配置し,学校経営改革に関する調査研究を行う。
2) 学校経営改革モデル校(仮称)の指定は,県教育委員会が行う。ただし,市町村立学校にあっては市町村教育長との協議を要する。
3 学校経営改革推進に当たっての留意点
(1)教職員の健康管理の徹底
教職員の健康管理を徹底するため,部活動における休養日の確保等時間外勤務の縮減に向けた取組みなどについて,県立学校や市町村教育委員会への指導を充実する。(2)行政事務処理の改善等
新学習指導要領の実施や週5日制の完全実施など制度の変化に伴う教職員の多忙感を解消するため,上記2の施策推進によって校務運営をより組織的に行うとともに,県教育委員会から学校等へ依頼する調査,照会等を精選する。更新日:平成15年11月26日